悪役腐令嬢様とお呼び! 節 トキ

★★★★☆

あらすじ

異世界のトラブルはすべてBLで解決!?

大神那央は自他共に認めるBL大好き女子――いわゆる腐女子である。
しかし十九歳になってすぐに事故死。そして生まれ変わったものの、そこはなんと嫌々プレイしていた乙女ゲームの世界だった。おまけにポジションはヒロインをいじめ倒すライバルの悪役令嬢。
(ちなみにこの悪役令嬢のクラティラス・レヴァンタ、どのルートを辿っても必ず死ぬという運命にある)
クラティラスとして生きることになった那央は悲惨な未来を受け入れ、可憐なるヒロイン・リゲルをいじめ……たりせず、彼女を始めとする女子達にBLの素晴らしさを布教し、同志の輪を広げていくのだった――。

第1回ファミ通文庫大賞ゲームノベル特別賞、受賞作!

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ないなら作れ、農耕精神

主人公が転生した世界はゆるファンタジー乙女ゲーの世界。そこはヨーロッパ風ファンタジーの世界なのにどういうわけかこたつもあれば電話もカメラもあるというゆるファンタジー。
だがその世界にないものがあった。それは主人公の愛するBL。
BLを作るために主人公は自ら筆を取りBLイラストを描き、周囲の人間で素養のある女子たちをどんどん腐女子に染め上げていく! という物語。

ぶっちゃけて言うと、序盤は正直あんまりおもしろくなかった。でも、中盤からの面白さがヤバい

序盤から通して主人公のハイテンションが結構キツい

「貴族? 庶民? そんな区別がなんの役に立つっていうの、くだらない。萌えという尊い想いの前では、誰もが平等。同じ萌を感じる同士であれば、相手が庶民であろうがホームレスであろうが、人外だろうがなんだろうが、手を取り合い抱き合ってひたすら叫ぶしかできなくなるのよ!」
 魔炎ならぬ萌炎は皆を炙るだけにとどまらず、いつしか己の身まで焼き付くしていた。
「私はそんな素晴らしき萌えに、できるだけたくさん出会いたいの! それがないっていうなら、どんな手を使っても作り出し生み出し拡散して、萌仲間を増やして萌を深めてやるわ! 私の萌え道を阻むものがあれば、何が相手でも容赦しねえ…………それが、階級なんてクソみてーな制度でもだ! わかったか、アホ共!」
「は、はいぃぃぃ……」
 五人が揃って涙目で返事をする。
 いっけなーい、クラティラスったらまた素が出ちゃった。テヘペロ~。
 でもこれで、萌えをナメてたこいつらにも少しは理解していただけただろう。

主人公のノリ、だいたいずっとこれ。
だいたいずっとこのまま周囲にBLを布教していく。読んでいくのがこのあたりで若干キツいものがあった。

ただ、主人公自体はすごく好感が持てるキャラクター。序盤からずっと倫理がある。

やっとR18に手出しできるようになったというのに、ついに受験から開放されてBL同人のオフ活動も伸び伸びできるようになったというのに、たった十九年で生を閉じるのは寂しい。

倫理がある。

第三王子殿下は私と同じ年。普通の女の子なら、お母様の言っていたとおり『憧れの王子様』という対象になるんだろう。しかし、私の心は少しも全くちっとも躍らなかった。だって私、肉体は同年代でも心は十九歳だよ? BL妄想のネタにするならともかく、ガキ相手に嫁になりたぁいなんてドキがムネるかよ。

倫理がある!!!!!

個人的に年下相手にドキがムネっている(この言い方古くないか)良い年したキャラクターに若干辟易していたので、この時点でテンションが上がった。
倫理観が近いキャラクターは見ていて楽しい。

本来の乙女ゲームでヒロインだった存在に主人公が接触したのはかんたん『萌える文章を書くから』。彼女に話しかけ、マッチョたちを見せつけ、男嫌いをある程度直させた挙げ句、主人公は彼女も腐女子にする。
というか、男嫌いだと腐女子になれないからね。男同士の接触に萌えさせ、陵辱系の部分が若干入った腐女子にする。

読みながらマジかよ!!!と笑ってしまった。そんな男嫌いの克服方法ある!?!?!?
主人公、腐女子としてはそこまであんまりお行儀はよくないんだけど(自分の兄貴とその従者のCPを周囲に広めまくったりしているしあんまり好きではないタイプ、一時期流行った「ォォォオオオ!」みたいなイキり系腐女子の空気も持っているし)、でも好きなものに対しての情熱や、好きっていう感情の処理がすごくうまいんだよね。

