「孤独な森のひきこもり魔女、王太子妃として溺愛される」過去出会っていましたの出会いがこんな嫌な方向なのある?
あらすじ
ひきこもり魔女のラスが偶然助けたのは誰もが憧れる王太子アレンだった!
初対面からアレンはなぜかラスに対して好感度MAX!
しかも王太子妃に迎えられる可能性が浮上して……もしかして伝説の"溺愛の呪い"にかかってませんか!?
呪いを解くには彼の側から離れなきゃなのに――
「君は俺の特別だから」
完璧王子の溺愛包囲網から逃げられません!
面白かったー!
夕鷺さんの小説って一般小説と少女小説の落差がものすごいし、これだけ全然違うのって凄いよな。一般小説はブラック系なのに少女小説はベタ甘可愛い系、どっちを読んでも楽しいの凄い。
過去会ってましたはベタだけど最悪すぎる思い出なのが意外
この人が私に優しくしてくれるのは◯◯だから本当は恋じゃない系はいつ読んでも良い。ベタだけれども最高に良い。だからこそ偽装結婚モノだとか付き合っているフリものだとかが流行るんだよなあと改めて思った。
これは200年前の先祖が王族に「みんなうちの一族の顔見たら惚れて溺愛する」という呪いをかけた一族の主人公が、王太子と出会って助けてしまったために彼から優しくされるものの、でもこれって呪いのせいであって本心じゃないだと怯えつつも惹かれていくお話。そんなん可愛すぎる。
引きこもりで陰キャで人との交流をあまり得意としない主人公ラスが、もともとは贖罪のために主人公に何かしら礼をしようとしていた王太子のアレンにあれよあれよという間に外堀埋められどんどん囲われていくのが面白すぎる。
気付いたら王宮に連れて行かれ、気付いたらドレスを与えられ、気付いたら一緒に食事をし、気付いたらそのまま居座らされ……。迷惑にならないようにさっさと帰ろうとしつつもアレンにいい感じに口で丸め込まれてどうしようもないラスが、なんとも言えず可愛い。
そして、アレンの優しさや魔女に対する偏見のなさに触れていくうちにどんどん彼を好きになるも、これは呪いのせいなのでと怯えて一歩引いてしまうラスの様子が、そうそうこういうの、こういうのが読みたいんだよ少女小説は!!と思わせてくれて最高だった。こういうのがいいんだよ!! 本当に!!
アレンがラスを構うのって最初のうちは正しくは溺愛というより贖罪。
普通こういう少女小説の『昔会っていました』って心休まる時のない王太子と偶然出会った無垢なヒロイン、彼女が王太子を精神的ないしは肉体的に助けたことで王太子は恩義を感じ、彼女を好きになるじゃん。なんで悪ガキとして名を馳せていた王太子が仮面舞踏会に潜り込み、ヒロインをみっともないと悪口言ってその場から帰るになるんだよ!! 確かに本人の記憶に残ること間違いなしだけれども、残り方が自分が悪ガキだったとは言え最悪すぎる。王道の外し方として面白いけど、ヒーローとしてどうなんだよwと笑っちゃった。
でも、そういうイベントがあったからこそラスのことが忘れられなかったんだろうな。
そしてこういうの、相手も覚えていて「あのときは嫌だった」「ごめん」というやりとりがあればもうちょい救われるものの、ラスのほうはよくあることすぎてろくに覚えてなかったのは流石に笑ってしまった。一応助けてもらった思い出としてようやっと思い出しはしたけれども、こんなんありなのか。
アレンがラスについて「どこで惚れたんだろう~好き~」ってしてるところが可愛すぎた。こういうの無限に読みたい。
淡々と外堀埋め尽くしているアレン、もうちょいラスの意見も聞け!!と思うものの、ラスは外堀埋め尽くされないと頑張って逃げようとするから正しいのかもしれない。
とはいえ、アレンが側近のガイウスがおそらくラスへなにか危害を加えてくるだろうとわかりながら、いつまでものうのうとほったらかしてたのはもうちょっとなんとかしろ!と思ってしまった。いや、アレン的には魔女反対派を一網打尽にするためには、決定的瞬間を掴まなければならないのはわかる。だとしてもここまで危機に陥っちゃうのはな。
でももふもふ集団に和みきっちゃってる反対派たちは面白かった。そんなんでいいのかお前ら。アロマは香り、紙吹雪は舞い、花が咲き、犬猫ひよこたちがころころと転がりまわる癒やし空間。そんなん誰だって和む。ずるい。
お姉ちゃんたちのキャラが強すぎるし好きすぎる
おねえちゃん!! あまり出番がないものの印象が強烈すぎるお姉ちゃん!! 描写的にラスのことを大事にしてくれているのはわかるけれども、まともに描かれた最初がアレンの回想で男連れて他の部屋に消えていくところだったお姉ちゃん!
圧倒的にキャラが強すぎて笑ってしまった。酒癖も男癖も悪く探究心旺盛というキャラ、どう見てもサキュバス方面の一族なんだよなあ……。
「えー? 相変わらずクロトはおカタイんだからぁ。ただでさえ人間の男は寿命短くて死にやすいのよ? 順繰りに付き合ってたら後ろの方は逃しちゃうわよぉ。もったいないじゃない。昔から言うじゃない、みんな違ってみんなイイって」
こんな上のお姉ちゃんと
「あらそお? でもそういうクロトだってぇ、東宝で男ばかりの錬丹術研究機関に潜り込んで、片っ端から誘惑して遊んでたところでしょお。所詮アタシの相手は無関係同士だもん、そっちのほうがよっぽどえぐいじゃなぁい。今mだえいくつ集団の結束を見出してきたのよ。男同士の友情ばっかり狙ってヒビいれて楽しむの、よっぽど悪趣味よぉ」
「そんなこともありましたわねぇ。……でも、彼らの反応はちょっと斬新でしたのよ。『もう俺達は女になんて期待しない!』とひとしきり憤慨して涙に暮れたのち、コンボは煩悩を捨てて筋肉を磨く路を極めるとかで、全員ムキムキになって連れ立って秘境で滝に打たれに……あれ、結局どうなったのかしら。急に気になってきましたわね。もう昔のこと過ぎてわすれてしまっていたけれど」
「……お姉さまたち、お変わり無く……お元気そうで……」
こんな下のお姉ちゃん、キャラが強すぎて好きにならざるを得ねえよ。こんな多股で元気なお姉ちゃんたち、ありかよ。清楚系なのにサークラ大好きの下のお姉ちゃんのほうが問題ありすぎない!?
ラスだけが突然変異扱いで、だからこそラスだけが真実を知らないというのも納得出来た。