「薄幸な公爵令嬢(病弱)に、残りの人生を託されまして 前世が筋肉喪女なので、皇子さまの求愛には気づけません!?」両片思い可愛いし転生モノの引っかかり箇所がなんもない
あらすじ
武闘派OL呉葉は溺れていた子どもを助けて死亡。
すると『その強靭な魂わたくしにください』と虚弱な公爵令嬢クレハに転生――するも、寝たきり生活がツラくて町に下り、ごろつき相手に大立ち回りする現場を隣国の皇子イザークに見られてしまう。
その姿を気に入られた(?)呉葉は彼と秘密を共有し、本物クレハの命を奪った犯人を追い詰めることに!?
※皇子特に求愛してない
タイトル詐欺に突っ込むの好きなのですぐ突っ込んでしまう。
面白かったー! 脳筋な主人公が筋肉で解決する、というほど筋肉オンリーでもなく、互いに未自覚な両片思い部分も戦闘もこっそりとした秘密の共有も全部すごく面白かった!!
冒頭で「先輩って空っぽですね」と言われる主人公だけれども、その分誰かへの愛や献身が詰まってる主人公の呉葉が、読んでてめっちゃ好感高かった。誰かのために尽くす人だからこその物語だった。
他人のことを考えてしまう呉葉だからこそ、シスコンな兄に「あなたの妹は死んで、現在異世界から来た別人の私が入っています」なんて言えない。他人のために走り出す呉葉だからこそ、イザークと最初出会った路地裏で見知らぬ少女をかばって戦った。
すごいさり気なく相手のことを考えていて相手のために動いているんだなって思える箇所が多くて、読んでてこの主人公めっちゃ好き!って何度も思えた。
呉葉がもともとの肉体の持ち主であるクレハではないと知っている他国皇子のイザークとの恋愛模様も読んでて可愛かった。
恋愛というにはまだちょっと到達してないか?という両片思いぐらいなんだけど、その塩梅がめちゃくちゃ可愛いんだよな……。呉葉は元の世界で29まで彼氏なしだからそのあたりの機微は疎いので恋愛まで到達しない。イザークもなんとなく嫉妬っぽいのはするけれども本人は恋愛とは気付いていない、というこの絶妙さよ。
二人が呉葉≠クレハの秘密の共有者で、だからこそ二人でこそこそおしゃべりをしたり、お腹が空きがちな呉葉を餌付けしたりというシーンがすごく可愛い。バレてはいけない秘密がある二人は結びつきが強固になるんですよ。そう、湊かなえのNのためにのように。
戦うところが格好良くて惹かれたっていうイザークの惚れ方がファンタジー的ですごく好き。呉葉はめちゃくちゃ強いけれども、現代日本にいたらそんなに活用しない特技だし、キャー!格好いい!もあるけれども、ちょい引く部分もあるじゃないですか。でもファンタジーだとそういうのなしに、実力で戦って強い女は格好いい。そんなん恋。
イザークが呉葉にすごいさりげない独占欲を出しているのが可愛かった。美味しいものを食べるときに兄が食べさせるものだけじゃなくて自分が渡す甘いものも食べて欲しがるシーン、絶対気付いてないけど恋じゃん!!ってめちゃくちゃ大喜びしてしまった。それが恋だよ!!
この本読んでて、自分が転生モノで気にする箇所が全部うまいこと潰されてて大喜びしちゃった。
元の人格どうなってるの!?→元の人格はこの体には戻れないし、それを了承済みで呉葉をこの体にいれた。なおかつ元の人格たるクレハも呉葉の行動を見ていて楽しんでいた。
元の人格どうなってるか普通もうちょい気にするだろ!?→気にしているので、この体はレンタルだから大事にしなきゃと思っている。
転生後の恋愛、たいてい年齢差がかなりあるので、年齢詐称他人アイコンのTwitterアカウントが若い子とネット恋愛してるの見るようできっつい→かなり序盤にもともとの年齢を明かして自分の状況その他を伝えているし、イザークが意識したきっかけは呉葉の体術という現代日本の呉葉が身につけたもの。
ものの見事にうまいこと気になる箇所全部つぶしてくれたおかげで、無駄に気になる箇所無しに読めて途中で喚かずに済んだんすよね。これ地味にすごいデカかった。