青臭すぎるぐらいの青春映画「仮面ライダージオウ NEXT TIME ゲイツ、マジェスティ」
青臭い青春物語
見る前にさらっと読んだパンフレットで、ジオウで見た彼らに対して『普通の高校生』という文字が見えた。
そりゃソウゴは一応高校生だが普通かと言われれば若干首をかしげるし、ゲイツ・ツクヨミはなおさら。タイムジャッカー(スウォルツ除く)もそのとおりで、一体どんなものかと思ったが。
うわマジで高校生だ!? 青臭い高校生だ!?
これは高校生だ。まごうことなき高校生だ。そして、青春映画としてもすっごく良い映画だった。
柔道でメダリストを目指すも怪我で夢を絶たれたゲイツ、心配だからとそばにいるツクヨミとソウゴたち。夢破れた部活モノの青々しさが本当に、完全に高校生だった。
「ゲイツが柔道を始めた理由は人を守りたいからだ」と叫ぶソウゴの青臭さが刺さる。これは青春映画だ。
「夢が絶たれた自分の気持はお前にはわからない」と叫ぶゲイツ、「わかる」というソウゴに「お前の王様とかいう夢と一緒にするな」と怒鳴りつけるゲイツ。
自分も幼い頃からのずっと真剣に思っていた夢だと叫ぶソウゴにゲイツは怒るけれど、でも私達視聴者はソウゴの夢が本当に幼い頃からで、強い願いを持ったものだと知っている。だからあそこでソウゴが言い返すあたりが刺さる。
「何をするかじゃない、人に何を出来るかだ」という照井の発言を思い出して鉄パイプを持って立ち上がるゲイツの、完全にへっぴり腰なシーンで、こいつは本当に、私達が1年間見てきたあのゲイツとは別人なのだと思った。
レジスタンスで戦う戦士のゲイツではない、一般人の明光院ゲイツだ。今までの学パロシーンでも散々わかっていたはずのそれが改めて思い知らされた。
ただの高校生の明光院ゲイツにとって、友達を守るためとはいえ人間より圧倒的に強いロボット的ななにかと戦うのは恐ろしすぎる。しかも一度自分を簡単に転がした相手だ。さっきバイクで後ろに乗せてくれた男は戦ってるけどそれも仮面ライダーに変身したからだ、生身の自分じゃ戦えない。
でもソウゴは直前に自分を助けた。生身のまま、柔道もやってないソウゴが、へっぴり腰で手を震わせながらも助けた。おそらくはそれを思い出しての変身だった。
本当に高校生の友情と青春物語だった。
ここから先は一気に仮面ライダーになるんだけどね。
4人揃っての変身が謎ハイテンションで面白かったし、全然思い出してないのに勢いで変身しちゃうソウゴさすがは我らが魔王だし、黒ウォズも元気そうでなによりだし、ウォズがソウゴを「最善最高の魔王」と表現するのも良かったね。このウォズはオーマジオウになる常盤ソウゴではなく、この常盤ソウゴを見ている。「忠実なるしもべ」っていうあたりは相変わらずさがあって笑ってしまった。
勝手に逢魔の書に書いてるそこの海東大樹をなんとかしろ。海東大樹をマジなんとかしろ。
活躍の差が激しいレジェンドライダー
伊達さんのポジション良かったな。出てきた瞬間に映画館でちょっと驚いてしまった。ちょっと老けたね。
「俺の患者に~」などと、台詞がいちいち医者という顔をしているのがまた格好いい。さすが伊達さんというかなんというか。相変わらず好きだなと思えた。伊達さんはきっとどこかで元気に医者をしているだろうと思えるあたりがでかい。こういうとこでぽっと出てこられても「伊達さんだったらそうだろうな!」と思えてしまう。
照井竜はすごく良いポジションだった!
「俺に質問をするな!」などおなじみの台詞を織り交ぜつつ、あのWの物語から十数年後の照井竜だった。
毎回照井竜の成長具合を感じるのがエンジンブレードの運び方で、昔は両手で必死で運んでいたものを今では片手で運ぶあたり照井竜本当に成長している。
ゲイツに未来というものを考えさせ、戦う理由を思わせ、目の前でライダーの先輩として戦ってみせる。今回の照井竜は、あの頃の棘棘した照井竜から成長し、完全に大人の男であり将来を進む先輩として存在していた。元気そうで何よりです。
草加雅人は何をしに来た。
よくわからんまま登場したし、この疑り深い男がそんな適当な流れで騙され適当にフェードアウトするか……? こいつ「真理を生き返らせるため」って言われても怪しげだし信用ならないからカイザギアを渡さなかった男だぞ。慎重だし疑り深いぞ。それが海東をこんな簡単に信用するか? 漫画版仮面ライダー913の宣伝に来たのか?
