江戸川乱歩名作朗読劇『少年探偵団』9/7ソワレ感想

舞台

鉄鼠の檻ぶりのサザンシアター。新宿駅から行きやすくて大好き。

あらすじ

1949年、秋-
帰還兵・庄司武彦は、元貴族の実業家・大河原義明の秘書となる。
大河原の美しい妻・由美子は、二人の美青年・姫田と村越に愛されていた。
庄司は二人が、謎の秘密結社に〈白い羽根〉を送りつけられ、脅迫されている事実を知る。
やがて姫田が、高い崖の上から落下。
恐ろしい連続殺人事件が幕をあける。
それは、名探偵・明智小五郎と、たくましく成長した小林芳雄にとって、最大の〈悲劇〉のはじまりでもあった……

キャスト

9月7日(土)19:00開演

  • 小林芳雄 松田岳
  • 怪人二十面相ほか 駒田航
  • 明智小五郎ほか 渡部秀
  • 明智文代ほか 薮島朱音

感想

怪人二十面相自体を見たことがないからもともとの怪人二十面相とどう違うかは正直不明。
ただ、江戸川乱歩本人は作中に出てこないし、過去に見た深作さん作品が里見八犬伝なので、怪人二十面相を題材にして全くの別物作ってるのかな?と思いながら見ていた。

回ごとにキャストが違う朗読劇。ステージ上にマイク4本立てて、キャストさんがマイク前に立って喋る。マイクスタンドの高さを変えているのを見るのが好きなので何度も見られてテンション上がった。

演者さんとして、とにかく由美子夫人も小林少年も演じている薮島朱音さんが凄かった!! 声色の変わり方スッゴ!!
冷静っぽい小林少年、ツンデレというよりもツンドラのような少年探偵団の少女、由美子夫人に明智夫人、店員の女性まで多種多様な役柄を声色で演じ分けていて、全然雰囲気が違っていた。藪島さんだけかな? 場面転換なしで別のキャラクター演じたの。最後のほうのシーンで由美子夫人を演じていたのに途中で駆け込んできた小林少年になったところ凄かったよ。
調べたら声優さんで、声優さんってすげー。ここまで声だけで全然雰囲気変わるんだな……。

明智小五郎にとって小林少年はいつまで経っても少年であるっていうのが、序盤にも出てたのがラストにもかかってくるの良かったー。幼い頃を見ているからこそ、大人になって戦場に出て戻ってきた、成長期を経て幼い頃とは外見も結構変わっているだろう小林少年だって、明智先生や文代夫人にとっては幼い子供という印象が抜けない。わたしも小さい頃見てる親戚や芸能人はその頃の印象がどうしても残っているからこそすごく感情移入した。
小林少年=庄司にとっても明智先生はずっと自分より上のどこか頼れる大人という部分もあるからこその関係性だよね。由美子夫人との関係を続けたほうが良いと言われて赤面したあたりも、自分を幼い頃から知ってる大人にそういうの指摘されると小っ恥ずかしいからだよな~~わかるよ……。そういうときの庄司は、庄司というより小林少年っていう印象が強かった。

ところで明智先生と文代夫人による「小林少年はいつまでも子供」という会話って、文代夫人が死に際に魂だけやってきたという意味で良いんだろうか?
そして、それはそうとして庄司の「小林少年はずっときれいな少年のまま!」というのはウンそこはエグいしキモいねと思いました。あれ、新小林少年が実際に小林という名字なのか本名は違うのか言ってた記憶があるんだけど記憶からスっぽ抜けてしまった(台本も購入していない)。後者だったらキモいんだけどどっちだったんだろう。あとでどこかで確認したい。

