「芽亜さん、こっち向いてよ」中学生だからこその本気の新婚ごっこ

★★★★☆,MF文庫Jラブコメ,三角関係,両思い,偽装/政略結婚,同級生,恋愛,現代

あらすじ

――もっと見たい、この子の照れ可愛いところ。中学生同士で送る新婚生活!

中学校入学目前のその日、おれ・野々宮空也が父さんに連れていかれたのは、1DKの新築アパート。そこには同じ歳のとんでもなく可愛い女の子・千歳芽亜がいて――
「今日から二人は新婚夫婦だ! 二人はここで暮らせ!」
なんと婚約者として紹介され、一緒に住むことに!?
あまりの急展開に戸惑っていたけど、芽亜さんは受け入れているようで、「私は空也さんの、その、つ、妻に……なるわけですし……」なんてモジモジしながら言ってくれて……!
恥ずかしがっているところが猛烈に可愛い! もっと見たい、芽亜さんの可愛いところ!
そうして、中学生同士のおれたちの新婚生活(?)が始まった──

良い意味で幼い子供の恋愛物語って雰囲気で可愛かった。事あるごとに「もう中学生だから!」って言い張る子供たちが、同い年で相手によく見られたくて背伸びしているだけの相手を「大人で格好いい……」と思ってしまう、そんな恋愛ごっこにも恋に恋しているようにも見える、ものすごく初々しくて可愛いラブコメだった。

子供っぽくて可愛いラブコメ

親の都合で許嫁が決められていて、しかも突然知らされて、いきなりアパートで二人で新婚生活をさせられる!という突拍子もない展開だしめちゃくちゃなんだけど、とにかく主人公とヒロインが可愛いんだよね……。あまりの可愛さに全部許しちゃえる。

もういい年になってしまったわたしたち読者とは全然違うんだよこの子たち。中学生であるというのが大人の証みたいな認識しているんだよこの子たち。それがすげーきらきら眩しいし、文章から出まくっててうわーーー可愛い!となってしまう。

(しかも……おれは明後日から、いよいよ中学生なんだから)
 中学生といえば大人だ。少なくとも小学生だった今までよりは。

「二人のことは将来、結婚させようぜーって昔っから言ってたんだよな~、佳嗣!」
 と言われて、向こうのお父さんは苦々しい顔をする。
「確かにいわゆる許嫁という話にはなっていたが……」
 い、許嫁!? っていわゆる婚約者みたいな!?
 え、今どきそんなのあるの!? しかもこんなめちゃくちゃに可愛いお嬢様と……。
「だからといって、やはりこれはいくらなんでも早すぎやしないか? 桐也」
 ますます苦々しい顔になる向こうのお父さん。
 どうやら向こうは、この展開をあんまりよくは思ってないらしい。
「っ……そんなことはないわ、お父さん」
 けど、娘さん――おれの許嫁だという女の子のほうは、そうじゃなかった。
 彼女は肩に掛かっていた、長く綺麗な髪をふぁさっと勢いよく払うと、
「私たちは明後日から中学生。つまり十分に大人ということだもの」

「おれはもうこういうのは卒業したの! なんせもう中学生なんだから!」

自分はもう中学生なんだ、だから大人なんだ! と主張する子供っぽさがヤバ可愛くて読んでて死にそうになった。こんな可愛いことある!?
いい年した大人から見てしまったら、自分は中学生!もう小学生ではない!と主張することこそもう子供で可愛いじゃん。それを中学生の主張として真正面から出してくるの、もう可愛い。ずっと可愛い。

確かに小学生からしたら中学生ってものすごーく大人なんだよね。
通っている学校は小学校から中学校へと変わり、ランドセルを手放して制服に袖を通す。ランク自体が一個変わったように思えて、ものすごーく大人だと思ってしまう。
大人だから許嫁と突然新婚生活と言われても受け入れるし、大人だからブラックコーヒーも飲む。もう全部が全部可愛いんだよ。

そんな中学生たちが許嫁で結婚をするというおままごとじみた遊びみたいなのが、ものすごーく可愛いなあと思ってしまった。
逆にこれ、高校生とかになると、あざといなとかもうちょっと現実見ろとか思っちゃうんだよね。つい数日前までランドセル背負っていたほぼ小学生みたいな中学生たちだからこそ、こんな恋愛ごっこともつかない(言い方悪くてごめん)新婚さん生活を、ここまで本気で将来にも続くものとしてやれるんだろうなと認識してしまい、もうものすごく可愛い。とにかく可愛かった。

主人公は格好つけで背伸びしがちで、本当はそんなに得意じゃないブラックコーヒーを飲んだり髪の毛かきあげて格好つけてみたりしてる。だから小学校からの友達たちは主人公を背伸びしてるやつとして認識している。
でも突然許嫁ということで出会ったヒロインはそんな主人公を『大人』で『格好いい』と見てくれているのが、もうむず痒いやら可愛いやらだった。
ヒロインも大人ぶって見えるように頑張っているのがわかるんだけれども、それにいちいち主人公が『大人だ……』と認識しているあたりももうものすごく可愛い。本当にずっとひたすらほぼ小学生だらこその視野の狭さと幼さと可愛さでぶっちぎっていく。

これヒロインのキャラ付もいいんだよねー。
ヒロインが慌てると一人称が名前で舌っ足らずな喋りになっちゃうんだけど、これ確かに数日前までランドセル背負ってたレベルの中学生だと許しちゃう。これ高校生だったらあざとい通り越してうぜえなと認識しちゃうんだけど、中学生だったらそっかーそうだねびっくりしちゃったね可愛いね……になってしまう。とにかくかわいい。

そんな小学生上がったばっかりの中学生二人が、相手を大人で格好いいと認識しながら、おままごとみたいででも本人たちはどこまでも本気の新婚生活をしようと頑張っていくのが可愛かった。
学校では秘密のはずなのに嫉妬してヒロインがみんなの前で言っちゃうイベントも、ああ可愛いな……となるので年齢ってすげえな。最強か。

主人公変な扉開けてそう

タイトルになっている「芽亜さん、こっち向いてよ」、何回か主人公が言うシーンって序盤は照れてこっち向いてくれないヒロインにこっち向いて!って言いたい!となってるとこなんだよね。
これ、照れてほしい、その顔をこっちに向けてほしいという新たな扉開きまくってそうで主人公の今後のヘキが不安視される。いやまじで。

読みながら主人公これヘキ大丈夫なのかなってすげえ不安だったしそっち方面に話が転がるのかと不安だった。特にそんなことはなかった。

気になる設定倒れ感

ああ~可愛い……で大半通り抜けられたんだけど、設定周りだけはうん……?と首を傾げてしまった。

主人公は諜報員の、ヒロインは忍者の家系の子というけれども、その部分別に全然設定として生きてなかったな。
最後の最後で実家に帰っちゃったヒロインを連れ戻すために飛び込んでいくシーンでは少しは活用されていたけれども、逆に言うとそれ以外にろくに使われてなくない?
もうちょっと使われたらいいのに、と思うぐらいスーンと消えていった設定だった。2巻があったら使われる予定だったのかな。

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