「推しの敵になったので 土岐丘しゅろ」

★★★☆☆,TOブックス,雑記幼馴染,恋愛,戦闘,正体バレ,片思い,異世界転生

推しの敵になったので 土岐丘しゅろ

推しの敵になったので 土岐丘しゅろ

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あらすじ

女性に発現しやすい異能力《天稟》が発現されて百年。世界は男女逆転社会の様相を呈していた。
ところが、この世界に転生した大学生イブキは男でありながら《分離》の《天稟》を持つ。
人智を越えるパワーの反面、隣人とのボディタッチを強制させられる《代償》を持つ不便な力だ。
彼がこの世界で成すのは──まさかの推し活!?
彼は正義の組織【循守の白天秤】に所属するヒナタが大好き!
新人隊員の彼女は天真爛漫。《天稟》の《代償》でちょっぴり(!?)食いしん坊なところもとても愛らしい。
ある時は幼馴染の兄として、またある時は悪の組織【救世の契り】の構成員として、ヒナタたち推しを最前線(・・・)で見守っていることは絶対に秘密だ。
そんなある日、ヒナタの相棒・ルイに正体がバレそうになって……?
推しの未来は俺が守る! 愛だけで突き進むシークレット・イルミナティ!

漫画の世界に転生し魔法少女的なサムシングをやってる推しの敵ポジについた主人公の物語。これ、主人公であるイブキとしては推しがヒナタちゃんだけど、幼馴染のクシナのほうが様々な意味でポジション近くない!?どうなんだこれは!?と思ったら特に決着がつかず終わって悔しい。これどうなるの!?

推しを間近で見られるポジション

前世で好きだった漫画の世界で、推しの近所のお兄さんに転生し、間近で推しの成長を見られるポジションとかいう全オタク垂涎みたいな立場になった主人公・イブキが、原作通りの展開で撤退したりせずに生きて推しを眺め続けるために、記憶に残っている原作知識で無双ではないがいい感じに生き残ってみたり、幼馴染と頑張ってみたりする物語。

主人公が転生したキャラクターの指宿イブキ。幼い頃からそばにいてくれてちょっと憧れだったお兄さん、確かにめっちゃ裏切りそう~~!!裏切って成長フラグになってそのまんま撤退してくれそう~~!というポジションすぎてめちゃくちゃ笑っちゃった。いや、1話かな? 中盤回で実は……ポジションかもしれない。メタ的に見るとあまりに絶対裏切りそうポジションすぎて笑ってしまった。結構いるよね、ずっと主人公のそばにいたけれども巻のラストで裏切る味方キャラ。そう言われただけで複数人思い浮かぶからすごい。
でも物語からはそんな近くにいて主人公の心を折る立ち位置を与えられているからこそヒナタちゃんの成長が見られるわけで。このあたり、言われてみれば確かにな~となってしまった。

原作知識があろうとも、そもそもイブキの原作での出番は1話で終了。そのため原作ではこのキャラはこういう思考だっただとか、原作ではこういう思惑で動いていた……ハズ、のような少しふんわりしたもので将来どうなるかを想像して動いている。指宿イブキという人間の将来は(原作に出てないため)わからない以上、この先の出来事は大半は自分で考えなきゃならない。推しの活躍を間近で見続けるため、頑張って生き延びて最前線めのあたりにいてほしい。頑張れ指宿イブキ。

正体バレ!正体バレ!!

ところでわたしは特撮(というか井上敏樹特撮)で生きてきたので正体バレを愛しています。仮面ライダーアギトで翔一くんが真魚ちゃんに正体バレするシーン、葦原さんと翔一くんの互いの正体バレ、いつまでもアギトの正体がわからない氷川さん。それ以外にも555の正体がわからないため発生するあれこれ、キバで太牙兄さんと渡と深央さんのああだこうだ、最近ではドンブラザースの犬塚問題。変身している、ないしは顔を隠しているから正体がわからなかった相手の真実の顔が実は知り合いだったというのは良いものと幼少時から叩き込まれてきた。

