「ママ友と育てるラブコメ」主人公が子供の扱いめちゃくちゃうまい、シングルファザー状態高校生とシングルマザー状態高校生の協力子育て(ラブはない)
あらすじ
JKとの子育ては、慌ただしいけど尊い日常。
昏本響汰は、3歳の妹が大好きなシスコン高校生。両親が共働きで家事育児もこなす。暁山澄は容姿端麗、頭脳明晰な孤高の少女。その存在感で何人たりとも寄せ付けない。ある日妹の入園式に参列した響汰は、頬を紅潮させ、カメラマンばりにシャッターを切る澄の姿を発見する。「郁、なんて愛らしいの……」彼女も、超ブラコンなお姉ちゃんだったのだ! お互い妹・弟の世話をしていることを知り、徐々に仲が深まっていく。料理、幼稚園の送り迎え、休日デート。そう、まさに二人の関係は“ママ友”だったーー。子育てラブコメ堂々開幕!
ママ友と育てるラブコメっていうタイトルだけどラブはほぼ育っておらず、最後の最後に1pほんの僅か描写されるのみ。それより頼れる相手のほぼいないシングルマザーとシングルファザーが協力して子育てを頑張る話という印象のほうが強かった。彼らは産んでないですけどね。
主人公に妹や弟がいてヒロインが母親代わりというものはちょいちょい良く見るけれども、双方にいて協力っていうのはあんまり無いので新鮮で面白かった。
両親が忙しく弟妹の子育てができないので代わりにやってる主人公(妹持ち・シスコン)とヒロイン(弟持ち・ブラコン)の物語。高校生とはいえ学校終わりにチャリかっとばしてお迎えに行ったり延長保育を利用したりとかなりシングルファザーとシングルマザーによる子育てライフっていう雰囲気だった。
親に頼れない(大人で言うなら配偶者に頼れない)環境だからこそ互いに助け合う描写が多いのも面白かった。お迎えをお願いしたり、熱が出た時に協力したりと、これもうシングル同士のママパパ物語なんだよ。ひとり親の孤立や一人で対応しきれずに発生する問題というのが現実でもある以上、彼らはこうして助けあえて本当に良かった。
一人で全部なんとかしなきゃならない環境って本当に大変だと思うんだよね。特にこれ、ヒロインは一人で子育てするようになって弟が本格的に熱を出したのが今回初めてっぽいじゃん。そういうときって人間どうしてもめっちゃ混乱するし誰かに頼りたくなる。赤毛のアンの時代からそう。だからこそ、そこで料理もできて妹が熱を出す経験もある主人公が助けてくれるの、本当にホッとしたと思うんだよね。
ヒロイン側は最近母親が忙しくなった(娘は高校生とはいえ受験生ではない、息子は幼稚園に入ることになったので仕事量を増やしたり残業が多い部署に異動になったんかな……)のでスキルや経験値が低め、だから主人公が助けられるという設定が良かった。これは頼れる男。
作中で主人公が子供扱いのうまさ出まくってるの純粋にすごい。
キッズスマホで大人用スマホを欲しがるヒロイン弟をなだめるところがうまかった。
「うちの、俺の最高に可愛い想夜歌は、これのピンクを買おうとしている。つまり、郁がこれを買えば色違いのお揃いだ」
「でも、ぼくはカッコイイやつがいい」
「その通り。どうせ買うならカッコイイやつのほうがいい。だが、考えてみろ。想夜歌は天使だが、ちょっとおバカだ。いや、将来は才女になること間違いなしだし、そんなところもキュートで昨日も歯磨き粉を呑み込んで……ごほん。ともかく、スマホを使いこなすのに時間が掛るだろう」
迂遠な言い方をしているから、郁にはまだ理解ができないかな。でも、あえて難しい言い回しをすることに意味がある。
男ってやつは、年がいくつでも見栄っ張りでかっこつけたがるものだ。たとえ姉でも、そのあたりは理解できていないらしい。
結局のところ、郁は想夜歌に良い格好をしたいだけなのだ。相手が想夜歌なのは癪に障るが、気持ちは理解できる。女の子と同じものを後から選ぶなんて、男のプライドが許さない。
それに、暁山の否定するような言い方も良くないな。頭ごなしにダメと言われたって、郁はより意固地になるだけだ。
ぽかんと口を開ける郁に、言葉を続ける。
「いいか郁。先にこのスマホの使い方をマスターするんだ。お前は完璧に使えるのに、想夜歌はまだ使えない。さて、どうする?」
「……! おしえてあげる……!」
「そうだ。スマホの使い方を教えるのは、同じスマホを持っていないと難しい。機種によって全然違うからな」
このあたり読んでて主人公子供の扱い上手い~~~~~~~~~~!!!!て手叩いてしまった。3歳児が理解できる話ではないけど。対象年齢がどう見てももうちょい上だけど、その部分さえ除けば相手の子の性格見極めてるしどう話せば理解してくれるかも考えててめっちゃ扱いうま~~~!!
今までは妹が保育園に通っていたという描写もあるから自分ちの妹以外とも交流持ってきたんだろうな。それ故に子供の扱いがうまくなったんだろうなというのが説得力がすごい。
これ以外にも割りと放任主義だけど妹が危なくなりそうなときだけはしっかりと手を貸しつつ手伝いをしてもらうというスタンスがうまい。幼い子供を見るのがうまい。絶対これ相手3歳児じゃないだろとは思うが。
この放任主義なところもとってつけたようなヒロインとの対比じゃなくて、自分の宿題をぎりぎりまでほっといて妹と遊ぶといった描写と組み合わさると、あーわかるこういう行動しそうだよねとすげー思えて面白かった。
正直、物語の都合上とはいえ、ちょいちょい親御さん何してるんだよ! まだ高校生の子供にここまでやらせるな! と思う瞬間は無いわけじゃないんだよね。
でも主人公もヒロインも妹や弟を心の底から大好きで、一緒にいるのが楽しくて、彼らのために自慢できる兄姉になろう!っていうぐらいに愛しちゃってるわけでしょ。そういうシーンを見せられると搾取という言葉よも先に良いお兄ちゃんお姉ちゃんだなあと認識してしまう。
そして、主人公とヒロインの関係性を、同級生やそれ以外の言葉ではなく『ママ友』という単語にしたのもうまいなと。関係性の名前が同級生だとおそらくヒロインはここまで主人公に手伝ってもらったりできなかったと思うんだよ。学校での描写を見る限り、あんまり同級生に頼れるタイプの人じゃない。それが自分と同じく弟妹を愛する者としての、子育てをともにしている同じ立場の人間としての『ママ友』だからこそ頼れたんじゃないのかな。
ママ友と協力して育て弟妹を育てている描写がすごく面白かったし、子どもたちも年齢的に成長ちょっと早いだろというツッコミは起きつつも可愛かった。
ヒロインがツンケン強いしちょっとアレかなな部分もありつつもちゃんと理由を見せてくれたし学校側に馴染むシーンも入ったことで違和感もこれが見たいもなく読めて面白かった。