「M ~愛すべき人がいて~」に見事に期待を裏切られた話

テレビ

間違いなく6話までは傑作だった「M」

前に、こんな記事を書いた。

M~愛すべき人がいて~は、浜崎あゆみとエイベのトップの松浦勝人の間にあった恋愛模様というか……うーん……なんだろうな……トンチキあれこれエピソードをもとに、フィクションとしてドラマ化したものである。
原作小説があるっぽいが読んでないのでそちらは知らない。
とりあえずこれは、フィクションとしてドラマ化したものである。こんなお気持ちブログを開くような人なら当然知っているとおもうけれども。

途中、コロナの影響で1ヶ月ほど放送が中止になったが、先日7/4に無事最終回を迎えた。
感想として、あまりにひどかった

そもそも私は、Mのトンチキなところが好きだった。
(以下トンチキっぷりのわかりやすさを出すためにねとらぼのツイッターを多数引用します)

マックスマサに対してお前偉そうだと直接言えば「お前面白い女だな」が発生、小室哲哉っぽいがどう見ても服装メイクなにもかもがトンチキな新納慎也、一体この人なんなの……としか言いようがないルー語の歌唱指導っぽい先生の水野美紀、突如マサのライバルキャラになるも速攻で右腕に戻る流川、あからさまな裏工作もいとわないしやってることがあくどいのになんにも反省などしない大浜、骨を折った状態でマラソンさせられるアユ、ニューヨークに突然現れるマサ。崖の上から応援してくれるマサ。
そして礼香。
この物語で最も印象が強いキャラである礼香。

家族にマサを当然のように結婚相手として(マサの了承は得ていない)紹介している礼香。なんか不倫関係っぽいけどマサには全く視界に入れられていないがそれでも引くということを知らない礼香。メモリーオブマサという謎の写真集を持ってくる礼香。自宅に不法侵入している礼香。突然ドラムを叩いてあなたの許さないと私の許さない、どっちが勝つのかしら~!という礼香。

毎週、発生しまくるトンチキと礼香を楽しみにしてきた。
楽しみにしてこなかったらよりにもよって鈴木おさむのドラマなんか見ない。推しがいようとも見ない(八王子ゾンビーズ1話切り)。

だが、MよMUGENに続いてくれとすら願った状況で見た最終話7話が、びっくりするほど面白くなかった。

何故7話にして墜ちたのか

都合の良い『ハッピーエンド』

最終話。物語は、紛れもないハッピーエンドだ。

マサとアユは同棲を始めるが、アユとマサの同棲というスキャンダルを握りつぶすのを条件に大浜に命じられた仕事が忙しく、次第にマサは二人の家に帰らなくなってしまう。マサがあまり家にいないことに不満を持ち始めるアユ。
だが、自分がいなくてもアユは問題ない姿を見たマサは、彼女は自分から離れて独り立ちしたほうが良いと考え始めた。
礼香とキスをしているシーンをわざとアユに見せつけて距離を置こうとするマサ。傷ついたアユはホテルに引きこもるが、流川や過去にライバルだった少女たちから応援されて、仕事を再開させる。
そしてマサに自分の気持ちを伝え、マサはA VICTORYの社長となり、アユはアーティストとしてスターダムを駆け上がっていく。

どこが問題かって、もう全部だよ全部!!!!

おそらくは、物語が『マサとアユは別れる』『アユはスターダムを駆け上がる』『マサは社長になる』までが確定された事項なのだろう(原作読んでないので知らないし実際のあのトップに関してはアレなので調べたくないです)。
よって、物語のラストをそこへ持っていくために、多少強引でも良い、今まで6話かけて描かれてきたキャラクターたちの性格が変更されても良いという前提で物語のために動かした。そう感じられた最終話だった。

つっても今までこっちが6話かけて愛着育ててきたキャラクターたちが、突如数十分にしてキャラが大幅に変わって納得できるかっていう話だよ!!!!

ストーリーのための犠牲としてのキャラクター性

まずはアユ
礼香とマサの関係を今まで何度も疑ったことがあるだろうに、今更!? 今更二人がキスをしていたぐらいで!? 今更!?
礼香からマサへの一方的な執着を見ていたのだから、これは礼香の罠かもしれない(実際はマサの罠だけれども)ぐらいは考えないか!? お前の目は節穴か!? 何を考えてるんだ!?

とはいえ、アユはまだ良い。
コロナ休止明けくらいから台詞がちょこちょことマサの言ったことを繰り返すオウム状態になっていたけれどもそれはまだ良い。台詞考えるの面倒だったのかな?

続いてマサ
こいつそもそもコロナ開けあたりから若干性格が変わっている気がするんだけれども(キレっぽくなった?)、それはおいといて最終回のキャラ変更がすごい。
今まで何があろうともアユアユアユ、アユは歌姫になる、俺を信じろと言い続けておいて、今更アユは一人でも大丈夫、俺がいなくても大丈夫だからと突き放すか? しかも現状同棲までしておいて? 
スキャンダルになる種を潰すと言えば聞こえは良いが、田舎から出てきた女の子をここまで引っ張り上げたのは間違いなくマサだ。そのマサが離れたら彼女がどうなるかわかるだろうが。

そして、今までの流れ的にわかるだろうに、なぜか唐突に突き放した。
今までは誰に何を言われてもアユを手放さなかったマサが、あまりに唐突に。
ニューヨークでも泣き言を言いながらもアユは頑張っていた。今回も二人で住む家にマサがあまり帰ってきてくれないと泣き言を言いながらもアユは頑張っている。
この二種類の出来事に一体なんの違いがある?

