引っ込み思案に見せかけたヤバ恋愛脳女が自分の恋を成就させたくて主人公に協力を迫るという流れから想像する通りの結末は迎えたけれども、絶対友達でいたいボーイな主人公の過去も、絶対恋愛したいガールなヒロインの過去も納得ができるからこそ面白かった。
猫かぶりヤバ恋愛脳女vs友情至上主義ボーイの多角形攻防戦
主人公が友情一番!なのも過去の出来事を考えるとそうなってしまうよなと思うんだよね。
仲良し3人組で、うち2人がくっついちゃって、でも2人がカップルになったんだったらもう自分と少女のほうが仲を噂されること無く仲良くできると思ったらカップルにくっついてくるうざい金魚の糞扱いされていた。
自分だけハブられることへの恐怖、恋愛を理解する前に自分をハブるものだと認識してしまったが故の嫌悪感。そこへ別の友人が手を差し伸べてくれたことにより、もう仲の良い友人という関係を崩したくないと認識してしまったが故の恋愛への恐怖にも近い忌避感。
それらがあるからこそ恋を忌避してしまい、友人同士でいたい、男女混ざった5人組という友人でいたいとなる主人公の感覚がすげー伝わってきた。
いくらヒロインが主人公に面と向かって嫌いと言い放ちこっちをからかってくる嫌なやつであろうとも、それより前に5人組という友人グループになってしまったからには彼女が抜けるのも嫌だと認識してしまう。主人公のその認識も、過去の友人という関係でありたいし友人グループを崩したくないというトラウマじみたものから来てるんだろうな。
主人公のその心情であり信条を理解した上で付き合ってくれている友人2人+新規友人1人もいいやつだし、たしかにこれはずっといっしょにいたいですわー……となる。
対して肉食系偽装陰キャヒロインも、通った過去は主人公と同じようなもの。
けれども取った選択肢が違うというだけで、同じ過去を持っているが故に主人公の気持ちも理解できてしまう。
そんな彼女が、主人公に何度も救われたりすることによって、恋に恋して恋というものを知りたい状態から主人公に惚れるのが、大枠で見たあらすじではありがちであるもののそうなるよなーわかる!という物語でめっちゃ良かった。
だって自分と相反する心情なのに理解出来ないまでも完全なる否定はしないでいてくれて、ピンチのときにそんな救い方してくれて、そんなん好きになるしか無いじゃん……。
ヒロインが主人公に惚れていく流れを描くのが丁寧なんだよね。ああ、こういうことされたりしたら好きになるなーっていうのをすごく丁寧に積み重ねている。
けれども主人公としてはそれはヒロインが友人だから取る行為であって、だからこそそれが恋愛感情になってしまうとはとうてい想像していない。だから故にヒロインも無自覚のうちに恋を募らせて、というのがあまりに描き方が旨すぎる。
友情と恋愛、どっちを取るか
この部分すげーキた。
今まで主人公は友情第一にしていたし、ヒロインが好きな相手は友人Aだと知っていたからこそ、友人Bがヒロインを好きだと知った時に告白を止めた。
告白から友人グループが崩れることを知っていたからこそ、このままのグループ付き合いを続けたいが故に。
けれどもヒロインの恋愛感情が最後の最後に主人公に向き、主人公も熱烈に迫ってくる彼女に恋に恋する状況に近いかも知れないがぐらりと来たそんなとき、友人Bがその話を蒸し返す。
自分が告白するのを止めてくれて良かったと言われた時、主人公は自分の立場を思い出す。
友人Bが告白を止めた理由の一端に、主人公が過去に恋愛関係で友人グループがバラバラになり絶望したことも間違い無く入っている。だというのに、自分はヒロインとくっついていいのか。しかも彼が好きなのはヒロインだというのに自分がそのヒロインとなんて許されるのか。
肉食じみた勢いで迫ってくるヒロインにぐらつきながらも、同時にそれは友人たちを裏切る行為であることを主人公は理解している。
このあたりでもうゲロりまくってメインたるぐちゃぐちゃにされて酷い状態になりながらもヒロインを拒否しきれない主人公がさーーー見ていてめっっっちゃ良かった。
どう頑張ってもこの先破滅しか無いように見える5人の関係性がこの先どうなるかめっちゃ怖い。怖いもの見たさの楽しみがある。