「孤独な深窓の令嬢はギャルの夢を見るか (電撃文庫)九曜」穏やかな恋愛最高すぎる
あらすじ
とある「事件」からクラスで浮いていた赤沢公親は、ある夜、深窓の令嬢然としたクラスメイト、野添瑞希とコンビニで遭遇する。
ばっちりキメたギャル姿の彼女と。
学校でのイメージと大きく異なる瑞希。周りから求められる“清楚な自分”ではないことを気にする瑞希だったが、「好きな服を着ることは正しい」と公親が肯定したことからふたりの奇妙な関係がはじまる。たまにコンビニで瑞希と過ごす穏やかなひと時。そんな誰にも言えないふたりきりの秘密の時間が心地よく――。
普通でありたい公親とギャルになりたい瑞希の、穏やかな恋の物語が幕を開ける。
面白かった! クラスで人気のあの子の秘密を俺だけ知ってしまった系ではあるんだけれども、主人公の取るヒロインへの距離感が絶妙で、読んでいてあーーーこれは好きになりますわ……と何度も思ってしまった。この先の二人がどうなるか楽しみすぎる。
クラスの可愛いあの子と秘密を俺だけが知っている
クラスで浮いている主人公・赤沢が夜にコンビニに行って偶然見かけたのは、深窓の令嬢的クラスメイト・野添。普段の学校での姿と違いギャル風の服装をしていた彼女に話しかけたことにより、時々夜にコンビニのイートインでおしゃべりする仲になる二人のお話。
クラスの可愛いあの子の秘密を俺だけ知っている、ということから仲良くなる話ってここ数年すごくよくある。けれどもこの物語の場合、もともと野添の側は赤沢がクラスから浮くハメになった事件が野添をかばったためであるという事情もあり、もともと赤沢が気にかかっていて、ようやくきっかけがあって会話できるようになったとも見えてそこが結構他と違ってんなーという印象。きっと野添ちゃんの側はどこかのタイミングでちゃんと話したかったんだろうな。
赤沢が野添の秘密を知ったからといって大きく変化したりしない。夜にコンビニで会話するようになったからといって、何もかもが変わるわけじゃない。それでも、野添が徐々に赤沢と仲良くなろうと距離を頑張って詰めようとしていくさまが可愛かった。
恋愛模様としては野添は赤沢の友達から見てもわかるぐらいに意識してるし好きになってほしいんだけど、でも赤沢本人は全然気付いてないのが焦れったい~~~!! けどこの気付いてなさがあざとかったり嫌なかんじだったりしてないのがすごいよな。赤沢の場合、そういう人間なんだろうなって思わせる雰囲気がある。だからこそ野添!!頑張れ!!頑張ってくれ!!と応援したくなる。
主人公の距離感がすごく良い
赤沢の家で倒れた野添を看病するエピソードで、赤沢の距離の取り方が絶妙だなって感じた。ただのクラスメイト男子に顔を見られたくないだろうしと自分の仲の良い女子生徒を呼んで看病を頼む。自分は図書館に限界までいて、閉館時間となったらコンビニのイートインスペースで一夜を過ごす。女子と同じ部屋に一晩といったイベントは存在しない。
ラノベ的なあるあるだったら、看病イベントって部屋で男女が一晩あれこれ、体調不良で赤面したあの子に不埒な想像をするといった流れが定番な気がする。ちょうどこないだ読んだラノベも、風邪引いた主人公のもとに来た女子2人が水着で主人公の入浴介助をしてくれるシーンが入ったし、そういう非日常によるラキスケだの恋愛イベント進展だのあるだろうと思いながら読んでた。でも赤沢はそういうことをせず、友人のセレナを呼び出して彼女に野添の看病を頼む。めっちゃ正しいんだよね。
そういった部分が、終盤に赤沢が彼の『普通じゃない』とされる正しさ絶対主義があると明かされたことでなるほど……となる。たしかに男子と女子が同じ部屋に一晩というのは正しくないだろう。イートインスペースで野添とお喋りをするときには必ず飲食物を持って行く。そもそも赤沢がクラスからハブられる理由となった野添を庇った事件だって、彼の正しさという規範ゆえだろう。そういった、正直物語上の面倒くさ突っ込み避けかと思えた正しさが赤沢の性格上の意味があるとわかったときに、なるほどな~~~となった。
で、そういう普段は正しいからこそ距離感がかなりしっかりしている人が、
「でも、赤沢さんに買ってもらう理由がありません」
「僕が見たい」
なんてやってプレゼント買ってあげたらそりゃもうめちゃくちゃになるやろがい。ぐっと来るに決まってんだろうが!! このシーンめちゃくちゃキた。好きになるに決まってんだろうがい。
この先野添が無事赤沢に自分の好意に気付いてもらえるのか、気付いてもらった先に赤沢がどう返せすのか楽しみすぎる。