あらすじ
「先輩はいつも先輩ですね」
サンタとの出会いをきっかけに再び短歌の道を歩むと決めたスクイ。
復帰のため歌集の発売とともにサイン会に臨むことにした彼女だったが、
会場で突然現れた元クラスメイトの白鳥求歌が立ちふさがる。
「久しぶりだね、スクイ」
彼女はなぜかスクイに対し敵意を持っていた。さらにはサンタも巻き込んでスクイに決闘を申し込み師弟対決を行うことに。
「わかってます。先輩にもモトカにも絶対負けないと言っているのです」
過去のスクイを知るモトカの本音とスクイとサンタの恋の行方は――。
これは恋する少女に再び想いを伝える恋物語。
面白かったなー! 今回は都々逸が出てきたが、都々逸が短歌と同じ文字数なのも知らなかったのに、読んでいるうちに「これは都々逸かな?」「これは短歌かな?」となんとなくわかるのが面白い。日本語って面白いね。
スクイとサンタの関係性はさほど変わらなかったのでそこもっと動いてほしかったかも。
新たに現れる都々逸少女
今回はスクイにライバル心を抱く都々逸少女・モトイが現れ、サンタを巻き込んでサンタ+モトイvsスクイの戦いをするぞ!ということから始まる巻。
突然勝負に巻き込んできたモトイに困惑しつつスクイに受験勉強に集中してもらい(そして自分と同じ高校に入ってもらうために)頑張るサンタ。このサンタのスクイと一緒にいたいし同じ高校に通いたいという心情が、恋が始まったばかりの少年としてもうかわいい。最高に可愛い。詩織さんがからかってしまうのもわかる(詩織さんの手の出し方は普通に嫌いですが)。
これはちょっと関係ないんだけど、好きな人と同じ学校に行くために自分が頑張るという行動だと自分が主体なので自分がどうにかすればいいんだけど、好きな人と同じ学校に行きたいので相手に頑張ってもらうという行動って相手が主体だから地味に難しいよなと考えてしまった。
1巻では短歌には興味ないもののスクイとのやり取りでどんどん吸収していったサンタが、今巻でも都々逸について即座に吸収していき、即興都々逸チャレンジするレベルになっていくのが、お前本当になんでも吸収速いなあ……と。
1巻でも吸収早かったんですが、2巻は更に早い。これはもともとすごく素直で色眼鏡なしで何にでも興味を持つという性格が大きいけれど、スクイとの短歌チャレンジによって物事を新規吸収する能力が上がっているのもあるんだろうな。モトイとの河原での都々逸チャレンジはふたりとも楽しそうで面白かった。
また、サンタが野球部員たちといい感じの関係性を築けていたのが良かったです。
1巻では野球に対する挫折の感情が強かったサンタが、2巻では再度野球部に顔を出して穏やか&爽やか&楽しげに男子ノリで会話してて良かった。このまんま野球部に戻りつつ短歌もやるっていうルートもありそう。
恋愛周り
1巻でいい感じの雰囲気出ていた月島先輩がほぼ出てこないし配信ネタもあんまり関われなくて残念! とはいえ、今回の話においてはサンタがほぼ都々逸をやっている以上、短歌配信者の先輩は出てこられなくても仕方ないか。
スクイとの関係性はそれほど近づいたとは言えないけれども、それでもサンタとしっかりと関係性を育んでいる感じがすごく良かった! この二人の場合、このぐらいのゆっくりさで良いのかもしれない。穏やかに、静かに、それでも着実に進んでるのが良いんですよ。
ラストシーンもこの二人だとそうだよなー! って可愛らしさがすごく良かった!!
ほんの少し、でも確実に、相手が自分を好きだという確信を持った状態で手を繋いで前へ進もうとしている二人はとても可愛らしいし、サンタがこういうときにちゃんとスクイの感情をすくい取ってくれるのが良いんだよね……。学校に突然突撃してくるような無鉄砲なところもあるけれども、スクイの考えていることも慮ってくれる。こういう人だからスクイがサンタを好きなんだなとも思うし。
以下は単純に詩織さんが嫌いという話です。
詩織さんのちょっと手を出してくる年上のお姉さんムーブ、普通にちょっと気持ち悪い。
詩織さんの立場って、自分が働いているところのお嬢さんと両思いでこれから別れるという気配のかけらもない男に、気を持たせるような発言をしつつからかって手を出しているっていう状況じゃないですか。普通にきっもちわりぃな……と。特に今回ハンドクリーム塗らせているところ。
いや……キモいよこの女……。本気で奪おうとしていてもやり方がキモいし、本気じゃなくてからかっているだけだったら冗談抜きでキモい。
本人としては年下の男の子をからかったりする余裕のあるお姉さんムーブなんだろうけれども、実際は年下の男子に手を出して両思いの二人を破局させようとしている性格の悪い邪魔な女ムーブです。読んでて普通に性格悪いよ。
言葉のzipファイル
都々逸と短歌。使っている言葉の数は同じだけれども、サンタが言うとおり、短歌のほうが淑やかさがあり、都々逸のほうが俗っぽさがあって面白いな。クラスの黒髪清楚女子と金髪ギャルだ(???)。
これは1巻のときも考えたのだけれども、短歌や都々逸って決まった文字数の言葉のなかに思いや感情、情景を詰め込むものなので、短歌・都々逸制作者の技能と同時にそれを読み取る側の技能もすごい必要なんだよね。
軽量化してzip化されたものを、読む側がうまく解凍する能力が必要。この解凍がうまく出来ないと、情景や雰囲気をうまくすくい取ることが出来ない。
わたしがこの解凍下手くそでうまく再生できないマンなんですよね。だから1巻のスクイのセリフの「10万字の思いを込められるならば三十一文字の告白で良い」はすごいと思う。わたしは三十一文字では理解が出来ない。
zipよりgifのほうが近いかな。決まった字数/色数で作り上げられる、最低限まで情報を削ぎ落としたもの。ドット絵だったゲームがリメイクで色数も増えて立ち絵が美麗グラになったときに自分が想像していたものと違ったというか。でもリメイクで出してきた美麗グラのほうが当時の攻略本で描かれていたイラストに近い。gifがいくら上手に作ってあってもわたしはそれを正しく想像出来ないんだろうな、というのを改めて感じた気がする。