「恋って、いろんなかたちがあるんじゃないかな? それこそ人の数だけ、ううん、好きって気持ちの数だけたっくさん。例えばリゲルがいつも使ってるペンとノートに心があったら、って想像してみてよ」
     (中略)
「ほらね、リゲルにもちゃんと『好き』って気持ちがあるじゃん。それで十分だよ。恋だ愛だなんて、言葉にすりゃ同じでも皆想いは違うんだから差、自分の『好き』を大切にしていこ!」

このあたりの恋や愛の処理方法とか、他人の婚約者へ片思いする少女に対しての愛と恋と萌えの割り切り方とかうまくて、なるほど~~~~となってしまった。好きな対象があるからこそ、その感情の処理がうまい。


そうして徐々に正規ヒロインを腐女子にし、友達となり、乙女ゲームの世界から徐々に外れていったときに、そのイベントは発生する。

中盤、とうとう出会った死亡フラグの王子

主人公が死ぬ原因であり、乙女ゲーの攻略対象である王子の誕生日パーティ。そこで主人公は王子と衝撃的な出会いをする。

この出会い方はあまりに衝撃的というか、ひどすぎて読んでいて笑ってしまった。怒鳴りつけるなw

そうして二人はちょっとした流れにより婚約者となってしまう。いつまでも婚約者がいない王子に相手が出来たと周囲は大喜び、主人公は死亡フラグが立ってしまったと大慌て。
パーティで二人っきりとなり、やっと会話した瞬間に発覚した恐ろしい事実。

「その呼び名……まさか、オーカ、ミ、さん? BL拡散生物兵器のウル腐、大神那央…………?」
 物置部屋の時と同じように私達は見つめ合い、しかし同じ轍は踏まないよう、必死に悲鳴を殺しながら確認しあった。
「お、お前が、あの百合豚ダサキモ眼鏡クソヲタ野郎のオタイガーなんてlありえねーよな? ははっ、ねーわー」
「そ、そっちこそ、そこらの野郎より野郎全開のくせに腐れBL脳満開だった最高に気持ち悪いアホウル腐なんてありえませんよね? ですよねぇ?」
「んだとてめえ、誰がアホウル腐だ。やんのか、コラ?」
「望むところですよ。オタイガーなんてあだ名付けられた恨み、今こそ晴らしてやりますとも!」
「いよっしゃ、勝負だ! やるぞ、いつもの!」
「了解『ゴリオカート』十時間耐久で決着付けますぞ!」

前世の知り合いであり百合豚が婚約者となりました(最悪)(最高)。

こっからの流れがもーーーー最高。今まで若干キツいなと思っていた主人公のヲタノリすら、百合男子との会話が始まったとたんにこのノリはこのノリで良いかもしれないと思わされる始末。マッハで始まるクソ会話。仲の良いのか悪いのかわからないオタク同士で繰り広げられるひどい会話。読んでいて面白すぎる。
相手の百合男子も百合男子で「ですぞ!」のちょっと古めオタ会話なオタクなのでノリが合うんだよね。ここからの二人のひでえ会話が読んでいて本当に面白かった。元気だなお前ら……。

読み進めていれば、意外と主人公と百合男子は生前仲が良かったのでは?と思うシーンが多くて、この二人の関係性ににやにやできる。主人公と百合男子の生前のやりとりや愚痴を聞いたヒロインちゃん(現在腐女子)も「もしかしてすごく仲が良かったんじゃ?」というし。
実際回想などで語られる二人の関係性は仲が良いけれども仲が悪い、推し違い同士といった雰囲気なんだよね。すごく面白い距離感。
なので、この二人の今後が見たいという意味でこの先が楽しみ。

関係性だけ言えば、俺の女友達が最高に可愛いの二人とかなり近いんだよね。

やってるゲームが同じで、うまく出来ない時は協力プレイもしてくれて、CP違いで百合男子と腐女子なとこは大違いだけどそれ以外はかなり趣味が近くて、なおかつ転生後の世界が一緒。主人公は生前百合男子の家で晩ごはん食べてたり10時間耐久マリオカート的ななにかをしたりもしている。居座ってる。親御さんご公認。
なにか少しでも違ったらあの二人と同じ関係になったかもと思った。問題はこっちはCP違いという最大の問題が横たわっているんだけど……。

こうして考えると、序盤の主人公の「こちとら精神年齢19歳なんだから10歳前後のガキにドキがムネるか」も一種のフラグか。中身は同年代なんだしね。

それにしても、中身的にはビーズログ文庫アリスっぽい雰囲気だな。最近読んでたのがそのあたりだからっていうのもあるだろうけど、すごくビーズログ文庫アリス。
でもイラストがフルーツパンチなのはファミ通とか少年向けという感じがまた。色々アンバランスでそれがまた可愛い。実際百合っぽいシーンもあるしね。

農耕精神な腐女子の元気なBL生産&婚約は破棄失敗したけれどもこれからいい感じに行きそうライフ、続きが気になるので早く読みたい。

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