
あらすじ
『災禍の悪夢』を名乗る、中二病の少女――通称メア。
来栖玲緒の、かつての悪友だ。
彼女の写真を撮ったり、それをSNSに上げてバズらせたり――。
本名も知らない少女との、かけがえのない時間。
それは、彼女が事務所にスカウトされて地元を離れるまで続いた。
やがて、中二病アイドルとして芸能界デビューしたメアだが――。
高校に進学した玲緒は、クラス委員長の十七夜凪が、中二病を卒業したメアだということを知ってしまう。
そして、とある事情で、彼女は一年生にして生徒会長になる必要があった。
だが今の凪は、むしろコミュ障陰キャ属性のキャラになってしまっている。
そんな凪を生徒会長にするため、玲緒のプロデュースが再び始まるが……!?
面白かったー!!
参謀タイプ主人公が、過去の友人であり厨二病アイドルだったヒロインに協力して生徒会長選を勝ち抜こうと頑張る話。ラブコメとしても面白かったし、やっぱり倒すべき敵は強大な方が良い。
作者さん確認したらとってもカワイイ私と付き合ってよ!の人だったので、心理戦や頭脳性に強いのも納得。
元中二病アイドルと頑張る生徒会長選挙
昔仲良くなった中二病少女を本人の頼みでプロデュースしてバズらせアイドルまで上り詰めさせた過去がある主人公。そんな主人公が高校入学して出会った人見知り気味の委員長はまさかあのときの厨二病少女であり、しかも厨二病アイドルをやめるために生徒会長選挙に出馬して会長にならなければならないのであった! ということから始まる物語。
昔仲良くしていた子が同じ学校にいたらわかるやろがい! というラノベあるある展開に対するツッコミを、当時は銀髪のウィッグつけててオッドアイのカラコン入れて、更には口調も一人称が妾かつ主人公を盟友と呼んでくるやべえ中二病で、中二病ネームしか名乗らず本名すら知らなかったので、出会ってもわからなかったという力技でどうにかしてくるのに笑ってしまった。そんなのありかよ。
でも、昔は厨二病全開だった子が今や人見知りで隠れ気味の子になってたら全然わからないのは……わかる!! ヒロイン側はバレずに済むならバレないままでいたかったというのもわかるよ……それだけやばいタイプの厨二病をこじらせていればな……。
厨二病の罹患期間が過ぎてしまったからこそ厨二病アイドルをやめたいヒロインもわかるので、このあたりの納得感と爆笑感がすごかった。
事務所側から出された、この高校の生徒会長になれたら厨二病アイドルをやめても良いという条件。対抗馬としては元生徒会長の妹であり前生徒会の人間である先輩がおり、現状95:5で圧倒的先輩のほうが強い下馬評。そんな状況で、主に主人公が参謀としてついて戦っていくのが面白かった。
主人公が出してくる作戦が、いちいち面白いしなるほどなーなんだよね。頭脳派キャラめ。コツコツ安定した票田を作るために特定の部活からの組織票を作ろうとしたり、対抗馬である先輩にはバレないように別の場所に目を向けさせたり。
心理戦や頭脳戦、駆け引きを繰り広げながらヒロインを生徒会長にしようとする主人公が、読んでてもうめ~~~っちゃ格好いいんですわ……。
そしてヒロイン側、アイドルだった当時のやってたことに若干トラウマ(自分の厨二病時代をえぐられるので)があるためにあまり人前に立ちたくないという大変どでかい問題を抱えつつも、主人公の出してくる作戦のために頑張るのが良かった。こんなん応援せざるを得ない。
というか主人公、よくよく考えれば、以前ただの厨二病だったヒロインを、バズらせて本当のアイドルまで押し上げた時点で、プロデュースとかそういうのはめっちゃ向いてるんだよね。お前参謀の能力ありすぎか。
ラブコメとしてもめちゃカワイイ
軽妙な二人の会話がめっちゃ最高。ボケ倒す主人公、ツッコミがんばるヒロイン、読んでてもうとにかくかわいい。わたしはラノベ生まれされ竜育ち戯言シリーズだいたい友達、のりの良い会話と言葉遊びと会話のじゃれ合いは大好きです。わかりやすすぎる自分のプロフィール。
「結局ね、人見知りなんて恥をかくのが嫌だとか、人に嫌われたくないって気持ちが積み重なったものなんだよ。そういう刷り込みを何度も繰り返してるうちに、いつの間にか条件反射で萎縮するようになっただけ。だから、その反射をぶっ壊す」
「……なるほど。それは一理あるかも。じゃあその反射を壊す方法って、どうやるの?」
(中略)
「……うん。分かった。私、頑張ってみるよ!」
凪も希望が見えたのか、やる気を見せた。
「よし、その意気だ。と言ってもやることは難しくない。これからここで俺に何を言われても『はい』って答えるだけだ」
「……? それだけでいいの?」
俺の指示が思ったより簡単だったからか、凪は拍子抜けというような表情を浮かべた。
「ああ。それだけでいい。あと、そこから動くなよ」
(中略)
そうして十メートルほど離れたところで、俺は立ち止まって再び凪のほうを見た。
ぽかんとした様子で俺を眺めている凪。
俺は思いっきり息を吸うと、そんな彼女に向かって大声で叫ぶ。
「凪ー! ずっと昔から好きでした! 俺と付き合ってください!」
唐突な、大声での告白。
「ちょっ……!」
想定外の一撃に、凪は目を剝いた。
戦法があまりに強烈すぎる。力技かつ脳筋すぎる。しかしまあ、こんなのを食らったら人見知りの反射とかそんなもん言ってられねえしなあ……!!
これ以外の箇所でも、主人公が結構気軽にヒロインに「好きだよ」みたいな発言をかましてくる。こういう本気なのか冗談なのかわからないギリギリのラインのじゃれ合いじみた告白っぽいの、そんなん好きになるだろうがよぉ……(ヒロインが)。昔も今も自分を助けてくれる相手が気軽にすきすき言ってきたら、そんなん好きになるだろうがよぉ……。
実際のところ本気なのか冗談なのかは意図的に判然としない状態にされてるんだけど、主人公からしたら過去のヒロインに救われた箇所があるので本気っぽくもあるのがまた良い。めっちゃ良い。
ただのラブコメだけじゃなくて頭脳戦や心理戦の要素が強くて、最後までずっと楽しく読んでた。お互いが支え合ってる関係性も軽妙な会話も強大な敵も、どれも好きな要素ばっかりで読んでてめちゃくちゃ楽しかった!