むしろ、ニューヨークでの件など二人が離れていても心がつながっていたという描写があったからこそ、今更? 今更それを思うの? いきなりすぎない? 物語のために突然キャラの性格が変わってないか? と思わされた。

こいつどの面下げてアユに会ったんだろうな。すげえな。面の皮厚いよ。モデルは誰……ああ、ハイ。

ライバルグループの少女たちは、間違いなく物語の犠牲者だ。
今まで彼女たちはさんざんアユに対して嫉妬をぶつけ、憎しみに近い感情すら向けてきた。
転ばせ骨を折らせるだけでは足りず、店内というどう見ても人目があり犯人が即バレしそうな場所で彼女にオレンジジュースをぶっかけたこともある。馬鹿なの?

そんな彼女たちも、最終回ではアユの味方だ。
引きこもったアユのもとに駆けつけ応援し、彼女が再び立ち上がるためにエールをくれる。嘘だろお前ら今までだったら喜々としてアユを引退させてただろ……。

ついでにいえば、彼女たちは最終回以外でも、『物語に対立構造を作るためとしてのライバルグループ』『アユ&マサは汚い手を使わないがライバルグループは汚い手を使うという見せのための悪役』『アユがアイドルとしてレベルアップしたら不要なのでさっさと引退させられる』というあまりに損な役回りをさせられている。
物語の被害者といえば間違いなく彼女たちだ。幸あれ。

社長の大浜も、最後の最後であまりにものすごいキャラ変をしてくれた。
今までさんざんマサの前に立ちふさがり、マサとアユの間を邪魔して、マサ自体が嫌いなんだろうなと思わされるぐらいの悪役っぷりを見せつけてきた大浜。
その大浜が、マサの社長就任をあ~~~~~~んなににこやかに祝ってくれるなんて誰が思う!? どうした!? 脳改造でもされたか!?

どう見ても、物語的に遺恨を残さないように適当に良いおっちゃんに変えられたようにしか見えなかった。脳は無事か?

礼香という人間

そして、最大のキャラクター改変を食らったのが、間違いなく礼香だ。

礼香はマサに対して狂気的にも思える愛情を向けていた。
職場でイチャイチャ(マサはスンって顔してる)は朝飯前。自分の見えない側の目に押し付けたマスカットを無理やりマサの口に押し付けたり、両親に紹介したり、写真集を作ったり、ウエディングドレスで登場したり、マサ急便と言って自分の頭に宅急便の送り状を貼り付けたり、もはや何がなんだかわからない。
礼香からマサへの非常に深く頭のやばい愛情があるのがわかる。
突然家に不法侵入した上でドラムを叩きながら捧げる愛があるのはわかる。

そんな礼香が、マサから離れた。

嘘だろ……嘘だろお前……!? 今までさんざんマサから袖にされていて!? 今!? このタイミングで!? 何故!? アユに見せつけるためのキスぐらい、いつものお前だったらそのまま結婚に持ち込むだろ!? どうした礼香!? なあ礼香、どうしたんだよ! お前のマサへの狂気的な愛情はどこへ行った!?

このドラマが、ハッピーエンドに向けて雑なキャラ改変してきてんなと思った最大のタイミングだった。

いやほんと雑なんだよ。6話まででも、結婚を前提に――と親御さん紹介した礼香をほっぽってアユと同棲してる時点でもうこいつ無理だってわかろうよ。なのにそのタイミングなのかよ。あまりに雑だよ。雑すぎるよ。今までの礼香だったら絶対にそのタイミングでは諦めないよ。もっと決定的ななにかがなきゃいけないよ。
マサがアユを歌姫として売り出すのを理解していながら、マサの邪魔になるとわかっていてもアユの妨害をしていた礼香だ。そんな彼女がこの程度のことで諦めるわけ無いだろ。なあ礼香! そうだろ!?

いやまじ雑すぎない?

ていうかなんかいきなり目が!? 目が!?

唯一キャラ変せずに済んだ流川

キャラ改変が荒れ狂う中で、ほぼ唯一といってもいい、最終回でのおかしな変化が無いと思ったキャラは流川だった。
しかし、考えてみれば当然だ。

流川は、最初からアユに対して好意的だった。最終回に向けて皆が皆突然アユに好意的になっていくのは違和感があったが、もともとアユに対して好意的な流川ならばなんの違和感もない。
もしこれが数週間前の状況だったら、ライバルグループのプロデューサーをしている流川が、という空気になったかもしれない。だがライバルグループをプロデュースしている最中でも、流川はアユに対して好意的だった。あのタイミングでもおかしくない。

そして彼は、マサのようにアユから離れなければならない立場でもない。
現状何を変化しなければならない立場でもない。

もともと、流川の物語は、6話時点で終了していたとも言える。
マサの右腕として登場し、ライバルのプロデューサー(けれどもマサとアユに対して好意的)、闇落ちしてCD大量購入するも罪悪感、ライバルグループが消滅したためマサの右腕に戻ると、彼の変化と物語はもう終わっていた。
立ち位置的に、マサとアユ、どちらに肩入れしてもおかしくない。
だからハッピーエンドのために改変されたキャラたちの中において、唯一変わらずに済んだのかもしれない。

6話までは、大好きなドラマだった

起承転結で言えば、突如転結でキャラが変わりすぎたために、今まで愛していた人たちがいなくなったような呆然とした感覚に襲われた『M』。
それでも6話までは毎週毎週楽しみにする最高のドラマだったことも事実。
最高のトンチキをありがとう。そしてさようなら、M。
このコロナで辛い日々の中で、君がいたからこんなにも毎週土曜日を楽しみに出来たんだ、M。

福岡通りもんがスポンサーになったことは忘れないよ、M。

なお、今新規で見てるのはウルトラマンZです。

俺たちにはトンチキが足りない。

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