「見上げるには近すぎる、離れてくれない高瀬さん」甘酸っぱいにも程があるだろうが!!!致死量の甘酸っぱさをぶつけるな!!!

★★★★★,GA文庫ラブコメ,学園,恋愛

見上げるには近すぎる、離れてくれない高瀬さん

見上げるには近すぎる、離れてくれない高瀬さん

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あらすじ

「自分より身長の低い男子は無理」
低身長を理由に、好きだった女の子からフラれてしまった下野水希。
すっかり自信を失い、性格もひねくれてしまった水希だが、そんな彼になぜかかまってくる女子がいた。
高瀬菜央。誰にでも優しくて、クラスの人気者で――おまけに高身長。傍にいるだけで劣等感を感じる存在。
でも、大人びてる癖にぬいぐるみに名前つけたり、距離感考えずにくっついてきたりと妙にあどけない。
離れてほしいはずなのに。見上げる彼女の素顔はなんだかやけに近く感じて。
正反対な二人が織りなす青春ラブコメディ。身長差20センチ――だけど距離感0センチ。

シリーズ: 見上げるには近すぎる、離れてくれない高瀬さん

人間甘酸っぱいが多すぎると死ぬんだよ!! 致死量!! すごい量の甘酸っぱさを食らった。
中学2年生という絶妙な時期の男女による、思春期青春恋愛小説。これラブコメって言っちゃもったいない、コメディというには本人たちには重たいけれどもその年過ぎたら軽く見えちゃうものだからこそ、読んでてとにかく甘酸っぱい。
あとがきで青春の一歩手前の思春期と書いてあるの、読み終えてからだとものすごく納得出来た。思春期の物語だった。

陽キャなカノジョは距離感がバグってると同じ、ヒロインのほうが身長でっかい系。とはいえこちらのほうが中学2年生と幼いため、まだ未来に希望はあるものの、同時に年齢からくる切実さと視野の狭さがすっごい。すっごい可愛い。

中学生のコンプレックス

主人公水希、中学2年生、身長152cm。ヒロイン高瀬、中学2年生、身長172scm。この身長の差による本人たちのコンプレックスがものすごく良い。いや、本人たちからしたらものすごーくおっきいことだから良いなんて言っちゃいけないのはわかるんだけど、それにしてもものすごく良かった。

水希は「自分より背が低い男は嫌」って振られてるし、実際同年代からしても152cmは小さめ。身長170cm以下は人権ないが炎上する程度には、身長低いのはあんまり良く思われていない。でも中学2年生ならまだ全然伸びる可能性なんてあるし、成長期が高校入ってから来る人だっているから――なんて思ってしまうのは、その成長期をはるか遠くに思ってしまう大人の感想であって、水希からしたら現在進行系のコンプレックスで悩みであり、陽キャから陰キャに転落した理由。すごい切実な悩みだというのが、水希視点からもものすごく伝わってくる。

高瀬は身長172cm、中学2年生としたらなんなら一部の男子より背が高いだろう。それだってこのぐらいの年齢の子からしたらコンプレックスで、でも高校入るぐらいになったら背が高くて格好いいとかモデルっぽくて格好いいとかいわれるようになるから気にするものでもないけれど、今現在は表には出してないけど不安あるだろうなと思える。

こんな身長を同じくコンプにしつつ、羨ましいし自分には無いものがほしいっていうのがここまで明確に対象となる2人。女子なのに自分より身長高いという、隣にいるだけでコンプを刺激されるような高瀬に、それでも一緒にいるうちに惹かれていく水希っていうのが読んでてすげー可愛かった。

それ以外にも、誰それが誰に惚れただの、誰から振られただの、誰に告られただの。この年代だったらものすごく重要だろうけれども、大人になったらあっという間にどうでも良くなってしまうような悩みが切々と描かれててすごい引っ張られて読んでしまった。
この中学生っぷりがすごく良いんだよな……。あと、中2の親の過保護さの描き方として『帰りに買い食い禁止』『子どもたちの休日の遊びに親が送ってくれる』が、ものすごーく解像度高くて頷いてしまった。

水希がめっちゃいいやつすぎて好き

いや……いや、水希すげーーーーいいやつじゃない!?

