「マリシャスクレーム」前半は面白いが後半微妙なクレーマーバトル

★★★☆☆

あらすじ

消費者意識が高まる中、それに付け込んだ非人間的かつ悪質なクレーマー ── IPBCの存在が企業の倒産リスクを高めるまで問題化していた。これに対抗すべく起ち上げられたのがエマージェンシーカスタマーセンターである。
センターには常人には耐えられぬ、鼓膜を突き抜ける怨嗟の声が渦巻く。それに微動だにしない青年がいる。榊原常光、唯一の対IPBCのプロフェッショナル。
狡猾かつ理不尽な相手に、それ以上に狡猾にそして冷酷に追い詰めていく常光。だが、今までにない異常な相手が現れ──。

前半は面白いけど後半が微妙過ぎる。

クレーム対応係というお仕事

お客様センターにかかってくるやばいクレーマーと戦う主人公の物語。
主人公自体も過去にクレーマーだった父親によって各所にクレームをつける方法を身に着けさせられ、それがまるで当然の権利であり当然のやり方であると思って育っていた、だからクレーマー対応がうまいというのに超納得。
初期の仮面ライダーみたいなものだよね。ショッカーの力を利用して戦う仮面ライダーと同じく、クレーマーを知っているからこそ対応できる主人公。
けれどもクレーマーに育てられて自然とクレームを付けていた当時を思い出してしまうため、クレーム対応のたびに嘔吐してしまう。そのあたりもすごくダークヒーローっぽかった。

主人公は、クレーマー対応をしていれば、いつか父親から電話がかかってくるのではないかと思っている。
自分をこんなふうに育てた父からの電話に出た時に、主人公はどうするんだろうな。

かかってくる各種クレームの電話のエピソードが面白かったな。
とにかく喋りたいだけ、電話に対応している人の人格攻撃をしたいだけの人は、いくら対応係が真摯に対応しても難癖をつけ続ける。企業対個人という圧倒的有利な立場で相手をボコしたいだけ。
文句を言ったり反論したりできない企業側のコールセンターの人が一方的に悪意で殴られ続けたらそりゃあ精神病むし、そういうのをもはや『客』として対応しないというのも理解できた。

前半に紹介される精鋭クレーマー対応メンバーも面白い。
とにかく金が必要が故、対応に全くなんのメンタルも傷つかない男。七色の声を使い分けるために「上司を呼べ!」で自分で全部対応しちゃう男など、多種多様なヤバがいて面白かった。上司を出せ!で実際人情派上司っぽい声音キャラで対応するとクレーマーが落ち着くの、読んでて笑った。ありそうだし。

中盤以降の話は微妙

中盤以降は、呉道という女性の元に連続してかかってくるクレーマー対応の話となる。
このヤバクレーマー対応の話は正直あんまりおもしろくなかったし、落ちとしても個人的にはつまらなかった。よくわかんないなーっていうか。
してくるのも悪口をただ一方的に言うだけだし、主人公の対応がどこがすごいのかよくわからなかった。
作者の独りよがりが感じられた。

恋愛要素必要あった?

読んでいていらんわーと思った。

高校生の部下は、男の趣味が悪い+主人公が助けてくれるために年上の頼れる人に憧れるという描写でわかる。

宮ノ内も、主人公が最後の呉道との電話で自分がどうすればいいのか見つけるための人という意味ではわかる。いや恋愛要素としてはまるでわからないし、男性キャラでも問題ないなと思ったけど。やっぱわかんないな……。宮ノ内別に女で恋愛感情っぽいもの抱いてるっぽいけどあれ別にいらなくないか……?
宮ノ内の折れない心とクレーム対応能力と寄り添う心で主人公が再度立ち上がるのは熱いシーンだったけれど、その前の「なんで追いかけてきてくれなかった!」のあたりで一度株が暴落しているのでさほど上がりきらなかった。面倒な女だなという印象ばかりが残った。

元同僚のカウンセラーは過去を知っている人としてはいいかもだけど、なんかそれっぽい恋愛要素いらなくない? ここまで来ると多くない? 別にいらなくない?

上司にいたっては最後のキスシーンなんの意味あるんですかね。彼女は恋愛感情なしで場を混乱させたいっぽい気がしたけど、だとしてもキスシーンにする意味があったのかな。

主人公が誰かに恋愛的な意味で好かれるほどの魅力を他者に見せつけるほど持っているとは感じられなかったので、女達に好意寄せられてる描写雑に入れときゃ良いとでも思ってんのかなーとしか認識できなかった。
というか恋愛感情あってもノイズぐらいにしかならなかったので、あっても高校生の子とせいぜい宮ノ内で十分じゃないのかな。

やばいクレームをつけてくる客とそんなクレーマーに心を壊されそうになる人、そしてクレーマー対応のスペシャリストという物語自体は面白そうだし実際前半は面白かったのだけれども、作者の独りよがりになっている後半の呉道の物語がひたすらつまらなくて、間に差し込まれる恋愛要素っぽいあれこれや宮ノ内とのあれこれもつまらなく、結局最後に向かってどんどんと失速していくお話だった。

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