令嬢エリザベスの華麗なる身代わり生活 シリーズ(ビーズログ文庫) 江本 マシメサ

★★★☆☆

あらすじ

公爵令嬢エリザベスと瓜二つだからと、彼女の兄シルヴェスターに身代わりを頼まれた普通の令嬢エリザベス。狡猾なシルヴェスターと腹の探り合いの末、陰湿メガネの婚約者ユーインとの婚約パーティーに出るが……!?

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これが好きな人におすすめ

  • 契約関係の二人
  • 丁々発止のやり取りの会話
  • 三角関係
  • 気の強い女主人公

気位の高いお嬢様による、奔放お嬢様の身代わり生活

ある日主人公のエリザベスが遭遇したのは、とある伯爵家の御曹司。彼はエリザベスを自分の妹の『エリザベス』と勘違いし、これから婚約の顔合わせなのにこんなところで何をやっているのだと叱る。まったくもって別人だと告げたものの、彼はエリザベスに自分の妹の身代わりをしてほしいと頼む。
実家の農場の経営費用と引き換えに妹のエリザベスの身代わりをすることとなったエリザベス。しかし、話を聞けば聞くほど彼女とエリザベスは全くの別人。果たしてエリザベスは『エリザベス』の身代わりをこなし続けることが出来るのか!? というお話。

この作品の主人公であるエリザベスは、非情に気位が高くプライドも高く、負けず嫌い。一歩間違えれば鼻持ちならない女になりかねないキャラクター造形なのに、それがうまい形に作用していて非情に魅力的な少女になっている。
そもそも街中にいたのも花嫁修業として伯母様のところへ出されていたから。この伯母様もまた気が強く、エリザベスが紅茶を淹れたりといった作業がうまくできないと頬を叩く勢いで叱る。そしてエリザベスは負けず嫌いなのでこんなものでへこたれるかと美味い紅茶のために練習する。強気の伯母様vs強気のエリザベス。作中ではちらりと回想で描かれるばかりだけれど、この二人の対戦をぜひともたくさん見たかったかもしれない。

エリザベスを自分の妹と間違えたのは伯爵家の御曹司。彼は伯爵家の名誉のためにエリザベスに自らの妹の身代わりをしてほしいという。
この御曹司がまた曲者。エリザベスを煽る煽る。エリザベスがカチンと来るようなポイントをうまくついて話すせいでエリザベスは完全に拒否って逃げることができない。これが彼女の負けず嫌いがゆえだよね。
でもエリザベスも一方的にやられるばかりではなく御曹司に対して言い返すことも多い。そして御曹司もギャフンと(古い)言われることが多いため、見ていてスカッとすること多し。
なんというか、すごく相性の良いケンカップルというか、利害関係の一致。読んでいて不快感がたまらない。

そんな二人で騙す相手は、本来はエリザベスの婚約者となるはずだった青年ユーイン。彼をうまく半年騙しきれればエリザベスはお金をもらい、『エリザベス』は修道院へ行ったということにして婚約は解消となる。

まったくもって身代わりする気がないエリザベスっょぃ

何が面白いって、エリザベスあんまり身代わりする気がないんだよね。身代わりする気がないというか、正しくは騙す気がない?

身代わり相手である妹の『エリザベス』は、性的に自由奔放な暴れ馬。至るところに恋人がいて、他人の旦那を寝取るなんて朝飯前。
現在の婚約者であるユーインとエリザベスが顔を合わせている時にも、『エリザベス』と過去に関係があったという男性が乗り込み「自分と一緒になるはずだったろう!」と怒鳴りつけてくる。

対してエリザベスは前述の通り気位が高く気が強く矜持が高い女性。全くもって『エリザベス』とはかけ離れた人物。
じゃあ彼女がどうするのか、と言えば「記憶力が悪くてあなたのことを覚えていない」での回避。だけ。あとはめっちゃ普通。普段どおりに過ごす。
『エリザベス』だったらありえないだろう真面目に文官のお仕事をこなし、読書をし、ろくな男遊びもしない。

お前全然『エリザベス』の身代わりする気ないでしょーーーーー!?と思ったけれど、ここまで徹底すると笑ってしまった。

プライドの高いエリザベス的には『エリザベス』みたいなことなんて出来ないだろうし、やっても失敗するだろう。
そう思えるだけの彼女の性格を描かれた以上、もうそこんとこ文句がつけられない。

