「経験済みなキミと、 経験ゼロなオレが、 お付き合いする話。 (ファンタジア文庫)岡 マキ子」好きな子に好きになってもらいたい主人公の話はやっぱり最高！！
あらすじ
「す、好きです！」「えっ？ ススキです!?」。陰キャ気味な高校生・加島龍斗は、スクールカースト最上位＆憧れの白河月愛に罰ゲームきっかけで告白することになった。予想外の「え、だって今わたしフリーだし」という理由で付き合うことになった二人だが、龍斗はイケメンサッカー部員に告白される月愛の後をつけて盗み聞きしてみたり、月愛は付き合ったばかりの龍斗を当たり前のように自室に連れ込んでみたり。付き合う友達も遊びも、何もかも違う２人だが、日々そのギャップに驚き、受け入れ合い、そして心を通わせ始める。読むときっとステキな気分になれるラブストーリー、始まります！
面白かったー！やっぱり好きな人に好かれようと頑張る主人公の話は最高よ。
ラブコメって主人公かヒロインのキャラクターが好みじゃないと読んでくのきついんだけど、この話はどちらも好きだからぐいぐい読んじゃった。これといった大きな山場があるわけじゃない、大きな問題解決があるわけじゃない。でもキャラクターが好きだから読んじゃうって、ラブコメとしてめっちゃサイコーなやつじゃん。
もともと白河さんが陽の者だし相手を慮る系のいい子で、読んでて嫌味が無くてさくさく読めた。
経験済みの彼女と未経験の主人公の認識の差
陰キャでオタクでゲームの実況が好きなリュートと、ちょっと惚れっぽいところもあるけれども好きな人には尽くしたいタイプのヒロイン・白河さんの、恋やお付き合いというものの認識の差がそれぞれ出てて面白かった。そうだよね、経験の有無でそんなもの変わってくるよな。
リュートにとってお付き合いというものは『好きな人とするもの』。対して白河さんにとってお付き合いというのは『好きじゃなくてもしてみて、それで相手を好きになっていくもの』。このあたりが経験者と未経験者の違いだよね。
とりあえずやってみる！トライアンドエラー！というわけじゃないけど、一緒にいるうちに好きになっていくってやっぱりあるし。単純接触効果って侮れない。白河さんに「好きだから付き合うわけじゃない」的なことを言われたリュートのショックっぷりはわからなくもないけれども、白河さんの思考のほうが前向きというか、この先をめっちゃ見てる！って感じですごく好き。
そしてリュートは『白河さんを本気で好きなのにそんな扱い？』とショックを受けるけれども、よくよく考えてみれば自分だって白河さんのことをめっちゃ知ってるわけじゃないと気付くの良かった。
リュートが白河さんを好きになったのは、陰キャの自分にも笑顔で「ありがと！」と言ってくれたからっていうただそれだけで、それ以外の彼女の内面自体はろくに知らない。白河さんがリュートに対して知っている事実とさほど違いはない。そんなリュートが白河さんと一緒にいるうちに、彼女が言うとおり一緒にいる時間が積み重なって知らない一面を知ってどんどん好きが増えていくのが良かった。
ギバー気質のヒロイン
なにかしてあげたい！タイプのヒロインって最近多いというか、主人公に冒頭から好感度100％なんだけどなんでそんなに？？？となるような子が多いんだけど、白河さんはギバー気質なんだろうなっていうのがすぐに伝わってきたので色々納得出来たとこあるかも。
付き合ってすぐにシようとしちゃうのは、男の子ってエロいことが好きで、シてれば別れないでくれると思うから。それを欲しがってると思ってるから。
自分を好き！と思ってくれた人が好きっていうのも、そのあたりに一端がありそう。
そんな与えたがり気味のヒロイン・白河さんが、自分に何かを求めるわけじゃなくて、彼女の行きたいところが知りたい・彼女の好きなものが知りたいというスタンスのリュートに、次第にちゃんと惹かれていって好きになっていくの、読んでてニヤニヤしてしまう。
服を見たり雑貨を見たりするのは、普通の男子は別に面白くない。白河さんの今までの彼氏たちだってきっとそうで、別に面白くもないしそういうデートなんてしてなかった。でもリュートは白河さんがそういうことしてニコニコ楽しそうにしてるのを見るっていうだけで楽しくて――というのが、読んでてもうめっちゃカワイイし、そんな彼氏初めてな白河さんが惹かれていくのもそりゃそうだよ。
動物園デートでお弁当を作ってくるのはもう、彼女がなにかしてあげたい！というギバー気質なだけじゃなくて、リュートに喜んでほしいというそういうめっちゃ可愛い部分から来てるんだろうなとニヤニヤした。
この話って山場という山場自体はあんまりない。自分と白河さんがスクカーが違うため自分が彼氏というのが恥ずかしいというリュートが白河さんの名誉を守るために自分が彼氏だと名乗るのが山場にあたるのかもしれないけど、案外そこってさくっと終わるし、それによってリュートを見る周囲の目が変わったりなんてしない。それよりも二人が初めて手をつなぐための流れのほうが気合描かれてるぐらい。
大きな山場という山場はないんだけど、二人が可愛いしこの恋がどう転がっていくのかみたいから読まされる本って、やっぱり読んでて楽しい。
2巻目以降用の不穏・引っ掻き回し・当て馬キャラとして白河さんの双子の妹であり以前リュートが告白して振られた相手である黒瀬がリュートに矢印向けてるけど、これでリュートがなんらかの流れで傾いたらマジで嫌だな。そういうのがないことをひたすら祈りながら2巻も読む。