「江戸落語奇譚 寄席と死神」

★★★☆☆,角川文庫怪異,新人賞,現代,男性バディ

あらすじ

人気文筆家×大学生の謎解き奇譚!

大学2年生の桜木月彦は、帰宅途中の四ツ谷駅で倒れてしまう。助けてくれたのは着物姿の文筆家・青野で、「お医者にかかっても無理ならご連絡ください」と名刺を渡される。半信半疑で訪ねた月彦に、青野は悩まされている寝不足の原因は江戸落語の怪異の仕業だ、と告げる。そしてその研究をしているという彼から、怪異の原因は月彦の家族にあると聞かされ……。美形文筆家と、なりゆきでその助手になった大学生の謎解き奇譚! 第6回角川文庫キャラクター小説大賞<優秀賞>受賞作。

江戸の落語に関する怪異のみ見える落語家と、少し気弱で怖がりで何かしらの特定条件のときのみ怪異がほんのりわかる大学生がコンビを組んで、発生する江戸落語絡みの事件を解決していくふんわりした物語。
個人的にはあんまり刺さらなかったというか、全体的に刺そう刺そうとしている感が強すぎてそれで逆にうーん……?となった感覚があったかも。

まず気になった点として、主人公である大学生が怪異を見えるときの条件がよくわからない。
江戸落語にまつわる怪異が発生して身近にいる状況ならばなんとなく感じられるっぽいというのは読んでてわかったんだけれども、終盤の怪異が意図的に身を見せようとしている時以外はほとんど視界に入っていない。そのぐらいだったら他の依頼人的な人だって見えてる。
他の人と特に変わらない、特段特殊能力が無いように見えてしまった。

なので、落語家がどうして主人公を気に入ったのかわからない。
最初はてっきり主人公が視える人だから自分の仕事に協力してもらいたくてバイトして欲しいと申し出たのかと思ったのだけれども、特にそういうわけじゃない。
ならば仕事にとても有用な能力を持っているのかと思いきや、主人公が行っているのは落語家のツイッターに来るDMなどから怪異の情報っぽいものをより分けて落語家に提出したり、DMの返信を書く作業(定型文あり、ほぼコピペ)。ならば誰だって出来る作業じゃないかと思ってしまう。
落語家が主人公にバイトして欲しがるだけの描写が無いので、なんで?とだけ思ってしまった。そんなもんこの二人をメインに据えた小説を書くからだと言われればそうなんだろうけれども、いや……?その理由は……?と引っかかってしまう。

落語に出てくる登場人物が怪異となって色んな人に悪さをしているから話して解決するというのが本筋の物語ではあるものの、一部の怪異がなぜ現代にそういう行動をするのかっていうのもよくわからない。今まで割りと長いこと存在してきたでしょうが。
逆に死神あたりは納得できたので、これは話によるんだけれども。

こういう部分が引っかかって目についてしまうのって、つまりそれだけ物語に没頭できなくて面白くねえーと思ってしまってるからなんだろうな。些細な点がとにかく目についた。

主人公の家族周りにまつわる話は比較的面白かったんだけれども、メインの軸となる落語の怪異周りが全く乗れず、結局あまり面白がれずに終わってしまった。

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