「琴崎さんがみてる ~俺の隣で百合カップルを観察する限界お嬢様~」軸が不明瞭すぎて何をやりたいのかわかんない
琴崎さんがみてる 〜俺の隣で百合カップルを観察する限界お嬢様〜(1)
あらすじ
名門お嬢様学校が今年から共学化して、クラスに男子は俺ひとり。普通の男ならハーレム万歳みたいになるんだろうけどあいにく俺は……百合が好きだ。
そして、この学園には俺の同志がいる。
「はぁあああああ、尊いですわ……!」
幼馴染の琴崎さんと二人。
息を潜めて百合カップルを観察する。それが俺の……いや、俺たちのライフワークだ。
この楽しい時間をいつまでも続けていくため、俺には守るべきルールがある。
『琴崎さんを好きになってはいけない』
だって、百合を愛する観察者は、自分が当事者になってはいけないんだから。
読み終えてからひたすら無……となった。
全体的に雑というか面白くないというか。軸をどこに置くのか決めないままあれこれ手を出した結果、まとまりきらずにぼろぼろになった感じのお話。
百合かラブコメかヒロイン単体の物語か、せめてどれかに絞れば良かったのに。これじゃラブコメって言っても百合って言ってもどれも詐欺だよ。
ラブコメとしても物足りない
物語は変化をつけてくれ論者なので、特段変化ないままぬるぬると続く二人の関係性がうーん……だった。
ものすごーく好意的に考えると一緒に百合を観察している二人は傍から見たらイチャイチャしている二人だとか、二人だけしかわかりあえていない関係性だとかそういうものの表現ではあるのかもしれないけれども、だったらそれを周囲から言われて「言われてみれば……」みたいに照れるぐらいのシーンはほしい。
百合好きお嬢様の解説感想付き百合観察シーンって、ほぼ完全にその百合っぷる2人を描写するためのシーンであり、主人公とのイチャイチャには使われていないんだよね。
主人公との共通の趣味であるという表現なのに、その趣味を通じてなにか変化するでもなく、心折れて再起しようとするでもない。そんなん朝顔の観察日記と同じようなものじゃねえか。朝顔の観察日記でも台風が来て朝顔が飛ばされかけたり花が吹き飛びかけたりするぞ。
いちおう申し訳とばかりに出てくるサブヒロインもいるけれど、とはいえ彼女も主人公を好きなのかあやふやだし、メインヒロインたる百合好きお嬢様の前で主人公にベタベタイチャイチャして危機感を煽らせるといったこともしない(なんなら別の百合っぷるがその役目を担った)。
主人公が勃つということの表現以外に特になんにも役立ってないサブヒロだった。彼女と家庭科室でごちゃごちゃするシーン、別にメインヒロインでも良いわけだし。
ラブコメとして見てもの足りなかった。
百合としても物足りない
そのお嬢様が楽しく見る百合も、1本1本が短いからこそどこかで見たようなものの詰め合わせだった。関係性を出されると、ああこういう感じの二人でだいたいこんな感じのオチになるのね、はいそのとおりでした、みたいな。
こじれる感情も(尺がないので)ないし、メリバ的なオチも(尺がないので)無い。想像通りのものが一本道で出されるだけなので面白みが無いんだよね。
百合モノとしても中途半端というかふわふわしすぎていて、百合を楽しみたいんだとしたらもっと面白い本があるよという感じ。
お嬢様単体で引っ張っていくにも物足りない
限界なお嬢様が興味津々でテンションバク上げでデバガメしてるだけの話なので、そのデバガメにテンションあげるところを面白がらなきゃならないんだけど、総じて無だった。百合は好きなんだけど、お嬢様のテンションについていけず、主人公はお嬢様よりテンション低めなのに楽しいね~で進むのでツッコミ不在でどうしていいかわからなかった。
その百合好きお嬢様が百合にここまで固執するにはこういう話があって……という彼女自身の物語部分もあるんだけれども、事前にある程度伏線やフラグがあったわけでもなく、最終章で突然ぽっと出てくる。そのため……へえー……というぐらいの感想しか持てない程度の感情しかわかなかった。
総じて、ラブコメ・百合・ヒロイン、どこに軸を置いているのかわからないし、どこを軸にして面白がらせたいのかもわからなかった。
完全に余談なんだけど、これの感想探してたら男女と百合を混ぜるな的なものがいくつか見受けられて、ああー小説だとBLは分けられてることが多いからBLを観察する男女カップル(メイン)みたいなのは出て来ないよなー、百合は一般小説に混ざってるから男女も混じるよなーとかなんとか考えつつ(百合レーベルでメインに男女が入り込んできたら流石にどうかと思うが)軽くググってたら、
百合好きヒロイン単体で観察してる話(もともとのYouTube)が、無から生えてきた男主人公とともにイチャイチャしながら観察する話になってたっぽかった。
そりゃキレる。それはキレていいと思った。
実は企画の初期から「琴崎さんが1人で百合を観察している」YouTube版と、その後日談(1年後の話)としての小説版をセットで構想していました。小説版のコンセプトは、既に話題になっているように「百合好きなお嬢様と百合男子が一緒に語り合う」というもので、これは企画初期の頃から変わっていません。
これきつくない!? 男女になるのを知ってて百合を読むのと、無から男が生えてきていきなり男女にされると思いながら百合を見るの、全然違わない!?
むしろこの設定を知った後だと純粋にYouTube版も見れなくない!?
これ、感覚的には百合レーベルを読んでたら突然男が生えてきたぐらいにビビるんだけど一般的にはその感覚で合ってるのかな。一般レーベルで出てきた百合を眺める女に男がくっついてるより全然質悪いでしょこれ……。
琴崎さんがみてる 〜俺の隣で百合カップルを観察する限界お嬢様〜(1)