「竜神さまの生贄になるだけの簡単なお仕事」本人が目の前にいるとは気付かないままに惚気けるのは最高

★★★★★

あらすじ

押しかけ聖女(嫁)と不器用青年(竜)の勘違い異類婚姻譚(ラブコメ)!

「竜神さまは生贄を受け取るつもりがない?」
聖女見習いのルーチェは、目の前の青年――オルフェンにそう告げられ大混乱。
人の姿を持つ彼は、間違いなくこの地を守る竜神さまなのに。
「俺は絶対に喰わん」「召しあがっていただけるまで、絶対おそばを離れません!!」
かくして食べてほしい生贄の聖女VS意地でも食べたくない竜神の謎の同棲生活が始まり!?

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好きな子が、本人に聞かれているとは知らないままで自分の好きな相手について語っているシーンは良いものだ。
例えば壁越しに、例えばつながっているとは気付かなかった電話越しに、例えば酔っ払って前後不覚になり本人がいると気付かないままに、本人に聞かれているとは知らないままに自分の好きな相手について語っているシーンが好きだ。

そして、この本の大半は上記内容。最高か?

主人公は過去に生贄になっているところを黒い鱗の竜に助けられた少女。現在はとある街で竜に仕える聖女として暮らしているが、神殿に姉弟子を生贄に出せとの矢文が来たので「自分こそは生贄になるべくして生まれた少女!」とばかりに気合を入れて竜のもとへと向かう。
しかし現在その街を代理で守護しているほうの竜にはそんな矢文には覚えはなく、ぐいぐいと「私を食べてください!」「調味料もあります!」「美味しいご飯ですよね、お肉もいかがですか?」と食的アプローチしてくる主人公にたじたじに、という物語。

この代理竜が少女を過去に助けた黒竜。しかし初っ端に主人公が黒竜大好きトークをぶちかまし、それが自分的に超恥ずかしかったせいでそれは自分だと告げられないという流れがもう最高。
本人に聞かれていると知らないが故に爆裂するあの人好き好き惚気トークを強制的に聞かされまくるのは本当に良いものだ。

「ほんとうに、ほんとうに麗しく、かっこいいかただったんです。あの、黒い鱗の竜神さまは……」
「……そ、そうか」
「爪も牙も角も、名工がうんと力を入れて鍛えたくろがねの剣のようでした。そして、私を縛り付けていた鎖を、スパッと! それこそお野菜のように、両断してしまったんです」
「へ、……へえ……」

思わずそんなやつは知らないと言ってしまったせいで自分とは言えない、そのせいでひたすら延々とあの人格好いいんですトークをぶちかまされるの、最高。
読んでいてずーっとにやにやしてしまう。最高。

しかも次第に黒竜のほうが、彼女が見ているのは過去の自分であって今の自分ではない、と同じ自分相手に嫉妬し始めるあたりも最高。この本私の好きなものしかないのか? というぐらいに最高。
照れだけではなく次第に別の感情を持っていくさまが読んでいてにやにやできるしひたすら最高。

この本、表紙は主人公が涙目だけど、どう読んでも涙目なのは黒竜である。
過去の自分のこっ恥ずかしい話を延々と語られるわ、いらない肉(主人公)の押し売りされまくるわ、普通なら涙目である。

この主人公の性格が良いんだよね。
生贄になる、という設定から割とシリアスになりかねないところを、彼女が生贄の肉の押し売り、黒竜のいや肉いらないの拒否でドタバタコメディになっている。
ややもすれば相手の話を聞かないで押し付けてくる主人公がうざいなと思わなくもないところを、彼女の過去と、彼女視点で出される思考回路、ついでに肉が必要な理由が出されるおかげで理解できるから、押し売りへの不快感も全然なかった。

「おはようございます。これからご朝食をお持ちしようと思っていたところでした。お腹が空いてしまって……申し訳ございません。お仕えする竜神さまよりも先にいただく失礼を」
「構わん。まったく気にするな。で、小屋がやけに綺麗になっているのは、もしかしなくともお前のしわざか?」
「はい。お掃除させていただきました。こちらの食事も、心を込めてお作りしたものです! が、お肉料理はないので、よろしければここにちょうどよく新鮮な肉が」
「調理済みの料理だけをくれ」
「……かしこまりました!」

「あの! お願いですから私を今すぐお召し上がりください! お手軽な栄養ホ固有には聖女の血肉が効くはずです!」
「お、おてが……お前な、自分のことをそんなふうに言うものでは」
「お手軽でも手短でも即席ごはんでもなんでも構いませんので、どうぞぜひに遠慮なく召し上がってくださいませ!」

「すみません。どうしても香辛料、……オルフェンさまと一緒に見たくて」
 ヴェールの下からちらりと上目づかいに彼を見上げると、オルフェンは一瞬言葉に詰まったようだった。ついでに、なぜか胸を押さえてうめいているのが気がかりである。どこか調子でも悪いのだろうか。
「クローブや胡椒は、お肉の臭み消しにいいって聞きました。ねえオルフェンさま、お肉のですよ、お肉の」
「肉を三回も言わんでいい。香辛料にやけにはしゃぐと思ったら、お前の味付け用ということか……まあどうせそんなオチだろうと……ちょっと浮かれた俺が馬鹿だった……」

このノリでかまされ続けるお肉の押し売り! さあさあ美味しいですよとばかりにプッシュされるお肉は主人公そのもの! 全力拒否の姿勢を取り続ける黒竜! でも負けない頑張る主人公!
このギャグっぷりの元気の良さに笑ってしまった。お前ら本当に元気だな。
どんなシーンでもお肉が押し売りできそうとわかればぐいぐいとやってくるあたり最高。最高しかないのか?

オチはどうなるのかなーと思ってたら、ぽっと出じゃなくて事前に言われていた要素が組み合わされていて個人的にそのあたりもすごく好きだった。そっちの二人も大変好み。気の強い女の子はいいものだしこういう男もとても好き。
いやほんとこんな好みだらけの本とかある? ってぐらいに好きな話だった。好きな子に強制的に惚気を聞かされるのは良いものだ。

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