「青春マッチングアプリ 1 (HJ文庫)江ノ島アビス」二人っきりで秘密のミッションこなしてりゃ距離も縮まるし恋も生まれるよ最高か
あらすじ
青春をあきらめていた高校生・凪野夕景のスマホに、とあるアプリがインストールされた。アプリの名前は『青春マッチングアプリ』。
それはマッチング相手と『正しい青春』を送るためのミッションをクリアすると報酬を与えるというもの。マッチングしたのは、なんと同じクラスの美少女・花宮花。
彼女は自身の夢を叶えるため、ミッションをこなしたいという。
青春とは何かを知るため、花の夢を叶えるため、夕景は送られてくる指令をこなしていくが――。
不思議なアプリからはじまる青春学園ラブコメディ!
ネットに転がっている野良アンケに答えたところ、スマホに勝手に青春マッチングアプリなるものがインスコされて、クラスの美少女とともにクリアしていくうちに距離が縮まるストーリー。へんてこアプリの出すヘンテコミッションをクリアしていくうちに相手を知って徐々に本心から好きになっていく二人の変化がとにかく読んでて愛おしい。こんなん最高。
へんてこミッションをこなしていくうちに距離が縮まっていくラブコメ
こんな変なアプリで突然番わされたらだいたいなんやこれとなるだろうところを、アプリの出してくるミッションがトンチキ過ぎた結果、そこから二人の距離が縮まるのが面白すぎて笑ってしまった。
「『うまそうだなー、いただきます』マジでおいしそう。それに、たまご焼きまで入ってる。わるいな、花宮」
「『が、がんばって作ったの……口に合うといいんだけど……』ううん、たまご焼きなんてカンタンだし」
もちろん俺も花宮も。お互いの台本は全てアプリに書いてあったので、こう言われることはわかっていた。
だが、わかっていてもこんなことを言われると、どこか心がむず痒いような、嬉しいような、恥ずかしいような。そんな気持ちになってしまう。…………けど、この後の台本、めっちゃくちゃ恥ずかしいんだよな……。(中略)
「弁当……マジでうまいのはいいんだけどさ……この台本って……」
俺はそう言いながら白米を 頬張りつつ花宮の方を見る。
「……うん…………なんていうか、まぁ……。古い……よね」
俺たちに与えられていた台本は、なんとも言えない古くささがあった。
今どき、どこにこんな会話をしてる高校生カップルがいると言うのか。
数十年前のラブコメマンガにありそうな会話の内容は口にするだけで気恥ずかしい。
アオハコの言う《正しい青春》って、本当にこんな感じなのか……? アオハコ大丈夫か? まぁ……一度信じると決めたんだ。できるところまではやってみよう。(中略)
「『お、そっかじゃあ 遠慮なく……うん、こっちもウマいぜ。 腕 を上げたな花宮』なぁ……台本読んだ時から思ってたけど、この台本の男って 偉 そうだよな。腕を上げたな、って上から過ぎるだろ。俺たち、同級生の設定だろ?」
「『ホントに……? 腕にひょりを……ひょり……よ、より! よりを掛けて作ったんだからね!』ああーわかる。イマドキこんな俺サマ男子いないよね」
すげえ勢いで制作者の株がだだ下がりしていくさまに爆笑してしまったし、こんなオモロアプリの出してくるオモロミッションを二人っきりで共有しなきゃならないなんて状況に陥ったら、そりゃあ仲も深まりますわ。でもそこまで含めて高校生たちに素の会話で仲良くなってもらうためかもしれないじゃないですかぁ!! ごめん、割と真面目に制作者が年食ってるんだと思う。
最初のミッションの寝転がっていたら偶然女子のスカートの中身を目撃する男、色を言うという古めのラキスケ設定に二人で文句を言いつつ、そのミッション遂行するために目隠しして指定のポーズをするという無茶苦茶な方法でクリアをしようとする二人が良い。抜け道とバグとめちゃくちゃなクリア方法を探すな。制作者がアプリの陰で泣いてるよ。ふたりとも倫理観と羞恥心がめちゃあるので笑ってしまった。
そういう、他人に話してはいけないアプリについて二人っきりで秘密を共有するとか、ミッションをこなすために二人一緒に協力するとか、それによって相手について知っていくとか、ベタで王道だけれども、だからこそめっちゃ良い~~! 完璧優等生に思えていた花宮の素を見せるところを知り、主人公の凪野が徐々に心惹かれていく様が、読んでてニヤニヤした。
途中で明かされるヒロイン・花宮がこのヘンテコアプリに参加した理由は夢のためでありお金のため。対して凪野はただ青春をしてみたいから。そんな二人のスタンスの違いが最後に生きてくるのが面白い。
花宮本人は傍観者で調停者の立場に自分を置いていたつもりで、誰か特定の仲の良い相手を作らず他人に相談などもせず一人で頑張っていたけれど、周囲はちゃんとその立場に気づいていて、できればもっと仲良くしたく思っていたっていうのが好きだな。凪野だけが花宮の浮かべる素の真顔に気付いていたわけじゃない、他の人も薄々感づいていた。でも花宮が花宮ハナとしての完全なる素を見せられると思っているのは凪野の前だけっていうのがもう~~~めっちゃ良い。他にいくらでもいるのにあなただけっていうのに弱いのですごく好き。
タイトルに1ってついてるし、物語的には中盤~終盤に出てきた幼馴染少女(凪野は彼女に負い目がある)が2巻以後当て馬として出てくるのかな? 話としてはすごく面白かったし、なんぼでもミッション出しまくって今後ができる構成なので、この先があるとしたら楽しみ。
ミッションクリア型のあれこれを見るたびに思い出すアレ
読んでて最初は某をしないと出られない部屋を思い出してたんだけど、これ、それ以上に天国に一番近い男……!! (知ってる人の時代が大変限られるワード)
セないと出られない部屋も短期ミッションクリア型かつ恋愛ものによく使われるネタとしてはよくあるんだけど、ちまちまと出てくるミッションをクリアしないと場合によってはご愁傷さまですになるの、ものすごく天国に一番近い男。
でもミッション型にする制作者の気持ちもわかるんですよ。自分が出したお題で男女がどう動くか見たい。二人がどんなふうに変化していくか見たい。もっとくっついてほしければ過激なミッションを出せばいいし、じれったさを見たければじれじれミッションを出せば良い。自分の手のひらの上で観察できる。わかるよ、制作者。
恋愛リアリティーショーを見ているようなもんじゃないですか、しかも自分の出したミッションで。SP(青春ポイント)をお金に変えることができるため、金がほしい子はなかなかやめない。でもこいつやべーなと思った場合はアプリ運営権限でむちゃくちゃなミッションでも出してSP取り上げて懐を痛めず脱落させられる。カプ厨垂涎のアプリ(なおSPを速攻換金された場合めちゃくちゃ金がかかる)。
アプリ制作者は重度のカプ厨だよ。よくラノベにいる主人公とヒロインの関係性を見てニヤニヤしているタイプのカプ厨。金と技術力を持ったカプ厨だ。最悪だな! 青春ってなんぼだって種類あるのに恋愛にほぼ固定してるあたりも重度の男女カプ厨じゃん。台本の内容が古臭いあたりからして結構年もいってるし、技術力と金を持て余した挙げ句恋愛リアリティーショーを開いて楽しんでるやべー金持ちだ。あと多分天国に一番近い男も見てる。