あらすじ
厳しい上司の裏の顔!? あなただけが知る彼女の姿――。
容姿、スタイル、共に完璧な美人上司・桃生結子から「子作りしてほしい」とペアリングを求められた、若手社員の実沢春彦。
『“好き”になったらおしまい』という約束の上で始まった関係にもかかわらず、本気で彼女を好きになってしまった事実に気付き、実沢が葛藤する日々を送る中、桃生はといえば――
“どうして実沢くんの方からは一度も誘ってくれないのか”“もしかして、私に魅力がないせいなのか”
と悶々とした日々を過ごす。その悩む気持ちがどこから来ているのか、自身の気持ちと向き合うことを避けながら――。
ふたりの気持ちは平行線? 葛藤と激動の大人ラブコメ第2巻!
よ、良かった~~~~。大人同士の恋愛って難しいね、というお話だった。
桃生さんって面倒くさい女性ながらも「ああ、こういう人いそう」と「ラノベヒロインだなあ」の中間地点を駆け抜ける感じでおもしれえな。
ちなみに冒頭から精子検査するようなラノベではあるんだけれども、直接的描写はそんなにない。今どき直接的描写ありますとなったら挿入からフィニッシュまであるのを考えると、妊活をテーマとした作品なのにとても慎ましやかというかなんというか。おもしれえな。
大人同士の恋って難しいね
今回は、実沢が同期の鹿又に気があるような空気を出されるも全てなかったことにしつつ、体だけの関係で本気になったら終わりと明言されている桃生さんに恋がバレないようにイチャイチャしようとしているお話。
この実沢→桃生も、鹿又→実沢も、どちらも相手の好意に薄々気付いていながら明確に告白されていないのを良いことに気付かないふりをするという意味では同じことをしているんですよね。
鹿又が実沢と飲んだあとに酔ったような顔をしてホテル街に行こうとするのも、実沢が桃生さんとデートしたがるのもそういう意味では同じ。そして実沢は鹿又の好意をわかっているうえでわからないふりをしてお断りをし、桃生さんは実沢の好意を薄々勘付きながらも現在の関係性を続けることを選ぶ。
この曖昧で中途半端、相手から告白されていないからこその行動というのが大人の恋愛だなあと思わされると同時に、曖昧だからこそ知らないフリをしてしまえるというずるさは大人だなあとすごく思った。
そしてこの鹿又とのやり取りがあるからこそ、実沢良いやつだなあって思うし、桃生さんが実沢をペアリングの相手に選ぶのもそりゃあそうよとなるんだよ。
実沢ってやろうと思えば全然鹿又と桃生さんの二股可能なんですよね。作中で桃生さんが言ってたけど、彼女とイチャイチャしながら桃生さんとペアリングし続けるというやり方もあるわけで、むしろ最近のラブコメラノベだとそういうルートも全然たまによく見る。割とよく見る。
でもそこで実沢は「好きな人がいるから」と断って、本気になったら終わりと明確に出されている桃生さんに操を立てる(という言い方も古いが)。すげえ実直で誠実だなあと思うんですよ。さすが名字が仙台市のどデカ大仏がある場所なだけある。
鹿又が実沢に惚れた理由も、ありがちながらも「そういうことされたら好きになるよね」と理解出来るものなのが好き。そこからの距離を詰めてみたいが詰められないから飲み会でどうにかしたかったというのも微笑ましい。
どうでもいいけどこの作品、メインキャラの宮城県地名率が高いので、逆に宮城県名字じゃない轡は恋愛メインキャラになれないのか?と不安になってくる。鹿又を気にかけてたし、「お前といい感じにならないんなら俺が」と明確にフラグみたいな発言してるからあり得ると思うんだよなあ。
桃生さんは面倒くさい
本当にこれは最近読んでしまった影響なんですけど、年カノの織原さんも面倒くさい性格してる。そして桃生さんも面倒くさい性格してる。なのにどことなく可愛らしさや、仕事が出来るけれども私生活はちょっと抜けている愛らしさが見え隠れするの、いいよなーと感じてしまう。
クレーンゲームであれだけお金を注ぎ込んで躍起になってしまうところって、やっぱり可愛い。1巻で見栄張ってハウスクリーニング頼んでおきながらレシートが見つかってしまうところも抜けていて可愛い。こういう抜けてて可愛いけれども締めるときは締める女性キャラを描くのめっちゃうまいな。
桃生さんってめっちゃシゴデキ女で、今回もデートでふわふわしたテンションからのあの切り替えじゃないですか。そのギャップにきゅんとくる。わかる。
同時にそういう自分を嫌っていてわざと自己卑下するの、すごい面倒くさい女だと思うんですよ。あの行動って一種の試し行動じゃないですか。実沢だったらそこで慰めてくれるのがある意味わかりきっている発言で、そして実際褒められたらうるっと来てしまう。そういう行動の人間らしさと面倒くささが合わさっているのが本当に最高。
年カノのモモにもスパダリかって言ったけど、実沢もスパダリ気味だよなあ。
面倒くさくて時々抜けてて年上なことを少々後ろめたく思っているアラサー女性×やれやれ系で面倒見が良く相手を人として尊敬していて恋愛感情も抱いているスパダリ年下男性が読めるのはここ!!
ラストシーン見る限り、桃生さんもその実沢くんからの褒められで恋が芽生えていると思うんだよ。でも本人は自覚ないっぽいし、なんなら実沢のわかりやすい恋愛感情は気付いていてこれからどうしようかと若干悩んでいる。面倒くさい人だなあ。いや、そこで利があるからと契約書ほっぽって続ける気がある時点で恋じゃん! お前は恋してるんだよ! と背中を叩きたくなるも、彼女がバツイチになった理由を知ると躊躇ってしまうのもわかる。うーん、難しいよなあ。