「玄関前で顔の良すぎるダウナー系美少女を拾ったら (角川スニーカー文庫)ななよ 廻る」ヒロインはダウナーじゃなくて性格悪いよ

★★☆☆☆,角川スニーカー文庫一人暮らし,同級生,学園,現代

玄関前で顔の良すぎるダウナー系美少女を拾ったら (角川スニーカー文庫)ななよ 廻る

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あらすじ

「好きにしたら?」そうして彼女は目を逸らす――。

親元離れて独り暮らしする学生、日向。ある雨の日、帰宅すると玄関前に女の子が蹲っていた。名前も知らない、よくマンション内ですれ違う顔が良すぎる女の子。どうやら家に帰れないらしく、部屋に招き入れるが――?

そうそう、面白くない物語ってどういうでもいい部分がひたすら目についてマイナス探しをしてしまうんだ、というのを改めて思い出した。
面白い話だとご都合部分やおかしいやろがいな部分だって面白さでなぎ倒して行けるんだけど、面白くない話だと物語にノリきれないから粗がひたすら目につく。もうめっちゃ粗ばっか見える話だった。

ヒロインもやばいが主人公もやばい

玄関前にいるびしょ濡れの美少女を拾って家にいれて風呂に入らせてやったらヤらせてくれそう雰囲気で誘ってくるも拒否ったら、実は彼女は不登校の同級生で主人公に弁当渡すためだけに登校するようになりそのまま半同棲になる物語。
ヒロインがやばいという雰囲気にしたいっぽいオチだったけれども、どう見ても主人公もやばい。

ヒロインはダウナー系美少女とあるがあまりダウナー系の印象はなく、どちらかというと序盤は暴言系かシンプルに性格悪いのかなの印象のほうが強い

「洗ってアイロンかけたから」
「……別にそのまま返してくれてもよかったのに」
逆に申し訳なくなる。
そう言うと、なぜかゴミでも見るかのような目を向けられてしまう。
「きも……。なに? そんな趣味があったの?」

このあたりとか

「美味しかったよ?」
それこそ、毎日作ってもらいたいぐらいだ。そう素直に口にすると、スッと目を細められる。
「なに、それ。プロポーズ? よく会ったばかりの女にそんなこと言えるね。プレイボーイかなにか?」
「ちがっ……!?」

このあたりとか

「うん、でもいいんじゃないかな焼きタコさん。美味しかったし、火を通してるからお弁当にも適してると思うよ? タコさんウインナーに代わる新しいお弁当の定番おかずになるね!」
「…… 煽ってるわけ? ほんと最悪」

主人公がヒロインのちょっとした勘違いにフォローいれても暴言、褒めても暴言。面倒くせえなこの女
それでもヒロインに関わる主人公が、別にヒロインにめちゃくちゃ惚れているとか、ものすごーく同乗しているとかではなく(この時点では)、なんか成り行きでという雰囲気なので、主人公のメンタルもどうなってるんだ?と思えてくる。自分に暴言吐いた人間たいてい嫌になるものだけど、秒で記憶消えてるのかな。

おそらく生育環境が悪いんだろうなっていうのは想像がつくし、弁当もろくに作ってもらったことがないからまともなおかずがわからないんだろうというのも読んでれば想像がつく。でもそうなると、なんでヒロインが主人公に一宿の礼として弁当作ってきたかまるでわかんなくなる。
手作り弁当って相当リスキーじゃない? 相手が自分の昼食を持ってきていない+素人の手作りを食ってくれる+ろくに交流のない人間の何入ってるかわからない手作りも受け入れてくれる。この条件をクリアしないと手作り弁当なんて食うの無理なのに、お礼になると思っていたヒロインの想像力はなかなかにやばい。

暴力ヒロインや暴言ヒロイン、シンプルに性格悪いキャラクターって、わたしはそこまで魅力的に感じられない。とにかく大好き!ばっかり言ってくるのが良いってわけじゃなくて、主人公のすること全肯定botはそれはそれで嫌い。でも、元気で素直で頑張り屋みたいな子がいたら、当然そっちのほうが可愛く見える。
褒めたりフォローしたりしても片っ端から否定してくる、しかも卑下じゃなくてフォローした側を貶めるような言い方をするキャラクターって、どうしても読んでて好きだと思いづらい。

