「見上げるには近すぎる、離れてくれない高瀬さん2」この思春期の恋愛がエモい!最高!可愛い!!
あらすじ
低身長が悩みの下野水希と高身長で人気者の高瀬菜央。身長差20センチの正反対な二人だが、席替えで隣になったり、一緒に登校したりと、確かに距離を縮めていた。
そんな中、初心者ながらサッカー部に加入した水希は、他の部員に追いつくため、一つ年上の先輩女子・魚見とよく一緒に練習するように。
一方、運動音痴な高瀬には球技大会の練習に付き合ってほしいと頼まれる。教室では高瀬、部活では魚見。二人に挟まれる水希だが――
「わたしが、一番近くて仲良し?」
距離を確かめるかのように、高瀬は想いをぶつけてきて!? エモさ満点の次世代身長差ラブコメ第2弾!
これの2巻。今回は部活に焦点を当てた上で、相変わらずの尊さとエモさが大爆発の巻ですごく良かった。新しく入ったサッカー部で頑張ろうとする水希と、学校でキックベースをするからと教えてほしいと言う高瀬が次第に距離が近づいていくところが読んでいてわくわくしたし、郊外活動という学校とは別個の空間で出会った魚見先輩(当て馬ヒロイン)との関係性の築き方とか水希のシンプル格好良いところとか、読んでいてすごく楽しかった。
中学生の恋愛模様がとにかくエモい
なんか……読みながらただひたすらいやエモすぎない???しか言えなかった。
1巻もそうなんだけど、この作者さん中学生描くのうますぎない!? 高校生じゃない、中学生という年代を描くのうますぎ。
例えば給食。机をくっつけての給食。
例えば体育祭のキックベース。バレーとかじゃなくてキックベース。
いい年して読むと、キックベースっていう単語自体でめちゃくちゃノスタルジー感じてしまった。まずい。
中学生だから親御さん公認でおうちに行ったりするし、ちょっとぐらい失敗したりおせっかいなキャラがいたところで「中学生だからな」と思えたりするし、中学生の恋愛ものって良いよ。前にもなんかそんな話してたな。これだわ
今回は今朝丸の伝書鳩行動に「お前ー!!お前なー!!」と思いはしたんだけど、今朝丸も中学2年生だし、友達の間でそういうのあったら喋りたくなるよな!元気な子だもんな!って思ってしまった。中学生だからっていう免罪符が強すぎる。
魚見先輩、人間出来過ぎ
今巻は、サッカー部に入った水希が部活動休みの期間に少しでも練習したいと思ったところ、今朝丸に誘われて学外のサッカークラブに参加することとなる。高校生と中学生混合女子チームにぽんと入れられた中学2年生初心者男子はそこそこ馴染みつつうまくやっていく。サッカークラブでの練習後に一人で自主練しようとしていた水希の元へ現れたのは、先程クラブでなんとなくとっつきづらいなと感じた魚見先輩(中3)。彼女との一緒に練習をする、というのが物語に入り込んでくる。
もちろん今回、メインヒロインである高瀬は可愛い。「ふたりだけの秘密?」って言ってきたり「わたしが一番近くて一番仲良し?」って確認してきたり、もうとにかく可愛い。幼さ故の距離感なのか、それとも水希を好きだからここまでしてくれるのか、わかりそうでわからないあたりがめっちゃ可愛い。
でも今回の推しは、当て馬サブヒロの魚見先輩だった。
この魚見先輩が、水希視点だととっつきづらいけれどもサッカーがうまくて丁寧に付き合って教えてくれる良い先輩で、素直になれないけど良い人ですごく好感持てた。彼女が水希に興味を持つきっかけが、『他の子たちは部活後に炭酸水を飲んでいるけれども、水希は飲まなかった』っていうのがすごく素敵だなって。そういう部分で興味持った下手くそ初心者男子が一人で自主練しようとしてたら、そりゃ声かけちゃうよな。
魚見先輩って言っちゃえば当て馬。高瀬との関係性が恋愛未満で前へと進まない水希が自覚するためのきっかけであり、他人に振られた水希が女の子の告白を断ってでも高瀬を選ぶという選択をするための存在にしかすぎない、っていう部分は確かにある。たぶん水希、魚見先輩に告白されたり、二人っきりのサッカー練習がなかったら、おそらく恋愛感情を自覚しないままに高瀬とはあと1年ぐらい一番の友達ポジションにいそうだし。
でも当て馬なのに、ただの当て馬として消費されるんじゃなく、魚見先輩自身がすごく魅力的で可愛かった。
どっちかっていうと男子っぽくてサッカー一筋みたいな人が、サッカーの面倒を見ているうちに好きになって、自分の好きなサッカーをもっと知ってほしいし相手と一緒にいたくてサッカーの試合に誘って実質デートみたいなもので嬉しくなったり手作りの弁当をわざわざ作ってきたりと、とにかく健気な部分がもうめっちゃ可愛い。読んでて頑張れーって応援したくなるんだけど、読者としては水希の心はほとんど高瀬にあるのがわかってしまうからうわー辛い!ってなっちゃう。
このうわー辛い!が一番デカかったの、水希が魚見さんとの個人練習はなぜか後ろめたいのに高瀬との練習は後ろめたいじゃなくて嬉しさが強かった部分かも。水希ー!お前もうさっさと自覚しろー!可愛いー!
最終的に振られた高瀬さんが「このままで良いのか不安になって恋愛を逃げ道にしてた」っていうところで、ああもう最後までこの人本当に良い人だし人間出来てんなと思ってしまった。中学3年生なんて進路にこまるところだから逃げ道を探したりもするよね、と一瞬納得できてしまうけれども、でもその『中3だから逃げ道を探している』(だから恋愛に本気というわけじゃない)(だから振られても大丈夫だよ)っていうことこそが水希に逃げ道を与えてるんだよな、って思った瞬間に魚見先輩抱きしめたくなった。人間出来過ぎ。幸せになってくれ。
でも水希も人間出来てるんだよなー……吹奏楽部の演奏で自分を振った女子を見ても酷いことを頭に浮かべたりすらしないあたり、こいつもこいつで人間出来てるんだよなー……この話人間出来てる人しかいないのか。
受動的にいるのは楽だけど、能動的を選ぶ
っていう言い方であってるのかわからないけど、最後に水希が自分を選んでくれて告白してくれた魚見さんじゃなくて、自分が好きな高瀬を選んで好きになってもらおうとするっていう選択をしたのがすげー良いなと思った。
受動的なのは楽なんだよね。自分を好きでいてくれる人に好かれるだけなら、好きになってもらおうと努力する必要なんてない。だって相手は自分を好きなんだから。
そうじゃなくて、仲が良いけど自分を恋愛的な意味で好きでいてくれるかわからない相手を好きだと自覚して、相手に好きになってもらおうと動くと決めるのって、勇気もいるし頑張らないと行けないし、一度振られた経験があるからこそ辛い。
でも、というか、だからこそ、そこでちゃんと高瀬を選べる水希が強いし格好いいなって思えた。
なんかもー読んでてずっと、水希格好いいな!人間出来てるな!っていうかこの本に出てくる人間だいたい人間出来てるな!なんでこんな良い男を身長ごときで振ったんだよ吉木!って思いながら読んでしまう。