「ファースト・デート」役者は良いが構成がnot for me
歌唱力も物語の流れ自体も間違いなく面白かった
ブラインドデートが初めてのアーロンの前に現れたのは、気が強くて気だるげでギャルっぽくて学生だったらスクールカースト上位っぽい女性のケイシー。
ブラインドデート初めてだからこそ何をどうやって良いかわからないまま言っちゃまずい発言をするアーロンや、ギャルっぽさでどうにもノリが完全は合わないケイシー、それでも酒を入れて少しずつお喋りをしている間に、少しずつ相手について知っていき、どういう人なのか薄々見えていくうちにどんどんと気になっていく物語。
特徴的なのは、物語の最中でテレビのように一時的にぴたりと世界がストップし、ミュージカルナンバーと共に、ケイシーまたはアーロンのどちらかの世界に入ること。
その世界のなかでは彼/彼女の身内など様々な人が彼/彼女に話しかけてくる。つまりは自分の善性やら良識やら、友人だったらこういう発言をするだろうという想定やらなにやらで自分との問答をするのを見せられる。
このターンがほぼ歌ってる。そしてこの心の声ターンがめっちゃ多いので、その分全キャストの歌がものすごく大量に聞けて良かった。
アーロン役の村井さんとケイシー役の桜井さん以外の5人は様々な役柄を演じるために早着替えがすごかったー。レジーが電話してくる時の植原さんの格好とナンバーが面白くて、もはや天丼レベルなので、最後のほうではイントロ流れるだけで笑ってしまった。
個人的に好きなキャラクターはケイシー。
ラノベによくいそうでいない、スクールカースト上位のギャル。ときたま不思議な発言や突拍子もない発言、陰キャの主人公になんて好意なんてなさそうで適当な発言もしつつ、でも陰キャの主人公くんがこういうデートに不慣れなのを知ったらちょっとは教えてくれる、基本的にこっちに興味は無いが一応人の良いギャルって雰囲気が本当にめちゃくちゃ好みだった。
しかも歌うときに高音がすっげえ綺麗で超良かった……。
ギャルっぽさがメインに出つつも、次第に好みとは真逆のアーロンの人の良さに引っぱられて好きになっていくのが表情からわかって超良い。前述の心の声ターンですっごい惹かれてるのが丁寧に表現されるので、ああ好きなんだね……そうなんだ……とほのぼの見守ってしまった。
過去彼の趣味の悪さを思い出しアーロンに「刑務所に入ったりしたことない!?」と勢い込んで聞くあたり、もうそれ好きになりかけてるけど『好みだから』じゃなくて『アーロンだから』で好きになってるのを認めたくなくて、必死で好みの部分探してるじゃん! 可愛いかよ! とテンション上がった。じたばたっぷりが凄い。
元彼の腕に入ってた文字が『右投げ』『左団扇』なの、なんで左団扇!?と笑っちゃった。なんで左団扇なんだよ。
アーロンはどこまでも面倒くさくて人の良い人だったな。結婚式当日に逃亡した元カノ(相当性格がやばい)を未だに引きずってるあたりで相当やばいが……。元カノについて思い出すときに、都合の良い設定や幻覚を元カノに言わせてるのもアレだが、それにツッコミを入れるのも彼の脳内幻覚友人なのもどこまでもめちゃくちゃなんだよ。
中盤~、ケイシーに「お友だちになろう」と言われて「友人として!」「友として!」と強調してくるあたり、もうこいつ本当に面倒臭えな! と笑ってしまった。こいつ絶対人がよく見えるけど面倒臭えよ。大丈夫かケイシー。
単純に構成が合わなかった
とはいえ、あんまり面白がれなかったのは構成がとにかく合わなかった。
どちらかというとぽんぽん進んでいく物語が好きなので、彼らの現状の心情や悩んでいる内容の説明のためとはいえ、入りまくる心の声ターンがだるく感じてしまった。
入るのがかなり頻繁かつ長いので、今のこまに会話劇を進めてくれ、ケイシーとアーロンのやり取りを進めてくれと思ってしまう。元カノを思い出して友人からツッコミを受ける(すべてアーロンの一人脳内遊び)アーロンも、姉に結婚相手探してるんでしょ!と言われまくるケイシーも面白かったんだけれども、私がそういう構成が好みじゃないという理由で面白がれなかった。これは完全にnot for meですね。
こういう一時停止して心情を語りまくる、小説でいうならば地の文を5pぐらいに渡って脳内小話まで含めてやりまくる話が好みな人は楽しめるだろうし、曲数も多いし多種多様なので色々聞けて楽しめると思う。
ただ私がそういうのが合わなかった。