「わたしの嫌いなお兄様」大正を舞台に、ツンデレおてんば少女と変わり者溺愛従兄のいちゃいちゃミステリー
あらすじ
元士族・橋本家のひとり娘、有栖は腹を立てていた。年上の従兄、春日要との縁談を勝手に決められてしまったからだ。資産家の両親のもと、何不自由なく育った要は、知的で優しい美貌とは裏腹に、悪戯好きでキザ、おまけに素人探偵気取り…と、大変な問題児なのである。この強引な縁談を白紙にすべく、有栖は縁談の裏に隠された「人形紛失事件」を解決しようと奮闘するけど…? 「ミス・おてんば」の女学生と一族きっての問題児のコンビで謎を解く、レトロモダンでロマンティックなライトミステリ!
可愛かった。子供っぽいツンデレおてんばヒロインと、子供っぽい従兄のお兄様(自称素人探偵)のミステリー少女小説。オレンジ文庫だけれどももともとはコバルト文庫だったようで恋愛色がものすごく強め。
舞台設定が大正時代なのもあってラブコメというよりも少女小説というほうが雰囲気あってるのかな。どっちも子供っぽいから、ときめきとかそういう方向よりも可愛いなあというほうが強かった。
子供っぽい二人の恋愛もようが可愛い
「有栖はお兄様のおもちゃじゃないわよ!」
と言い放つような、一人称が自分の名前でおてんばで自分はもう大人と思っているも言動行動が全体的に幼い女の子、てっきり13歳ぐらいかと思いきや16歳で驚いた。でも、だからこそお兄様のことが本心だと嫌いじゃないどころかむしろ好き寄りだけれども素直になれないという状況でも、このぐらいの子だったらしょうがないなと思えるのかも。
そんな有栖にことあるごとに
「ご機嫌よう、有栖。会えて嬉しいよ、ぼくのエンゼル」
などと言い、結婚したいとなんの躊躇もなく言い放つ従兄のお兄様こと要。
この要も奇天烈な行動をしたり、実家からも疎んじられつつも元気いっぱい過ごしていたり、21という年齢で庭に落とし穴を掘って有栖が落ちるよう誘導したりといい感じに子供っぽくて可愛かった。
有栖のツンデレな部分もひっくるめて可愛いと思えるぐらいの年上の余裕はあるけれども、けれども行動は好きな子に意地悪して意識してもらおう!という小学生のそれ。有栖の母親が有栖にお似合いの相手を連れてきたときは全力で張り合って見せる。有栖よりは年上だけれども行動は全体的に子供っぽい。
どちらも年齢よりもかなり描写が幼くて、だからこそ読んでて可愛らしかった。
これがどっちかだけ精神年齢高いと、幼いほうを猫可愛がりしてお世話してるように見えてちょいキツい感じがあると思う。でもどっちも13歳と15歳ぐらいの幼さなので、どっちも可愛いなと読めた。
個人的に、要が美少女探偵アリスという有栖をもろにモチーフにした小説を書きながら、作中で自分をモチーフにした春日というキャラがアリスにセクハラしてはコテンパンにされる描写をしているっぽいのが結構好き。そこはアリスが受け入れてくれるタイプじゃないのかよ。そういう部分から、要が有栖とのじゃれ合いみたいなこの関係性を結構楽しんでいるのがわかって面白かった。
ミステリーとしてもツッコミどころはあるけど面白かった
ツッコミどころは多い、すげー多いんだけど、それはそうとして動機は実は別の部分にっていうタイプの話なので面白かった。
2話目の雑誌連載少女小説が途中で連載中止になっちゃう話がすごく好き。
美人女学生と女学生のスールものと思わせて実は美人女学生は女装男子だった、という現代でもみんな拳握りしめて最高!と言いそうな少女小説が、突然連載中止に。作中描写があまりに有栖の通っている学校そっくりで、教師も今年来たばかりの教師の描写がある、だからきっと作者は在学生。果たして作者は誰だ!と探し出す有栖。
それが作中作でも嫌なやつとして描かれている、四角四面で厳しい教頭先生っていうのは、有栖の気分で読んでたからこそ面白かった。しかもメガネを外したら美男子っていうベタみたいな描写まで付け加えられているの最高。
作中作で女装男子が校長先生の前では気を緩めることができるっていうの、きっとこの教頭先生が実際にそうなんだろうな。
動機も学校にバレたからではなくて自分の生徒たちが小説に夢中になって浮ついてしまうからというのがずらし方的に面白かった。
3話目も1話目も、フーダニットもあるんだけどワイダニットのほうが強くてどれも面白かった。
3話目の催眠術についてはそんなんありかよ!と突っ込んでしまったけれどこれは野暮だな。でも動機のひっくり返しは面白かったんだよ本当に。
ツンデレおてんば少女と好きな子に意地悪してしまうタイプの男子のじゃれ合い、本当に可愛かった。ただずっと、本当にこれは16歳と21歳なのか……?とは首を傾げ続けていた。