三角関係、ただし意外と悪くない

『エリザベス』の婚約者であるユーインと、伯爵家御曹司、そしてエリザベスの三角関係も面白い。

御曹司とエリザベスは共犯関係。お金でつながった関係であり、互いに相手の腹を探り合うような部分もある。
しかしエリザベスの性格や物言いなどで次第に彼女に対して好感を持っていく。

婚約者とエリザベスはエリザベスが一方的に騙している関係。婚約者とはいえエリザベスは騙していることについて罪悪感を持っているし、ユーインが好青年だとわかるにつれてそれは徐々に大きくなっていく。
ユーインはエリザベスの貴族というものに対する認識や清々しい性格に噂との乖離を感じ、彼女自体に好感を持っていく。

この三角関係(?)が良い。すごく良い。基本的に三角関係嫌いだけどこの三人はすごく良かった。
エリザベスが二人の感情に気づかず二人は互いの感情に気付いているという部分など普段だったら嫌いな箇所が多いのに、なんでかこの三人は良いなと思えた。二人の感情の向け方がすごくさりげないからかな。御曹司の場合はぎりぎり冗談やからかいだと言える程度に誤魔化しているからか。本当にこの三角関係がうまいんだよ……!
主人公のエリザベスが恋愛的に揺らぐのが御曹司だけというのが良かったのかも。ユーインに対しては良い人と思いつつも徹底してお友達や戦友という感情から変わらなかったし。

『エリザベス』という少女

すごく面白かったシリーズだし最後まで楽しかったんだけど、唯一それはどうなの?と思ったのが、主人公が身代わりを勤めた『エリザベス』の扱い。

伯爵家の娘だが様々な事情があり他の家に一端追いやられ、そこでいじめに遭って、伯爵家に戻ってから義兄である伯爵御曹司に執着する。執着心はいつしか恋愛感情となり、周囲の人間のそそのかしなどもあり彼の気を引くために男を渡り歩いたり御曹司に熱烈すぎるアタックを仕掛けたりと物事をかき回す。

彼女がシリーズ通しての敵ポジションなのもわかるし、物語の始まりなのもわかる。
わかるんだけど、あんまりすぎない?

ぶっちゃけ彼女が義兄である御曹司にしたあれこれって、御曹司がエリザベスにしたあれこれとさほど大きく違うわけじゃないじゃん。
エリザベスと御曹司は最終的に両思いになったから良いとしても、相手の意志確認をせずのキス未満や、ほぼ選択の余地のない二択で無理矢理自分の意になるほうを選ばせたりと御曹司はやってるじゃん。ユーインに対して牽制してるのも『エリザベス』が兄の周囲の人間に牽制しているのとやっている内容的には同じじゃん。

彼女も彼女ですごくひどい目に遭ったし、唯一優しくしてくれた義兄にあそこまで執着してしまうのがわかる。『エリザベス』が過激なやり方をしたのは他に方法を知らなかったり周囲の人々が唆したせいだ。義兄から嫌がられていたものの、エリザベスだって初期に御曹司のやることに明確に拒否突きつけてる。『エリザベス』がこうなったのって、だいたい御曹司や父親も含めた周囲の人間のせいじゃん。

だから、徹底的に敵ポジションとなり最終的には母を手に入れたものの恋はなくした彼女を悪とは思いきれないんだよな。
彼女がこうなったのは周囲の環境が最大の原因だ。保身のためはっきりと拒否れなかった御曹司だって責はある。
『エリザベス』が悪役令嬢のポジションとなりこういう扱いをされてしまうの、やっぱりちょっと違うんじゃないのかなって思うんだよね。
彼女についてだけが不満だった。

少し前に読んだ片言の嫁が結婚する話も同じ作者だったけれど、個人的には同じ3巻モノでもこっちのほうがおすすめかな。
あっちは最後がかなり駆け足で面白くなかったけれど、こちらは最後まで丁寧に描かれていたし、最終巻も面白かった。いや『エリザベス』の処理はかなり雑に感じたし、母親ぁぁ????親子関係なんだと思ってんの?結局これ大人たちの都合で振り回された話じゃねーか!?と思う箇所はあったけれど、それ以外は本当に良かった。

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