没落令嬢の異国結婚録3 (ビーズログ文庫) 江本 マシメサ
あらすじ
異国でがんばるカタコト妻×堅物夫の新米夫婦ラブに試練?感動の完結巻!!
「俺と共に生きてくれないか?」
借金返済のため異国へ嫁ぎ、病弱な旦那様シン・ユーを料理で癒やす日々を送るリェン・ファに、突然後宮出仕の命令が下される!
愛する家族を守るため心を決めたリェン・ファだったが、その矢先皇帝崩御の報せが。さらにシン・ユーが皇帝暗殺の嫌疑で捕まってしまって!?
国を超えた新米夫婦ラブ、感動の完結巻!!
シリーズはこちら。
謀反に追放と盛りだくさんな3巻
今回の巻はひたすらイベントが盛りだくさん。そのせいで若干思うところがあるんだけれど、それはあとから書くとして。
主人公が後宮に召し上げられることとなり、嫌がるがそれをきっかけの一つとしてシン・ユーが謀反を起こす。事前に淡々と計画されていた謀反は無事成功、皇帝は殺されその座には皇帝の弟が立つ。
謀反を起こした犯罪者としてシン・ユーとその家族御一行は絞首刑――と思わせ、実は皇帝の弟とシン・ユーはグル。うまいこと他国へ追放されるが、そちらはそちらで問題があった、という物語。
元々一般市民は国に対して不満があったとは示されていたものの、なんとなく全体的にいきなりかつ駆け足に感じられた。市民の一揆、参加するシン・ユー、殺される皇帝――と、どれもこれもスピードが速すぎた。
主人公が後宮へというきっかけは良いんだけど、ほかが全体的にさくさく進みすぎというか(お義母さん関連はさくさくしてないけど)、なんというか。原因としては、会話が少ないのもあるんじゃないのかな。
こういう出来事がありました、こういうイベントが発生しました。こうしました。
その流れが、会話もなしでさくさくと進んでいく。主人公の心中も描かれていたけれど、全体的に薄っぺらさが際立った。
とはいえ、シン・ユーと主人公の関係性は相変わらず良い。
後宮へ召し上げられると決まった時、シン・ユーに迷惑をかけないために「自分はお金が好きだから良い生活をさせてくれるだろう後宮へ行く」という主人公と、そんな嘘簡単に見抜いた上で絶対に行かせたくないと思い、最終的には謀反まで起こすシン・ユー。愛されてるし愛している……。
1巻当初のであった頃のシン・ユーが見たらすごい驚きそう。元々シン・ユーは突然つれてこられた少女である主人公を、このまま戻せないんだったら家に置いてやるぐらいのはずだったのに、いつの間にこんなにも惚れていたのか。
ご飯作ってくれたり天真爛漫だったりするとこだとわかっているけれど、だとしても愛しっぷりにこちらまでニコニコしてしまう。
ただこの「自分はお金で買われてきた娘だ、お金が好きだから後宮へ行く」からという発言、読み終えてから考えると「だから私はお金が好きなの」にはならないんだよな。
主人公はそのお金を手にとっていないのは金遣いを見ればシン・ユーからしたら一目瞭然。じゃあその金はどこへ?と考えると、主人公がこのタイミングで嘘をつくともおもえないので、父親へというのが一発でバレてしまうんだよな……でも主人公が考えなしなのは最初からだからな。
お義母さん、ああお義母さん……
ツンデレお義母さんが……。
今回駆け足感のあるラストの弊害を最も受けたのがお義母さんだと思う。
この話の魅力の何割かは会話だと思う。片言だけど天真爛漫で前向き、何にでもまっすぐに向き合う主人公。そんな彼女に周囲の人々も次第に笑顔になってく物語だ。
片言ながらも話しかけてくる主人公の可愛らしさや、言葉が不安定だからこそ完全に意思疎通できているとは言い難い会話、完全に意思疎通出来てないけどまあいいやーとなる主人公の地の文が面白かった。
でもこの巻は前述の通り若干駆け足で、物事がエピソードじゃなくてこういうことがありましたーと流されていく。その結果削られるのは会話。私が魅力と思っていた会話ががっつり削られていく。
一番もったいないと思ったのは義母とテーブルクロスに刺繍をしている箇所。
この箇所、今まで通りに会話で表示されてたら「お義母さんツンデレだなあ、慣れてなくても頑張ろうとして可愛いなあ」と思うかもしれない。けれどこの通り淡々と書かれると、どうしてもうざいおばちゃんだなという印象になってしまった。会話の有無だけでこんなに雰囲気が違うんだな。
逆に会話があったから輝いたと思うのは、落ち込む義母に星の宝石箱について話したくだり。
ここがこの巻でイチニを争うぐらいに好き。自分が大事にしていたものを教える相手が落ち込んでいる義母って、なんかもう……愛だよな……。
最終的な感想として、この巻全体に漂う駆け足がラストに向かうにつれて悪化してどんどんおもしろくなくなっていった。