週刊雑誌編集者は酸いも甘いも噛み分ける「エディター! 編集ガールの取材手帖 (富士見L文庫)」上倉 えり
あらすじ
アイドルのゴシップに、未解決の通り魔事件―伝説的スクープを連発してきた『週刊永冬』編集部。そこに配属された新米社員の上原岬を待っていたのは、過酷でゲスな激務だった!腹黒上司の広瀬とともに、夜な夜な有名人のプライベートを追いかける毎日。処理にダメ出しされまくり、メンヘラ作家をなだめすかして、連日徹夜で校了作業…さらには、アイドルグループHDB48の特大スキャンダルが編集部に暗雲をもたらして―!?辛くてもがんばる編集ガールの、なりふりかまわぬお仕事小説!富士見ラノベ文芸大賞金賞受賞作。
週刊雑誌編集者は酸いも甘いも噛み分ける
最近は流行ってるのか? 割と見ることの多いお仕事小説、と思わせてというパターン。
この本は、男ばっかの週刊雑誌編集部に希望して配属された新卒女性の物語。
校閲>ガールと同じノリで読むと大やけどをするやつだった。
お仕事モノ、いろんなものに引っ張られてだんだんその場に馴染んでいく主人公の姿に頑張れ~~~!!そこ絶対踏み込んじゃ行けないポイントだぞ~~~!!!と言いたい人にはすごくおすすめ。
主人公が望んで配属されたのは、男ばっかの編集部。
しかも記事を撮ってくるのがメインの部署ではなく、そのサブである女性の画像などを作成するのがメインの部署。
メイン部署からしたらサブ部署なんておまけにしか過ぎず、当然主人公も馬鹿にされつつの取材や仕事となる。
様々な指示に従いつつ画像の修正などを行っていく主人公。いやー……大変だね……とよみながら笑ってしまった。
個人的につぼったのは、仕事の最中に出会ったアイドルの子。
おそらくはAKBをもじってんだろうな~と思わせるアルファベット三文字のグループのセンターに所属する彼女は、自由奔放! わがまま! でも身の程をギリギリわきまえている! という、読んでてすごく可愛い子だった。
アイドルはダンスなんかがあるから下着類はどうしても機能的なものになる、でもアイドルやめるんだから可愛い服で旦那さんを魅了したい!というあたりお前……可愛いかよ……となってしまった。可愛い。
取材やアイドルのわがままに振り回されつつ、次第に主人公がそれになれていき、口八丁手八丁も板についてくるのが、擦れた社会人だなーと思わされてあるある……となった。このまま頑張って生きて欲しい。
という流れから、終盤になっての急展開。
週刊誌は読者の好奇心を満たし部数を上げるために、様々な違法行為に手を染める。主人公の上司もポケットに薬ぐらいなら普通に持ち歩いているし、他人の酒に睡眠薬を混ぜることもいとわない。
そして主人公も、過去にそれで夢を壊されていた。
事件の被害者だったらどんなプライバシーも暴いて良い訳がない。
でも現代でワイドショーとか見てると誰も彼もがそういうの知りたがるんだよな。被害者の意外な共通点、加害者の卒業アルバム。
そして主人公は、雑誌のせいで父の浮気を暴かれ母は自殺。そんなもんあったら殺意ぐらい持って当然かもしれない。マスコミがマスゴミだの言われるあれこれはきっとこういう箇所にある。
散りばめられた伏線の回収から物語の収束まで、どれもこれもが面白かった。