庄司に対してバッジを渡して「あなたは私達の憧れだった、これ以上失望させないで」と言ったメイド少女は、いったいどこで憧れの小林少年についての話を聞いたんだろう。江戸川乱歩の小説を読んで?
だとしたら、明智先生の少年探偵団になったときに読んで知って憧れを持って、でもって実際の庄司を見たら夫人と不倫してる野郎で……となればあれだけ軽蔑の眼差しを向けたのもわかるかもしれない。
憧れの人にようやく会えたらアレ、ファーストインプレッションとして最悪。

泣きながら「ごめんなさい!」「殺してください!」と叫ぶ庄司、迫真さが凄かったな……。すごい絶叫だった。ぐっと胸に来た。
戦場で死にかけの同期を食ってしまったのをずっとずっと罪としていて、罪を告白して償うべき人にも受け入れられて息子の代わりに生きてくれとされてしまった。誰も罰を与えてくれないのも庄司としてはかなり辛かったんじゃないだろうか。
だからこそ由美子夫人の殺そうとする流れは一種の救いと感じられたし、ようやく死ねると思ったかもしれない。

由美子夫人がたくましい腕で絞め殺そうとしたり、第一の殺人の状況説明で「2階の窓から抜け出して~」と解説されていたあたりで、いやどんな鍛え方してるんだよ!!と笑ってしまいましたが、戦時中に鍛えていたと説明が入ったところで笑ってしまった。そんなことあるかい!
この朗読劇、本当に変なところで笑わせてくる。

本当に変なところで笑わせてくると言えば、庄司を助けたときの明智小五郎の服装が黒タイツって聞こえた気がしたけど多分黒尽くめの聞き間違いだとおもう。聞き間違いであってほしい。

ラストの「犯人は由美子夫人!」からの「大河原は実は怪人二十面相!」、ぶっちゃけ天丼みたいなノリで面白くなっちゃったのは否めない。そういうギャグに弱いんだよ。
このまま明智小五郎も実は……路線で行ってほしくなかったと言えば嘘になる。見てえよ、実は別の殺人鬼なりサイコキラーなりの顔が出てくるの。完全に天丼だよ。庄司でも小林少年でも良いけど。
でも実際やられたらきっと、こんな無茶苦茶、無法が過ぎる!!!って爆笑してた。大河原だけでもかなりおもしろかったもん……。

その大河原というか怪人二十面相、庄司の殺人を止めたりと案外普通の人なのかな。前述の通り怪人二十面相を読んだことがないので江戸川乱歩の作中の怪人二十面相がどういう人なのかまるでわからないんだけれども、まともな社会性と倫理があるのかこの人は??と見ていて面白くなってしまった。これはギャップと意外性から発される笑い。
冒頭で袖からじゃらじゃらと懐中時計をぶら下げて一人用ヘリで飛び立っていく人という描写しかなかったために、めっちゃ機械が好きだったり顔面塗装技術がやばいが倫理観はまともな変人という印象になってしまった。

流れ的に、第一の殺人で2階でピアノを弾いている由美子夫人の時点であ~これ実際は部屋にいませんねまでは普通にわかるし、予想通りというかまあこうなるやろで進んでいくのに、突然急激にハンドル切って謎カーブとスピンをキメていくので時々振り落とされそうになった。
由美子夫人が捕まったという手紙が罠だろうとはわかるけれど、そこから目が覚めたら全裸針金は想像つかないし、SMプレイが始まるのも想像つかないよ。
なんとなく社会派です!みたいな顔したラストで終わったけど、正直いきなりそんなん言われてもとなってしまった。なにいきなり良いかんじに終わりました顔してるんだ。

地味な話だけれども、暗転の代わりに使われる目潰しライトきつかった。アレやるぐらいなら普通に暗転してくれと思うが、演者さんたちが足元が見えて客席側からはステージが見えなくなる演出としては良いんだろうな。客席側としては普通に最悪です。目が痛い。

なお、この感想は帰宅後YouTube配信中のシンるの第二部を流しながら書いています。見たことある人はどんな気持ちで書いてるか想像していただけると幸いです。最悪のタイミングでの配信。情緒がやべえ。さっきツンデレラ。

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