で、イブキは近所のお兄さんという表の顔と、実はヒナタの敵として存在する組織の人間であり彼女にセクハラ行為を働いたヤバ奴という裏の顔がある。イブキとしては絶対にバレたくない顔であり、また組織の人間としても動きづらくなるため知られたくない。
この正体バレが、最終的に思ったよりあっさりと解決した、けれどもしていない、というのがうまい塩梅だなー。

悪の組織の人間たちが被っているパーカーは、相手が誰だかわかっている人には見えるが、わからない人には誰なのか認識阻害がかかるという特別製。そのためイブキとしてはある程度顔が見えるかもしれない状況でもヒナタは組織の人間=指宿イブキとは知らないだろうから顔は見られていないと思っている。しかし実際はヒナタは彼が指宿イブキだと認識してしまったために、もうパーカーの奥の顔が見える。なので、彼が赤面したり慌てたりしているのも実は全部見えてしまっている。
これ、最高のマジックミラー号ですね(たとえが最悪)。自分からは見えるけれども相手からは見えないマジックミラーだと思ってたら相手からもガラスになってた状態じゃん。そんなん最高なんだよ……。
イブキはヒナタに正体がバレていないと思っているが、ヒナタはイブキの正体を知っている。ヒナタからしたら正体問題は解決しているが、イブキからしたら解決していないつもり。この塩梅が最高。

一方的に顔を隠しているし表情も悟られていないと思っているけれども実はバレバレ。最高シチュエーション過ぎない?

これ、ヒロインは誰になるの?

物語としてはヒナタが恋愛的な意味でもヒロインポジなのかなと思ったけれども、どうなんだろうこれ。幼馴染として出てくるクシナもかなりポジション的には良いところにいるんだよね。ただどうにも負けヒロインっぽさが漂っているから駄目っぽい気もするけれども。

異能力は使用するたびに人によって決まった代償が必要で、イブキの場合は誰かと接触すること。手を繋ぐような小さな接触ならば長い時間かかり、抱きしめるといった大きめの接触ならば短時間で済む。イブキが能力を使用したあとに接触して代償を払うのに付き合ってくれているのが主にクシナ。そのクシナがもうめちゃくちゃにイブキのこと意識しまくってるし好きなのを必死でごまかしてる感があって最高最高最高。ご飯作ったり起こしたりといった幼馴染必須シチュエーションも全部網羅していて、ポジション的にはどう見ても幼馴染正ヒロイン。なんならヒナタだってイブキとクシナをお似合いカップルとして見ている。

でも、イブキはクシナを恋愛的には全然見てくれてないんですよねー……どこまでもただの幼馴染であり、迷惑かけちゃってるなーとは思っているけれども女性としてはろくに見ていない。だきしめたときに感触で女性と思うことはあっても、それは恋愛対象としてではない。うーん難しい……。

だったらヒナタをそういう対象の相手として見ているかと言えば、それも全く違っている。完全に推しであって、恋する相手ではないんだよね。推しは推しでもガチ恋する人もいるけれどもイブキの場合はそうではなく、完全に可愛い妹分であり、推しと手を繋いじゃったらドキドキするけれども恋愛対象でなさそう。

なんならイブキが組織に入った理由としてクシナがいるっていう部分もあるからな~……。なんだこの男……。
恋愛ヒロインがヒナタでクシナは負けヒロイン、に見せかけて実際のところイブキの命の賭けようというかなにかあったときの助けようは確実にクシナのほうが大きい。クシナとヒナタが崖から落ちそうになってたらヒナタを助けるだろうけれどもそれはクシナの能力を信頼しているがゆえであって、イブキのなかでクシナってめちゃくちゃ比重がデカいんだよね。
すごいアンバランスというか不均衡というか、不思議な状態だなー。

とはいえ、ヒナタがヒナタで恋愛面で本気を出したというか、異能の代償である飢餓をNTRという味見で解消するようになった以上、今後結構恋愛面でもイブキが彼女を意識するかもしれない。そしたらまた物語が大きく動いてきそう。でもあの飢餓って本当にNTRで解消されてんのかな。それはそうとして、クシナとイブキがいい感じ(ヒナタ主観)なのにそのイブキからソファの背もたれでクシナには見えない位置で膝枕してもらう、という背徳感を味わっているヒナタはめちゃ良かったです。NTRじゃないNTR。最高。

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