脇役に転生した俺でも、義妹を『攻略』していいですか? (ファミ通文庫)としぞう
脇役に転生した俺でも、義妹を『攻略』していいですか? (ファミ通文庫)としぞう
BookWalkerあらすじ
主人公登場までまてない! サブキャラ兄による妹ヒロイン救済!
気が付くと俺はゲーム『恋色に染まる空』のサブキャラ神崎栄司に転生していた。栄司は攻略ヒロインの兄である。つまり別に主人公がいるはずだ。ならば変に引っかき回さないよう、第二の人生を謳歌すべきかと思っていたが――攻略ヒロインである義理の妹・鈴那がとても辛そうなのだ。ゲームだと主人公に鈴那が救われるのは今から三年後。それまで鈴那は放っておくべきなのか……? ……いや、そんなの無理だ! たとえ主人公でなくても、兄である俺がどうにか鈴那を助けてみせる! サブキャラ兄によるヒロイン救済の奮闘がはじまる!
面白かったし登場人物がみんな良いやつなので読みやすかったなー。人間関係トラブルや不快感なく、なおかつ物語的トラブルがあるのって不快感なく読めて良いよねと改めて認識した。
少しずつ距離を縮めて「従兄妹」が「兄妹」になっていく
自分の今いる世界が前世でやっていたギャルゲーの世界であり、自分はその脇役キャラで、自分の義妹と幼馴染がメインヒロインであり現在物語開始の数年前だと気付いた主人公が、ゲーム知識を利用しつつも基本は自分の努力で義妹と距離を縮めていく物語。
ゲーム知識というチートアイテム自体はありつつもそれを多様していくのではなく活用する程度で、基本は自力で義妹と仲良くなろうとしていく主人公が好感持てた。
前世知識を使う使わないの塩梅が良いんだよね。好かれるために何でもかんでも使うんじゃなくて、前世知識では攻略時に映画館に誘うと好感度が上がりやすいが、なんの映画にするかは今となりで生きてて彼女が興味を惹いたものを選ぶ、みたいな。そうやって徐々に距離を縮めていって、突然引き取られてきた従兄妹から兄妹の立ち位置になっていくのが良い。試行錯誤、あれをやってこれをやって試してみてという行動の結果としての信頼を向けられていくのは良いよ。
徐々に信頼を築いていくのってやっぱり良いじゃないですか。一応お助けヒントとしてのゲーム知識であり、基本は主人公の努力っていうの、やっぱり良いじゃないですか。懐かないというよりも馴染めなくて距離を取っていた子が少しずつ近づいてくるようになる様、やっぱええよ……。
幼馴染ヒロインかわいいよ~~~~!!
幼馴染ヒロインが! め~~~~っちゃかわいい!!!
好意全開ダダ漏れで主人公大好き! ずーっと見てるし隣にいるし大好き! 主人公が悩んでいたら気遣ってくれるし相談に乗ってくれる、困っていたら助けてくれる。ふとした瞬間に頼れる一言も言ってくれて主人公をずーっと見つめていてくれた幼馴染ヒロイン! 最高じゃないか!!!! シンプルで素直に可愛い!!!
こう、いっそ都合の良い女ポジになりかねないキャラ造形なんですが、でもこの子の場合は義妹にされたお悩み相談を一切主人公には漏らさないみたいな人としてまともな倫理を持った安心性があるんですよね。全肯定botじゃないみたいな。
作中でお助けキャラみたいなことやらせちゃってるなぁと言っている通りこの巻でのポジションはかなりお助けキャラっぽいのだけれども、それが全然舞台装置に感じない。主人公への好意ともとからの性格の良さでやっているのがわかる。だからこそ良い。
主人公も彼女に対して全幅の信頼をおいているわけで、どうにか幼馴染ルートないかなあ……。渋谷のロリはだいたい友達、タイトルでロリものと思わせて、ロリを多数出しつつ完全幼馴染ルートだったし、ああいう感じでどうにか何卒。
ついつい続きが気になるってわけじゃないんだけど、ストレス無くて読みやすい
これは小鳥遊ちゃんは打ち切り漫画を愛しすぎているを読んだために意識してしまったんだろうけれども、ヘイトコントロールのうまい作品だな。
キャラクターに嫌な奴っていうのがいないために、物語としてのストレスがすごく少ない。馴染まないし懐かない義妹も理由があるから仕方ないよねと思えるし、幼馴染は完全に良い子。主人公も誰かのために心を砕ける良いやつで、物語の障害としての嫌な人というものが存在しない。
へ、ヘイトコントロール……。インターネットで叩かれることのないキャラクターたち……(小鳥遊ちゃんは打ち切り漫画を愛しすぎているを読んだ直後の弊害)。
嫌な人がいるタイプの物語って、ざまぁという明確な対応方法があり、そいつを見返してやればとりあえず対処が出来るんですよ。だからスナック的なストーリーを作りやすい。ざまぁ対象を見返してやったり片付けたりすることで読者もスッキリするしヒロインからの好感度が上がっても納得できる。
でもこの話ってそういう嫌な感じのキャラクターも出さず、義妹の心に向き合うことによって物語を進めているので、地味にすげえなと思ったんですよね。その向き合い方も主人公が一度死んでこの世界に転生したからこそ出来るやり方じゃないですか。このキャラならではですごいなって。
物語のゴールがわかるので、どこに向かってる物語なんだろう? という疑問がないのも読みやすかった。小さな引っ掛かりを全部取っ払ってくれているからこそ読みやすい物語ってあるんだなぁと改めて感じられた。
文体もかなり読みやすいしね。
ゲームの世界をぶち壊すことになるのはどうなんだろ。
っていう部分はもうゲーム転生である以上どうしてもついて回る問題だし、同時にいくら考えたってどうにもならない問題だよな。
ここで主人公が義妹を助けたら、義妹はゲームの正規ルートとは違う人間になってしまう。主人公が前世で愛したゲームキャラとはまるで違う存在になり、前世で愛したゲーム自体をぶち壊すこととなる。
けれどもこの世界で生きている以上義妹はゲームのキャラクターではなく生きた人間であり、彼女を救えるきっかけがあるならば救ったほうが良いに決まってる。
こういうの、前世の人格が転生先の世界を愛していたと描写されるほどに気になっちゃうな。己の手で好きだった作品をぶち壊すのかって。
これがゲームミリ知らとかTL受動喫煙のみだったらまだわかるけれども、本人が全キャラ攻略して思い入れがあるって描写されるほどに気になっちゃう。
でもゲームの場合はまだ複数エンドがあるからマシなのかな。
でもこのあたり真面目に考えると悪ラスの正ヒロインことリリアの方向に行っちゃうのか? 彼女は主人公転生だしアイリーンと違って物語を……いやあいつが一番ぶっ壊してるなあ……苦境のときの推しほど最高精神で推しを苦境に突っ込もうとしている……あいつはあいつでこの主人公とはベクトル真逆だけどやってることはおんなじだわ。同族か……。
原作至上主義者が原作転生してしまってジタバタする話、面白そう。でも途中で絶対溺愛される。俺はわかる。
脇役に転生した俺でも、義妹を『攻略』していいですか? (ファミ通文庫)としぞう
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