身長を理由に振られたことで自分の身長コンプをコンプとしているけれども、それを自分より身長高い女子である高瀬にほとんど全然ぶつけたりなんてしてなくて、お前本当に中学2年生?!って思ってしまった。いや結構中2っぽい幼さは見えるんだけど、にしてもすげえ内面が良いやつすぎる……。

 高瀬のことが、嫌いなわけじゃない。
 だがそれでも、自分がないものを当然のように持っている相手がこうして近くにいることに、どうしようもなく居心地の悪さを感じてしまう。
 同性ならまだしも、女子相手ではなおさら。

これすごい。これによって八つ当たりするわけでもなく、作中で水希は人間不信気味になってて若干対応は悪いものの、それでも高瀬にことさらひどく当たるわけでもなく、隣を歩かれたとしても執拗に拒否するわけでもない。お前人間出来すぎてない?

更に、水希が人間不審というか身長コンプになった理由である自分を振った女子にすら敵対したり悪く言うシーンが全く無く、こいつ聖人なのか?と読んでて何度も思ってしまった。お前……ちょっといいやつ過ぎない……? だから高瀬も惚れたんでしょうが……。

自分の身長コンプもあるんだろうけれども、水希って高瀬の身長についてイジったり言ったりってほぼ無いんだよね。あったのが最後の最後部分ぐらい。高瀬をデカいと表現すると対比として自分の小ささを認識してしまうからというのも当然あるだろう。でも自分が身長をいわれて嫌だとか、幼い頃はいじめられている子をかばったり女子がからかわれているのを率先して止めたりしていたという部分からして、身長をあげつらうというのを自己の正義感から出来ないタイプなんだろうな。いいやつすぎかよ。これは高瀬も惚れるわ。

中2の恋愛がてぇてぇ

まじでてぇてぇ。

高瀬がすげー純粋に水希のことを好きで、可愛い女の子として水希に片思いして、水希のそばに来る子に嫉妬して、自分の恋心をバレないようにしているのが、もう読んでてめちゃくちゃ伝わってきてものすごい尊い。そんでもって中2なのでアピールだとかじゃれ合いだとかが年相応に幼いので、読んでてあーーーっっそれはいけません!それは良くない!水希が意識してしまう!高瀬は意識しない行動でも水希は意識してしまう!!とめちゃくちゃにやにやしてしまった。
水希も水希で高瀬の行動が思わせぶりで自分を狙っているのかはたまた天然なのかわからないので、あまり意識しないようにしているのも可愛い。いや本当に可愛い。

クラスの掲示物を頼まれる高瀬を助ける水希のシーンがものすごく好き。高身長あるある(身長が高いからと高所の掲示物を頼まれる)からの、届かないからとロッカーの上に登ろうとする高瀬が危なっかしいからと男子の自分が変わるべきと思った水希が代わりにやるからの、掲示物をネタにじゃれ合ってイチャイチャする二人というのがもーーーーめちゃくちゃに可愛かった。
こういうときにロッカーの上登れば良い!ってなる高瀬の思考は中学生の幼さだし、そこを自分がやる!と出てくる水希がめっちゃいい奴だし正義感あるしいい奴なんよ……最高か……。

ラインのやり取りで、嬉しくなってテンション抑えきれずに部屋のミニゴールにダンクシュートキメる水希も本当に可愛かった。こういう些細な日常のやりとりで意識しちゃって嬉しくなっちゃって、という日常の恋愛描写があまりに最高。そんな最高を重ねて少しずつ二人の距離が縮んでいくの、とにかく最高。

終盤で水希が「デカ女」って言っちゃって高瀬が傷ついてしまうシーン。
あれ読んでて、でも水希としては聞いちゃった「付き合うなら身長同じぐらいのほうが良い」へ同意する高瀬っていうのがものすごくショックだから、高瀬としては場に合わせただけと頭ではわかっててもそのぐらい言ってしまうのしょうがないなって思ってしまった。身長で振られてトラウマじみた状態になっている自分がまた少しずつ興味持った女子が、でも身長で自分を恋愛対象から外すところを聞いてしまったら、そりゃダメージ受けるでしょう。状況を理解していたとしても辛くあたってしまうのはしょうがないし、むしろそこで取り繕えたらそのほうがメンタルオリハルコンすぎる。
コレに関しては水希が身長突然伸びまくる以外はどうしようもないんだろうなー……と思ってたら、まさかの解決でてぇてぇとしか言いようがない状態で丸く綺麗に収まってしまって、あーーーーって頭抱えた。こんなん可愛すぎる。
水希が鈍感系主人公だったらこんなん完全に不発だったのに、水希が同年代ラノベ主人公より敏いから……敏感だからこんなことに……てぇてぇ……。

とにかく思春期の恋愛小説として可愛かった!!最高!!

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