「超鈍感モブにヒロインが攻略されて、乙女ゲームが始まりません」悪役令嬢の立ち位置に男が入るだけでこんなに話は変わるのか

★★★★☆,TOブックス学園,恋愛,片思い,現代,異世界転生

あらすじ

「アイツらをゲームのキャラだと思ってる?」
モブキャラ転生者・篠山正彦の言動が、乙女ゲームの世界を変えた。理想のルートを夢みて奮闘していたヒロイン・桜宮桃は、地味メンの偉そうな正論に憤る。だが、よく観察してみると――彼は攻略対象のためなら厄介なイベントでも解決へ奔走する超お人好しで? (お節介? 身の程知らず? あれ、ちょっと、ステキ……かも)胸高鳴る桃はいつしか正彦に惹かれアピールを始める。しかし、彼は想像以上の鈍感だった!  事情を察した女子嫌いな王子、純情なチャラ男、病弱な眼鏡男子などモブを慕う攻略対象たちにまで同情から応援される始末……。
「なんで、本人だけ気付かないのーー!!」
頑張れ不憫ヒロイン、鈍感の厚き壁を打ち破れ!
超鈍感なお人好しのせいで乙女ゲームが始まらない、恋愛ファンタジー開幕!

これは良いラブコメ。

妹がプレイしていたゲームの世界に転生してしまった主人公少年。幼馴染が攻略キャラな彼は、高校入学してからはそれ以外の攻略キャラたちもどんどん友人になったりお知り合いになったり、ヒロインとも少しだけ交流したりしていく。
お人好しな主人公は、幼馴染の女嫌いをどうにかするために盾になったり、攻略キャラであるチャラ男(単純にコミュ障で、姉がいたため女子の扱いはわかるが男へ話しかけ方がわからない)と友達になったり、攻略キャラである体の弱い男子と仲良くなったりとしていく。
お人好しすぎる主人公の姿に、本来は攻略キャラを狙っていくはずのヒロインも次第に好意を抱いていて、という物語。

これすごく面白い。物語の構造が面白い。

この主人公のポジションって、乙女ゲー転生モノで言うならライバルキャラのポジションなんだよね。攻略キャラの幼馴染。なんなら悪役令嬢の立場。
そんな主人公だが、性別が男のため、乙女ゲームではカテゴリー的にBLが発生せず(たぶんそういう設定っぽいよね?)いくら攻略対象キャラの好感度をかせいでも逆ハーは発生しない。女子だったら絶対これ逆ハールートが開いてヒロイン含めて全員落としてるけど気付いて無いパターンだよ。
そして他の攻略対象キャラからは恋愛対象外なので、結果的にヒロインだけ主人公に惚れる構図になっている。面白いなー。

お人好しで、他人のことをよく見ていて、誰かのために駆けずり回る。そんな主人公に惚れるのは気持ちがわかるし、あざとくなくてすごく良いなと思った。
最初は主人公のことをモブとしてしか認識してなかったヒロイン(転生者でゲームの記憶あり)が、次第に主人公を一人の気になるひととして見始めるのがいい。

主人公の生き方がいいよね。
ゲームのキャラクターという立場ではあれど、悪役令嬢などではないので処刑・没落回避などの目標は無く、逆に現代に生きると同じく1日1日を大事に普通に過ごしていく。
ルートを狙うわけじゃない、処刑回避のために未来を変えるわけじゃない、学生として楽しく元気に生きていく。こういうの楽しいよなって思った。
ついでに言うなら若干これゲーム転生じゃなくても良くね? とも最初思ったんだけど、ヒロインも転生で記憶持ちなのでゲーム転生の意味はあるのか。むしろ『乙女ゲームのヒロインが攻略対象ではないモブに惚れてしまう』っていう流れのためには意味があるのか。

ヒロインも、もともとは攻略対象含めて様々なひとたちを『ゲームのキャラクターだったひと』として見ていたから、この子は言うことがきつい、このひとはヤンデレなどと先入観があった。
でもみんな、この世界で生きているそれぞれ別個の生きた人間なんだよね。だから実際話してみると案外良いひとだったり自分の性格をどうにかしたいと思っていたりする。ゲームでは描かれなかった個々人を知ることで、ヒロインもゲームとしてではなく少しずつ色んな人に向き合っていく。その流れがものすごく面白かった。

物語はヒロインが主人公への恋を自覚したところで終わったので、この先がどうなるかすっごく楽しみ。ほんと面白かった。
早く冒頭のシーンまでたどり着いてほしいなー。先は長そうだ。

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