「魔女のふろーらいふ (電撃文庫)天乃 聖樹」きらら系温泉物語……なんだけど、そのゲームっていうのは一体なに
あらすじ
静岡県、修善寺温泉。その外れにある『願いの湯』を訪れていた一條ゆのかは少女と出会う。その少女の名はサピ――記憶を失った異世界の魔女だった。
「そもそも、『温泉』とはなんじゃ?」
「温泉は、自分に『お疲れ様』っていう場所なんだよ」
温泉を知らないサピと、温泉が大好きなゆのか。二人の出会いをきっかけに始まったほのぼの異世界交流。ゆのかの所属する温泉同好会も巻き込み、気づけば少女たちは温泉巡りをすることに。
サピの記憶の手がかりを探しながら、温泉でほっこり至福の時。癒しの先に見える景色は、いつもより少し優しくて……。
これは、マイペースで元気なゆのかと、異世界の魔女サピによる、お風呂と癒しの物語。
基本的にはきらら系の小説版というか、ゆるーいテンションで女子たちが温泉に入る物語。とはいえ記憶喪失モノの美味しいところもちゃんとあったし読んでて楽しかった。リアル温泉とコラボ出来そうな内容だなとは思ったけれど、それは温泉むすめと競合するのかな。
ゆるーい温泉部活動物語
異世界からやってきた記憶喪失の魔女のサピ。彼女を保護したのは温泉大好き女子高生のゆのか。サピの記憶を取り戻す鍵が温泉に入ることだとわかり、サピはゆのかや同じ学校の温泉部の仲間たちとともに、いろんな温泉に入りに行くという物語。
きらら系の小説版系な雰囲気の、ゆるーいノリで温泉浸かって美味しいものを食べてのまったりライフがメインで、読んでいてもうめっちゃ温泉はいりてえー!って思ってその日の夜は風呂に入浴剤を入れた。描写がね、もうめちゃくちゃ可愛い。風呂に浸かって「あ゛あ゛~」ってなってる女子高生たちも魔女のサピもみんな可愛いし、そうだよね、風呂入ると体ほどける感じして気持ち良いよな、と思ってこっちまで入りたくなってしまう。
しかもご当地ごとの美味しい食べ物もサピが紹介しまくってくれる。作中でも食レポか!って突っ込まれてたけどマジで描写が想像できる。美味しそう。結果的に読んでるこちらも温泉に行きたくなる。完全に観光地紹介ラノベだよ。
終盤は、最強の魔女だの災厄の魔女だの言われていたサピの不穏な記憶が戻ることでサピとゆのかの間に微妙な空気になったり戦闘が発生したりもしつつ、そんなシリアス要素もさほど強調されるまでもなく、ゆるーいノリが大半でほのぼの読めた。
記憶喪失モノの美味しいところがきっちり詰まってる
記憶喪失モノって失ってしまった記憶を取り戻すとどうなるんだろうという恐怖や、過去の自分がもしかしてすげーやべーことやらかしてたんじゃという恐怖。記憶のないときの自分も結局は自分なので、自分はもしかしてものすごくやばいやつじゃないかという怯え。そのためにこれ以上記憶を取り戻すのが怖くなる。
おまけに自分はうっすらとしか覚えていない過去の自分を憎む人が現れて、その自分は今の自分とは記憶が繋がっていないのに責められる。今の自分は自我を構成するデカい部分である記憶自体が無いのだから性格や物事を行う際の基準や倫理観も違うのに、昔の自分と同一として襲ってくる。
そういう記憶喪失モノの超美味しいトロみたいな部分が、基本ほのぼのの物語のなかにしっかり詰まっていて最高~~~!! そう、私は記憶喪失モノが好き。ニチアサの影響。記憶をなくした人が、それ以後に所属したコミュニティのほうに性格を引っ張られたり、記憶を戻したところで前のコミュニティや世界に戻るんじゃなくて新しく出来たコミュニティに所属するのを選ぶのが大好き。仮面ライダーアギトの翔一くんみたいなやつ。
ご当地コラボ出来そうだし、ゲームあるんだ……いやなにこれ?
前述のとおり、めっちゃ入りたくなる温泉の紹介と、サピによる超美味しそうな食レポが繰り返される本なので、読んでると静岡の温泉地に行きたくなってくる。作中でもサピの記憶を取り戻すために複数の温泉をスタンプラリーが如く回るというシーンがあるんだし、そういうご当地タイアップしたりしないのかな。サピの巡った温泉を同じように巡ると記念品もらえる的なの。
そういえばあらすじに原作小説みたいなん書いてあったな……と思って検索したところ、ゲームがあった。
えっ……なんだこのサイト……サイト見てもどういうゲームか何一つとしてわかんないしキャラクターもイラストだけあって名前すら合致しないんだけどなんだこのサイト……。YouTubeもあるしツイッターもあるけれど、どっちもゲーム内容が全くわからない。すごい。ええー……? 一体どんなゲームなんだ……。なにも想像がつかねえ……。
最後の最後にゲームを確認しようとしてなんだこれは……?になってしまったものの、それはそうとして面白そうだとは思った。