「魅了魔法を暴発させたら破邪グッズをジャラジャラさせた王太子に救われました」ラブもコメディも満載で終始楽しく読めたラブコメ
魅了魔法を暴発させたら破邪グッズをジャラジャラさせた王太子に救われました(1)
あらすじ
私の救世主は俺様でジャラジャラな王太子!? 二人で秘密の特訓始めます!
「貴様の魅了魔法のせいで嫁探しが捗らん!」
破邪グッズをジャラジャラさせているアルバート殿下に呼び出され、そう告げられた男爵令嬢の私、クラウディア。
学園に入学してから男女関係なく迫られてたけどそのせいだったの!?
魔法を制御するため特訓するも上達しない私に「俺のそばにいたいなら努力しろ」言葉とは裏腹に殿下は優しく見つめてきて――。
とにかくキャラクターが魅力的。良い意味で悪役がいなくてみんないい人。
まさにラブコメ!って感じの、ラブとコメディ満載で読んでて最高に楽しかった。
もはや魅了魔法のせいでろくな学生生活もできずことあるごとに片っ端から告白されまくる主人公が、ここまでくると完全に面白の域に達してる。婚約者持ちの男子生徒から告白されてそれを彼の婚約者に見られて修羅場かと思いきや、男女問わず作用する魅了魔法によって婚約者(女)も主人公に突撃し、主人公を奪い合い婚約者同士の争いがはじまるの、面白すぎるんよ。
「――ちょっと! これは一体どういうことなんですの!?」
はあ、とため息をつこうとしたところで、耳にキンキンと響いたのは甲高い女性の声。
「なっ……リンドマリー!?」
「呆れた、クラウディア嬢、あなた様のお噂はかねがね伺っておりますわ! 婚約者のいる殿方にも色目を使うふしだらな成金令嬢だとか! どうせ玉の輿でも狙ってらっしゃるのでしょうけど!」
(中略)
「珍しい薄桃色の髪! 美しい白い肌、吸い込まれそうな大きな瞳! その愛くるしい見た目でどれほどの殿方を籠絡してきたことでしょうね! 全く……嘆かわし……なげかわ……かわ……?」
あっ、来た来た。来たぞ。
リンドマリー様が私に突きつけた人差し指が震え始める。お顔も赤くなってきた。
「……かわいい……っ!」
感極まった掠れ声が絞り出される。
こんなん負ける。
本人たちは大変だろうが見てる方はめちゃくちゃ面白いんよこれ。主人公を奪い合ってご令嬢とご令息バトル。
これが異性にしか効かないと主人公が女子達にいじめられる展開が目に見えてるけど老若男女問わないとそういうレベルですらないもんな。本人は死ぬほど大変だろうけど。
こんな状況が多発した結果、壁ドンされようと逃げ出すタイミングを見計らうくらいになんともなくなっちゃってるし、このままだと混乱に乗じて逃げ出せるなと狙っている主人公、あまりに逞しすぎて笑えてしまう。本当にコメディとしてめっちゃ良。そしておもしれー女。
そんな主人公に対して「嫁探しが捗らんからお前が魅了魔法の制御が出来るように訓練をつけてやる!」となった面白系俺様王太子、こいつも間違いなくおもしれー男なので、おもしれー女とおもしれー男のカップルになっている。
「貴様の魅了魔法のせいで、俺の嫁探しがちっとも捗らんのだ!」
「え……?」
嫁探し?
聞き間違いかと思って恐る恐るご尊顔を見上げれば、整った眉を吊り上げ、厳しい目つきをした殿下がいらした。
「男も女も問わずにすべて片っ端から貴様が魅了していくせいで! この学園の生徒どもはみんな腑抜け! ポンコツ! お花畑! 誰も彼も貴様のことしか好きじゃない! そんなやつらからどう見繕って妃に相応しい女を見つけろと!?」
勢い良すぎるしノリがおもしれーんよこの男。
言うことはきつい気がしなくもないが面白く優しくそしておもしれー男。
マントの下にじゃらじゃらと音がなるほどぶら下げている破邪グッズのせいで主人公の魅了にはかからない。しかし主人公が魅了を放ったり、本人がときめいたりすると破邪グッズ(完全オーダーメイド)は一つずつパァンと弾け飛んでいく。王太子が日々追加発注している破邪グッズが尽きるのが先か、主人公が魅了魔法の制御を会得するのが先か、二人の戦いが始まった!というノリが本当に面白い。
主人公が、のほほんと能天気ながらもひたむきで、制御のための単調な訓練も文句も言わずやり続けているような人だからこそ、王太子もちょっとずつ彼女に惹かれていく。そして無邪気な笑顔を向けられたり頑張りましたよと言われるたびに破邪グッズがパァンしていく。面白すぎるんよ。ときめくたびにパァンする破邪グッズ、面白すぎるんだよ。
主人公、こんなまっすぐで頑張りやで、魅了魔法なんて無くともきっとモテるんだろうなっていうのがわかる。彼女がそういう性格になったのは魅了魔法のおかげで色んな人に愛されてきたからだろうけれど、だとしても魅了魔法が制御出来るようになり「うちの婚約者をたぶらかさないで!」と文句つけられても嬉しくなっちゃうような子だ。本当に素直で可愛い。こんな子に惚れるのはわかる。わかるけど、ことあるごとに王太子がパァンするの面白すぎるんだよ。めちゃくちゃときめくとパパパパパパァンとなるのも面白すぎるんだよ。
海で水着姿になったヒロインにパーカー着せて破壊力あげてパァンしてる王太子があまりに自爆で自滅すぎて笑ってしまった。しかも別キャラ視点では学校指定のモサい水着と表現される水着。ここが一番笑ったかもしれん。
作中のノリがおもしれー男すぎて、たまに挿絵でめちゃ格好いい王太子のビジュアルが出るとビビる。お前……おもしれー男なのに顔が良い……。
終盤、恋を自覚したヒロインがぐるぐる悩んだりようやくできたお友達に相談しまくったりぐるぐる悩み続けたりする。それでも全体的に明るくてコメディで面白くて、本人は暗くなって落ち込んでるんだろうけれども楽しく読めた。
恋でおかしくなっちゃってる人間って傍から見たら間違いなく面白いんだよな。そういう部分含めてすごく良いラブコメ。
設定的にこれって一歩間違ったらすごい暗い話になりかねなくて、魅了魔法垂れ流し主人公って相当やばいんだよ。ある程度免疫があるだろう教師すらじわじわと侵食していくほどの強力な魔法を無自覚で制御もなしに垂れ流す。いるだけで親の商談がまとまるほどに強制的に周囲からの愛を得る。
そんな化け物、それこそ作中で言われていたとおり、保護という名目の監禁が行われたっておかしくないし、処されるか国家のために利用されたとしてもおかしくない。
だけど王太子の「嫁探しが捗らん!」のせいで明るくなってるし、あまちゃんというかぬるめの王太子のおかげで制御訓練から始まったので、ポップで明るい話になってた。
自分の脳力を自覚したときの主人公も前向きでほんと良かった、一歩間違ったら星へ行く船のあゆみちゃんじゃん、めっちゃ悩んじゃうじゃん。そうじゃなくてほんと良かった。
終始ギャグで面白くて笑えて明るい気分になれるラブコメだった。
魅了魔法を暴発させたら破邪グッズをジャラジャラさせた王太子に救われました(1)