「クラスのぼっちギャルをお持ち帰りして清楚系美人にしてやった話」良い意味でタイトルから受ける印象とは真逆

★★★★☆,GA文庫同居,学園,現代

あらすじ

クラスのぼっちギャルを拾った。

転校を控えている高校生の明護晃はある雨の日、近所の公園でずぶ濡れになっている金髪ギャルのクラスメイト、五月女葵を見かける。
「……私、帰る家がないの」
どう見てもワケアリの葵を放っておけず、自宅に連れ帰るのだが――
「お風呂、ありがとう」
「お、おう……」
葵の抱える複雑な事情を聞いた晃は人助けだと思い、転校までの間、そのまま一緒に生活をすることに。
はじめて尽くしの同居生活に戸惑いながらも、二人はゆっくりと心の距離を近づけていき――。
これは、出会いと別れを繰り返す二人の恋物語(ラブストーリー)。

詐欺だよこんなん。

このタイトルから想像できる中身って「イキリ系主人公」「相手のヒロインはギャル」「おれが『してやる』タイプの話」になるかもしれないんだけれども、中身が完全にこの真逆を通り抜けている。
もともとYouTube漫画だったというのならコンセプトとしてこれが先にあったのかもしれないけれど、だとしてもこのタイトルで中身を想像して読んだ人はがっかりさせるし、この中身で刺さりそうな人をタイトルで逃してるんじゃないだろうか。実際わたしもレビューを見なかったらこのタイトルじゃ読まなかったかもしれない。

中身としては、転校を繰り返していて年度末にまた転校を控えている主人公が、雨の中で家を追い出されて行き場のないヒロインを見つけ、彼女の親の状況のヤバさなどを聞いて現在一人暮らしをしている家に住ませると決めるお話。
彼女は外見が金髪なことと学校を休みがちだったことからやばいギャルと周囲からは認識されていたものの、実際は引っ込み思案でおとなしい少女。髪の毛も母親に勝手に染められたものであり、学校を休みがちなのも母親が生活費を払ってくれないが故に自分で稼ぐため。
そんな彼女の悲惨な状況を聞いて、少しずつ彼女に寄り添おうとしていく主人公が優しくて愛おしい。
主人公の付かず離れずの距離感は転校を繰り返している+今彼女を助けてももうすぐ再度の転校で離れてしまうから近づきすぎてもならない思っているからであるがゆえの立ち位置。ヒロインも今までの生育環境からあまり主張を出来ない。そんな二人が、親友カップルの手助けなどもありつつ、少しずつゆるやかに距離感を縮めていく様が描かれているのが本当に良かった。

主人公は少年らしい下心はありつつ、ヒロインに対して「同級生の女子」という視線ではなく「彼女自身」を見ているという雰囲気が流れ続けている。
ともすればひとつ屋根の下であり、自分が助けた立場であり、彼女にたいしてどうとでも強気になれる立場。なんなら一部ラノベの主人公では胸を揉ませろぐらい言いかねないポジション。
それでも彼女が何をしたいか言い出しやすいようにし、彼女の自己主張しやすいようにし、同時に自分がどうしたいのかちゃんと話す彼の描写がすっげー良かった。
親友が言うように、話さないとわからないんだよね。この二人はすぐ転校してしまうという負い目がある主人公と、いったところで母親に聞いてもらえなかったので話すという選択肢を持たないヒロインという立場なのでなかなか腹を割って話せないのだけれども、だからこそ拗れてしまったり、だからこそどうにか進もうとあがいたりするのが本当に良かった。

ゆるやかで良いお話だった。ほんっとタイトルさえこれでなければ……。

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