小鳥遊ちゃんは打ち切り漫画を愛しすぎている (MF文庫J)望 公太

★★★★☆,MF文庫Jお仕事,学園,現代

小鳥遊ちゃんは打ち切り漫画を愛しすぎている (MF文庫J)望 公太

小鳥遊ちゃんは打ち切り漫画を愛しすぎている (MF文庫J)望 公太

AmazonBookWalker
あらすじ

放課後、部室で密かに行われるのは……打ち切り漫画批評!?

俺、月見里司は高校生で漫画家志望。大人気の漫画誌、週刊コメットの漫画賞で最終選考まで残った経験もあり、今日も今日とて漫画部部室で、デビューを目指してネームを悶々と考える日々……なのだが、異様なまでに打ち切り漫画を愛好している部の後輩の小鳥遊がいつもちょっかいを出してくる。「お前……結局趣味が悪いだけじゃねえか。デスゲームやってる貧乏人を、金持ちが安全圏から見て楽しんでる感覚かよ」「ち、違いますよ! 私が求めてるのは散り際の美しさです! 土俵際の美学です! 敗者の生き様です!」「ただただ人間として面倒くさいな!」漫画同好会部室は、相も変わらず他愛のない会話で溢れている。

小鳥ちゃん、絶対サバイバル番組好きでしょ。

それ言って大丈夫なんか!?が多くて読んでて笑っちゃった

打ち切り漫画を愛しているヒロインという時点ですでに問題が様々ありそうな題材ラノベ、実際読んでみても問題しかない方向性で面白かったー!
漫画家志望で有名漫画雑誌に投稿してすでに担当がついているものの編集部会議で先に進めない主人公・月見と、同じ漫画部所属でクソ漫画を愛しているヒロインの小鳥ちゃんの、うだうだと打ち切り漫画を語ったり、うだうだと漫画を買いに行ったり、売れている漫画こそが面白い漫画!主義の後輩・四月とお喋りしたりして過ごす日常もの。日常ものというには少々それ言って大丈夫なの問題が発生しておりますが……

それ言って大丈夫!?は本当に多いんだけど、一番笑っちゃったのは月見が進路指導で漫画家と書いたときの担任の先生の反応。まるで漫画に興味がない先生が漫画家になりたい月見のために印税だのなんだの調べてきた結果「ドブラックだからやめろ!!!!!」となるさまに笑ってしまった。
漫画の読み方すら知らずマンガ業界にまるで興味のない先生が調べてきて喋るだけなのに、マンガ業界にまるで興味がないからこそ出てくる「こんな業界潰したほうが良いんじゃないのか」な発言と描き方が面白すぎるけどそれ書いて本当に大丈夫なんですかぁ!?
マンガ業界、やってることは実質マルチじゃないか! に爆笑しちゃった。た、確かに……? しかも主人公・月見がそれに反論できないし言いくるめられちゃっているせいでやばいのでは……?に拍車がかかる。

でもこれ作者がバランス感覚良いので、小鳥ちゃんにうまいこと別目線からフォローいれさせてるのが上手い。あ、そ、そうですよね……と着地出来た。まじでバランス感覚がうまい。

とはいえそれ言って良いんですか!?が発生しているのは漫画方面だけじゃなくてラノベもだから安心だ! 自分のコンテンツ以外だけをけなしたりなんかしないぜ! ラノベはもっとボロクソな言われようだ! 辛い。笑う。
ラノベ方面も刺しつつこういう軽い会話劇にするの上手いな。読んでて冷や汗出ながらもギリギリ笑いに収められるぐらいの面白さになっている。
短編・読み切りの連載化は難しい話に笑ったけれど、それもうまんまこの本ですもんね。そりゃあめっちゃ実感こもっているよな……。

ところで望公太先生の「それ言って大丈夫なのか!?」のトップといえばラノベのプロ!ですが……あれは続きどうなりましたでしょうか……やっぱりあそこで終わりなんでしょうか……男は格好良く女は可愛かったです!

漫画アプリで読んではいるけど単行本を買ってない人、いるよね

う、うーん……! これも難しい問題!!
面白い! 好き! 1話から読んでる! けど無料漫画アプリで読んでるから漫画自体には1円も払っていないけれどもファン顔出来る、昔だったら出来ないけれども今だから出来るファン面だよな……。これ、どこまでファンとして名乗っていいのかと思うよな……。所有していない、1円もその作品に対してお金を払っていないのに、今は公式で読める手段があるから難しい。

昔だったら「ネカフェで読みました!」「図書館で読みました!」「友達から借りました!」みたいなのはその作品に対して1円も払ってないのもあってんなもん公言すなとなりましたが、今は公式アプリで読めるからな……。でも1円も作品に対しては落としていない……。
電書メインの場合はセールを待って購入!とかもあるから難しいよねー……。

私はよくある作者の「発売から1週間以内に購入してください!そうじゃないと打ち切られます!」みたいなアレがすげー嫌いで購入タイミングぐらい自分で選ばせてくれと思うが、けれども実際それで打ち切られると「ああ……俺があのとき買っていれば……」という感情はやっぱり発生しちゃうだろうからなぁ。難しいなぁ……。
作中でも言及されているけれども、アプリで読んでる場合PVには貢献している、けれども単行本の売上には貢献していないしなんなら1円もだしていない場合、どういう感情と立ち位置でいればいいんだろうなあ……。

それはそうとあれだけ強く「自分はファンです!!!」つってて本屋でもどや顔してる月見先輩が購入してないのは普通にびっくりしたよ。買ってねえのに俺が見つけた顔してんのかい。そこは初版本揃えておこうぜ。

小鳥ちゃんの愛しかたはかなりエンタメ

打ち切り漫画自体を愛しているというよりも、打ち切り漫画の周辺事情を含めてエンタメとして愛しているよな。サバイバル番組好きそう。

掲載順が後ろの方になると無駄なあがきやテコ入れを始める、それによって変化する漫画や作者の焦燥、周辺のネットの情報を読むのが好きという小鳥ちゃん。掲載順レースが前提の、メタ含めたエンタメ的な楽しみ方をしている。それはインターネットの悪い楽しみ方なのよ。絶対サバイバル番組好きでしょ。サバ番見始めたらドハマりしそう。

小鳥ちゃんが打ち切りされた漫画が作者が人気になったあとからリメイクされたり続編が出たり同人誌で出るのは違うと話しているが、それの何割かに掲載順レースと戦う部分のエンタメがないからなのもありそう。掲載順レースと戦う、打ち切りと戦っている漫画が好きという小鳥ちゃん、それは掲載順レースを物語の面白さに完全に組み込んでいる立場の発想なのよ。
果たしてそれは物語自体を純粋に楽しんでいるのか?と言われるとまたちょっと違う気もするんだよなぁ……でも周辺事情含めた作品を愛しているとも言える……。こいつ面倒くせえなぁ!

そんな面倒くせえ小鳥ちゃんがそれでも打ち切り漫画を愛しているというのも伝わってきて、日常ダラダラ系と思わせて最後の最後にはしっかり落ちもあり、面白かった! 1冊にまとまってて読みやすいけれどもこの先も見たいっちゃ見たいなあ。
しかし、望公太先生あるあるの仲の良い男友達がいなくて飢えたなんでないんですか!? 嘘でしょ!?

小鳥遊ちゃんは打ち切り漫画を愛しすぎている (MF文庫J)望 公太

小鳥遊ちゃんは打ち切り漫画を愛しすぎている (MF文庫J)望 公太

AmazonBookWalker

スポンサーリンク