パンフ見た限りウエットティッシュが自分で持ってきたっぽくて村上幸平の草加雅人愛がやばい。やばくないと913祭をやり続けないしコミックスの仮面ライダー913は出ない。
途中で出た敵怪人や召喚されたレジェンドライダーがおそらくこの3人たちの出演作というくくりが合ったとは思うんだけど、とはいえ私はオルフェノクの王がモブ雑魚敵扱いされるのを未だに納得できない。
海東大樹
ジオウの物語で半ばレギュラーと化し、美味しいところを一部ちょこちょこ奪っていき、なんなら最終回に平然といたような気がしなくもない男海東大樹。士がいない場所だとまともとも言われる(仮面ライダー×仮面ライダー×仮面ライダー EpisodeYELLOW参照)言われていた海東大樹。
今回は一体どういうキャラで来る?と思ったらなんか予想外(予想通り)にまともだった……。お前本当に士が関わらないと普通の性悪な怪盗だな。イエロジーも格好良くて性悪な怪盗だったもんな。どうして士がいるとああなるんだ。
黒幕とまではいかないが、ソウゴが忘れさせた世界をゲイツに取り戻させ、戦う力を得させるために動いた男。自分のケツを自分で拭くどころかそれも利用してお宝を得ようとする男。チノナマコ……じゃなかった、アナザーディエンドが発生したのは白ウォズが強かったのも理由の一つだけど、海東があそこで気を抜いたのも理由だからね。あれとても門矢士と似ていて、ああこいつら本当に悪いところが似てるんだなと思わされた。
そもそも、海東が先に手を出して白ウォズんとこ行ったんじゃないのか。お宝という単語だけでディケイド本編でもどこからともなく現れる海東だ。そうとしか思えない。ジオウ本編では「死ぬな士」と虚無から現れなくてよかった(あれ映画館で笑ってしまった)。
漁夫の利を得て一石二鳥どころか三鳥四鳥を狙う海東大樹が相変わらずで、出てきた瞬間に来たぞー!とテンションあがり、そこから顔を見せるたびに次は何をやらかすかとわくわくした。
白ウォズがゲイツをだまくらかすために言った「世界を好みに変えようとしている」、あれあんまり納得できないなーと思ってたけど最終的に「自分の都合よく世界を動かそうとしている」の部分だけは全くなんの間違いもなく完全に完膚なきまでに正しくて、さすが海東大樹。
とはいえお前、スマブレ学園ですらやらなかった学生服は笑ってしまったけれども。お前何歳? 多分そろそろ三十路……うーんやめよう……。
ディケイドがものすごく好きなので出てくれたのはすごく嬉しかった。でも問題の七割ぐらいはお前じゃねーか! そういう海東だから愛せるんだよな……。
銃くるくる回す仕草が好きなので見れてよかった。
結局何しに登場したのかわからないままのタイムジャッカー
レジェンドライダー(特に草加)よりも出現理由がわからなかったのがタイムジャッカー。彼らがここにいる意味があったのか?
オーラは、ゲイツを病院(伊達さんがいる)に連れて行ったり警察官の知り合い(照井竜)に引き合わせたりしているも、それでも彼・彼女たちが存在している意味があったのか?と思わされた。
あとウールの不憫さなんとかなんないんですかね。本編からあまりに不憫すぎて見ていてそろそろ可哀想になる。
スウォルツは顔芸と顔の圧のためなのか?とすら思えてきた。中盤・ラストと意味深なことをしていたけれども結局なんにもないもんな。これでラストにババンと『仮面ライダースウォルツ!』とやるかと思っていたのに(最近の東映ならやりかねない)。
オーラが突然ゲイツへ片思いしてんのも、割となんなの?となった。虚無から恋愛感情が発生した。そんな話をしたら学パロ部分自体も虚無より生れ出づってるけれども。
キャストが出たいと言ったからねじこみか?とすら思った。このあたりは草加に対しても思った。
というか、この時代(2019年)に未来人たちがいて、ならば未来での彼らはどうなってるんだろうか。平行世界とはいえソウゴの作った未来の世界で存在するツクヨミら未来人たちで、じゃあ? うーん? 感覚的にはディケイド・ディエンドの世界を移動する能力みたいなものが働いてると思ったほうがいいんだろうけれども。このあたり全然真面目に考えてないからわからない。
電王は時間一直線の前後移動、ディケイドは世界ごとの移動、龍騎のラストは巻き戻し、ビルドは新世界の作り直し。わけわからなくなってきた。
個人的に、パンフレットで木ノ本嶺浩さんが兼崎健太郎さんについてちょこっと話していて笑ってしまった。ここから年末明治座るひまわりのにおいがする。
脚本・毛利
毛利脚本は特撮でも個人的な合う合わないが大きくて(そもそも私は靖子脚本の八割強が合わない)、ジオウでもアギト編は合う(冒頭のG3射撃音でアガった)けれどもカブトは合わない(加賀美はガタックだよカブトになりたいんじゃなくガタックを選んだ男なんだ)(地獄兄弟あれはない)し、仮面ライダー4号はたしかに刺さったけど同時に乾巧を井上敏樹以外の人間が殺すな!!!!!!!!と思った。乾巧と草加雅人を井上敏樹以外の人間が殺すな。仮面ライダー913新刊よろしくおねがいします。
今回は合うほうだった。くやしい。
こうしてまた「次は……次はいけるかもしれない……」と見て、また「合わねえ!!!!!!!!!!」と叫ぶか「最高……」と頭を抱えるかなんだろうな。
こんなことなら高確率で合わない(ゴーゴーファイブ・実写セーラームーン・電王・シンケンジャー・絶狼・実写刀剣乱舞)小林靖子のほうがまだ思いきれるのに。悔しい。次靖子を見るのはきっと間違いなくなにか用意されてるだろうオーズ10周年なのでそれまでに耐性をつけるべくアマゾンズを見たほうがいいのかな。
ただ、毛利脚本でたまによくあるキャラをフェードアウトさせんのなんとかしてくんないっすかね。舞台方面毛利脚本でたまによく見るアレ。