
あらすじ
クソみたいな現実でも、推しさえいれば生きていける。
俺の推しは、ネットで人気の音楽ユニット『満月の夜に咲きたい』のボーカル・U-Ka(ユーカ)だ。
ある日、彼女の配信に映ったのは――学校一可愛い俺のクラスメイト、花房憂花(はなふさ ゆうか)だった。
クラスメイトとはいえ、推しのプライベートにオタクが干渉しちゃ駄目だ!
なのに、なぜか花房は俺に近づいてきて!?
「ちょくちょく、遊びに来るから」
立場を超えた交流が始まり、俺一人だけだった放課後の部室が、推しと二人の空間になっていく。
俺しか知らない推しの一面がだんだんと増えていき――
人気ボーカルと、陰キャオタク。格差があった二人が近づく、両片想い青春ラブコメ。
この上なく面倒くさいヒロインに面倒くさい感じに振り回される、こちらも面倒くさいこじらせオタクのお話。
ヒロインも相当面倒くさいんだけれども、主人公も面倒くさい! めちゃくちゃ面倒くさい! ヒロインに振り回される主人公くんのお話ながらも、主人公もオタクゆえの面倒くささでひたすらヒロインを振り回しているので面白かった。
面倒くさいこじらせオタクくんは、どうあがいたって面倒くさい
大好きなボカロP+歌い手のグループの、歌い手のほうがクラスメイトの憂花だと公表された。途端沸き立つクラスメイトたちと、実は大ファンである主人公。可愛くて性格も良い憂花だが、主人公・夜宮は偶然彼女の性格悪い素顔を見てしまって――!? というよくあるパターンから始まる物語。
スクールカースト上位の女子の秘密を共有したことから徐々に仲良くなる話自体はありきたりでそろそろ飽きてきたところなんだけど、この話はヒロインたる憂花がものっすっごく面倒くさい性格をしていて、だからこそ面白くて読むのが止まらなかった。
「アイドルって言葉がどういう意味か、オタクのあんたなら知ってるでしょ? ──これからも、性格はちょっとアレだけど、歌は世界一うまい憂花ちゃんをよろしくね♡」
「ま、マジで……お前マジでお前……!」
「ばいばーい。また、スマホの画面の中で会おうねー」
性格悪い、でも可愛くて、とてつもなく魅力的で、そんな憂花ちゃんと主人公がしょうもない掛け合いをしているのが大半で、でもそれが面白かった。
自分が性格悪いのを自覚しており、意識的に主人公をいじってるヒロインは良いものですよ。いやいじられている主人公からしたら良いものじゃないかもしれないが、それでも憂花ちゃんの場合、自分が性格悪くて主人公をいじってることに自覚的だから良いのかも。無自覚でやってるとむかつくが、わかってやってるのは性格の悪くて意地悪な子だからな。いやそれもダメだと言われればそうなんだけど……なんだこの感覚……オタクくん面倒くさい……。
憂花ちゃんも面倒くさいんだけれども、主人公もそれに違わずめちゃくちゃに面倒くさいのも良いのかも。
「う、ううう……お、俺は、本当に……U‐Kaのことが大好きなのに……」
「だ、だから、ありがとうって……」
「だから、お前じゃねえって……」
「……本当、どうしたらいいのよこの気持ち。まんさきのU‐Kaをこんなに好きになってくれたファンがいるのは嬉しいのに、そいつからこんだけ嫌われてるって、どういう状況なの……?」
好きなグループのボーカル・U-Kaが大大大好きなばかりに、クラスメイトの性格悪い女子な憂花と同一人物とはわかっていて納得してはいるとしても微妙に別人のような扱いをしている夜宮のめちゃくちゃさがウケる。お前、U-Kaは好きだし憂花ちゃんがU-Kaなのはわかってるけど、それはそうとして若干憂花ちゃんのほうが軽んじてる部分あるだろ。
憂花がU-Kaっぽくない行動をすると、こじらせているが故に「こんなの違う!」になっちゃう主人公も面倒くせえやつだよ。
いやでも、接触不可オタクからしたら大好きグループのボーカルなんて天上人なので、そんな人にやすやすと絡まれたりじゃれつかれたり親しげに話しかけられたら、そりゃあ認知はバグるし精神もおかしくなるのかもしれない……いや主人公はどう見てもこじらせヤバオタクなだけですが。
そんな面倒くせえと面倒くせえがうまいこと噛み合っているので面白い。
中盤くらいまでは二人の関係性がなんら変わることのないまま続く軽い会話劇で、中盤に入ったイベントにより憂花ちゃんが夜宮を意識してバグり散らかし「こんなの憂花ちゃんじゃないんだけど!?」と混乱するというそれこそテンプレなイベント続きながら、面倒くさい×面倒くさいの爆発力がすごくて面白くなって読んでしまった。
ラストも憂花ちゃんの面倒くささが爆発していて最高。こんなクソ面倒くさい女に付き合えるの、夜宮ぐらいだよ。なんだよ自分から距離を取るのは良いけど夜宮から距離を取っちゃダメって。面倒くさすぎる女すぎる。でもそれが可愛いから憂花ちゃんはすごい。
続きも気になるといえば気になるんだけれども、あらすじ見る限り多分これ三角関係発生するようなので遠慮させてもらいます。