で、このヒロインは序盤がそれで、特段その理由が判明するわけでもなく性格悪かったことへのフォローはないまま主人公の家で半同棲を始めるし、なんなら主人公にべたべたと密着したがるしで気持ち悪いし、主人公は主人公で心がよほど鈍いのか暴言は無なので、なんなんだこいつらになった。

社会にまつわる部分がガバガバ

主人公の学年が読み落としたのかよくわからないんだけど、物語開始時点で時期は6月。主人公は半年前までは家族と暮らしていたが、父親の転勤?出張?で一時的に一人暮らしとなっている。夏休み終了までにそのまま一人暮らしをするか家族と一緒に住むかどうか決めろと言われている。
この一時的な一人暮らしというのがダウナー系美少女を家に連れ込んで半同棲するための設定とはいえ、いやいやいや普通に4月で転校じゃない? なんでわざわざ夏休み終わりまでの期間限定なの? と思ってしまった

しかもこの設定って中盤過ぎたあたりで突然生えてきたので、いきなりどうした???になる。ヒロインとのギクシャクを描きたいのかな、この先どうなるかわからないという危機を描きたいのかなとは思ったのだけれども、期限がめちゃくちゃ過ぎない? せめて年度終わりじゃない?

しかも最終的には主人公は夏休み終了まであと2週間というタイミングで「親や妹からの連絡もすべて放置してる。転校や引っ越しの手続きはもう間に合わない」などとぐだぐだ抜かしながら、ヒロインを追いかけることもなく家でぐだぐだしている。
どう考えてもヒロインを吹っ切る(親のもとに行く)ではなくヒロインと一緒にいる(引っ越さない)しか取る選択肢がないんだから早く動けよ。親御さんめちゃくちゃ困ってるよ。

ツッコミどころがどうしても気になる

で、社会部分以外も突っ込みどころが多いっちゃ多い。

これはわたしが年を食って大人になってしまったから思うことなのですが、人んちで揚げ物するキャラクター、ちょいちょい見るけど良い根性してるな。
揚げ物ってめっちゃ面倒くさいじゃん。準備はビニール袋でどうにかするとしても、揚げ油の準備・処理、はねた油の片付け、油を切るためのあれこれって面倒くさいじゃん。
主人公は一人暮らしになってからろくに自炊していない=ほぼ半年は何もやってなさそうなのに、酸化してないまともなサラダ油あったんか。まじで重箱の隅なのはわかってるんだけど。スーパーで一緒に買い物したあとに自宅帰りたくない様子で主人公の家に直行したっていうことはヒロインの家から食材を取ってくる余裕はないということなんだが、サラダ油わざわざこのために買ったんか。キッチンペーパーや油の後片付けする物あるのか。
しかもヒロイン、どうも料理はあまり得意じゃない描写が入ってる。油がはねないようにとか絶対出来ないだろ。

弁当渡すのも相当距離感がバグり散らかしているが、主人公を後ろから抱きしめるようにして座るのも、自分が嫌がられてないどころかむしろ好かれているという認識がないと出来ない行動だろうし、ヒロインの自己肯定感や自身への自信がどうなってるかぐちゃぐちゃだよ。
終盤のデートあたりでおそらく母親?の行動を擬態しているぐらいだから自分への自信がないのかと考えるんだけど、でも主人公にべたべたいちゃいちゃしてきてるあたり、無ではないでしょ。好かれてる認識あるでしょ。

っていう部分が気になるのも、物語に集中できないからなんだよな。

結局物語は一ミリも変化してなくて、問題自体もろくに解決しておらず、二人でずーっと同じ場所で足踏みしてるだけの1冊っていう印象だった。
こないだ感想書いた放課後、ファミレスで、クラスのあの子と。も、物語のなかで根本的な問題は解決してない。ヒロインの家庭環境の問題はそのまんまで何も良くなってない。でも主人公とヒロインは互いという理解者を得た、それだけで救われるし助かるだろうと思えた。
オチとしてはこの話も同じで、ヒロインの家庭環境はそれ以前に明かされもしていない。母親?姉?かわからんがヒロインによく似た外見の自宅で客取ってる雰囲気の姉ちゃんは、ヒロインがしばらくろくに家に帰ってこないことを心配してるが本気で探す気はない。主人公はそんなヒロインをなんかしらんけど「俺がいないとこいつは死んでしまう!!」と思い込み、ずっといっしょにいる!!!と決める。
びっくりするほど「へえ」という感情しか出てこなかった。

自分でも何がこんなにおもしろく感じられなかったのかよくわからないんだけど、とにかく面白くなかった。

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