ウタモノガタリ -CINEMA FIGHTERS project-感想
ちょっと前にLDHのライブ・映画無料配信をしていて久しぶりに見たので(一応リアルタイムでも見に行った)、見返した感想がてら。
なお、ガンガンネタバレしている。
キャスト
『カナリア』 監督:松永大司 キャスト:TAKAHIRO/夏帆/髙野春樹/塚本晋也
『ファンキー』 監督:石井裕也 キャスト:岩田剛典/池松壮亮/前田航基/芹澤興人/岡根拓哉/美山加恋/伊佐山ひろ子/麻生久美子
『アエイオウ』 監督:安藤桃子 キャスト:白濱亜嵐/木下あかり/林寿美/奥田瑛二
『Kuu』 監督:平林勇 キャスト:石井杏奈/山口乃々華/坂東希/筒井真理子/平山祐介/野島直人/麿赤兒
『Our Birthday』監督:Yuki Saito キャスト:青柳翔/佐津川愛美/ランディ・ジャクソン/芦名星/余 貴美子
『幻光の果て』 監督:岸本司 キャスト:山下健二郎/中村映里子/大城優紀/加藤雅也
総評:短編集するんなら、せめて内部でプロット話し合おうな
この映画のコンセプトは、作詞家:小竹正人の作った歌詞×複数本を題材に15分映画作ろうぜ! そして詰め合わせて発表しようぜ! というもの。
まあぶっちゃけて言えば同人アンソロ(イメソン各自割当)みたいなもんで、なおかつキャストのメインにLDHの事務所の人がいるというタイプ。
15分という決められた短い時間のなか、それぞれが一体どんな物語で、どんな持ち味を出すのか、というのが普通この手の作品の見せ場だろう。
でもさあ! 商業作品なんだから、せめてそれぞれプロットを見せて、ネタがかぶらないかだけは確認しようぜ!!!!!
この短編集は合計6本のそれぞれ独立した物語で構成されている(イメソン別だしね)。
おそらくは東日本大震災と思われる津波で母親をなくした青年、仲間たちが泣いた涙で津波が起きて水の中で母親と出会う物語「ファンキー」。
世界大戦とか諸々ファンタジックでSFっぽい雰囲気を匂わせながらぶっちゃけ内容が何もわからない、死んだ彼女っぽいのに未練がある物語「アエイオウ」。
彼女を殺したサメを追いかけ続ける漁師の青年の物語「幻光の果て」。
よくわからない何かから逃げる女が対岸にいるよくわからない人たちにジェスチャーで何か伝えようとしている「Kuu」。
恋人に突然別れを告げられ距離をおかれた青年の物語「Our Birthday」。
東日本大震災の後、死んだ彼女の父親の牛舎を手伝い続ける青年の物語「カナリア」。
女が死に過ぎなんだよ。
女が死にすぎなんだよ!!!!
6本のうち、彼女が死んだのが4本! 女が死んだという雑なカテゴリにしてしまえば5本! 女が死にすぎなんだよ! どんだけ女が死ねば気が済むんだ!
Our Birthdayは離れただけと思わせて彼女は実は死んでいるというのがラストのトリックでもあるのに、今までさんざん女が死んでいるのを見せられたので「あーあーこの彼女もどうせ死んでるんでしょ? ああやっぱ死んでたわ」程度にしか思えない! はっきり言ってもったいない! もったいないんだけどお前も女が死んでるのか! だろうな! 女死ぬからな!
それから東日本大震災ネタというか、津波がトップとラストでかぶってる。
扱う題材的にかなり大きなものなんだからせめてそこかぶらないように出来なかったのかなあ……。
しかも物語の作り的にファンキーがどうしてこうなった的な雰囲気があり、カナリアがかなり真面目に作られている(ぶっちゃけかなりメンタルに来た、しばらく刺さってしんどかった)ので落差が激しい。
ファンキーが映像でどばばばばばばーっと津波を表現しているのだとしたら、カナリアは映像以外の音で表現してくるので表現力の差もかなり出てくる。しんどい。
カナリアは隣県が題材で事前情報である程度知ってたから心の準備が出来てたけど、ファンキーは全然準備が出来てなかった。
あとさーーーーーーーKuuは理解が出来なかった。なに?
物語としての流れも何もかもわからず、15分間の虚無だった。
アエイオウもふわっとSFっぽさというかなんというかをやっていたけれど、結局どういう話?と訊かれたらわからないとしか言いようがない。Kuuよりは物語あるけれども。
などと思いながら見た(2回め)。
上映当時に見て、もう一回見て、ここまで全く評価が変わらないのもある意味すごい。
そんな中でも個人的に面白いなと思ったのは「Our Birthday」。
上記の順番がわかっているため、今回は最初に見た。
最初に見ることで女が死ぬという先入観が全く無く……というのは無理だがあまりない状態で見られたのが良かった。こうしてみると細かい伏線を混ぜつつ、彼女が絶対に生きているとは見せず、最後の最後で彼女がいるのは何もないはずのベランダの向こうという演出がとてもおもしろかった。
15分でトリックもしかけつつこれだけのものが見せられるのだなというのがとても興味深かった。
また、「カナリア」も個人的に評価が高い。
津波を、映像を使わずここまで恐ろしいものとして見せるのほんとすごいな。ありきたりな言葉だけど、ものすごく怖かった。
また、あまり長時間は映っていないのだけれども、震災後の何もなくなった街の描写が懐かしくて、ああそういえばあの頃こうだったなと思った。うちの近所はここまでじゃなかったけど、少し行くとこんな風景があった。ちょっと色々あって自転車で少し走ったらこんなんだった。
予測をしていたからちゃんと見れたけれど、それがなかったら多分この映画が一番きつかったと思う。
次作はちゃんとネタかぶりしていないそうで良かったです(完全に見放して次のは見なかった)。