
あらすじ
「おい、こんなところにいたら風邪をひくぞ」
乙女ゲーム世界に転生し、王立魔法学院の下級貴族クラスに通うアッシュ・レーベン。ある日、雨に打たれながら路地裏で蹲っているゲームの正ヒロインのフィーネ・シュタウトに出会う。
彼女から、自分が学院の四騎士と友人のエリーゼに「悪女」と罵られ、さらに退学を迫られていることを聞いたアッシュは彼らに決闘を挑み、フィーネをどん底から救い出す。すると彼女から「アッシュさんの屋敷に管理人として一緒に住まわせてほしい」とお願いされて共同生活を送ることになるのだが……。
バッドエンド後のヒロインを救済する学園ラブコメディ。
乙女ゲーの世界にモブ転生した上で、立場乗っ取られてバッドエンド追放されたヒロインを救済しようというのが面白い。
ただ、最初『乙女ゲーにしては珍しいバッドエンド』みたいな説明が入って笑っちゃったし、そこから時々こんなひどい鬱エンドなんです! みたいなノリで説明されるエンドが乙女ゲーにしては全然鬱じゃないエンドすぎて笑っちゃった。それさえなければすごく面白かったんだけどな。
落ちてる女の子を拾ったら乙女ゲーヒロインだった
乙女ゲーム世界にモブ転生した主人公が落ちている女の子を拾ったらバッドエンドルートに入っているヒロインだった、というタイトル通りから始まって、いじめられている彼女に良くしているうちに次第に気にかけられたり愛されたりして徐々に距離を詰めていくお話。
イベント自体は王道なものの、主人公・アッシュがヒロイン・フィーネを気にかけている様が可愛いし、フィーネが「こんな散らかった家、人間が住むものじゃありません!」と片付けたりとベタな要素をこなしつつも距離を詰めていくところが可愛かった。
アッシュがフィーネに対して下心ほぼなしで、あまり異性としての認識が強くないあたりが読んでて結構面白かった。ヒロインである、女子であるという認識はあるし、ドレスを着たら可愛いという認識もあるものの、あんまり恋愛とか性欲とかそういうの滲ませないし、話自体にもそういう部分があんまりないんだよな。なんとなくそこらへんは少女小説に近いものを感じた。
転生して本来のヒロインであるフィーネの立場を乗っ取り逆ハールートを築いているエリーゼのせいで、他の本来攻略対象だったキャラクターたちからは悪役だと思われ虐げられたフィーネ。彼女の名誉を挽回しようと攻略対象たちに決闘を挑み、二人で特訓してレベル上げをして強くなり倒していくのは爽快感すらあった。
言うてアッシュはもともと謎RPGシステムのこのゲームですでにレベルかなり上げていたしレアアイテムも1ダースぐらいずつ手に入れていたので頑張ったのは主にフィーネだけなんだけど、それでも彼女の特訓に付き合ったり、ピンチのときは助けたりしていて格好良かった。
誰かのために怒ったり頑張ったり出来るキャラクターはそれだけで好感度が上がる。
アッシュはフィーネのことを守る対象であり可愛い女の子として認識しているが、フィーネは自分を助けてくれたアッシュを頼れて好きな人と認識しているこの焦れったさが良い。
やっぱりヒロインにドレスをプレゼントするイベントはベタだけれども最高よ。これ少女小説だとよくあるイベントではあるものの、今回はプレゼントする側の視点で読めるのが面白かったな。そうだよね、ドレスのお値段どのぐらいになるかわからないもんね。財布の心配してお金多めにおろしてから行くよね……。そこちょっと笑っちゃった。
乗っ取り転生者エリーゼが拷問の末に色々吐かされてるっぽいけど、どこまで拷問担当さんは理解したんだろうな。前世とかゲームとかわかって理解して納得してくれたんだろうか。してくれたとしたらそれはそれでこの先に発生する情報を吐くだけ吐かされて色々と利用されそうで気になる。
ざまぁ対象やらかし馬鹿王子たちがこれからどうなるのか、エリーゼがここから覚醒するのか(しなさそう)も気になる。
この程度乙女ゲーとしては全然……なんだよなあ……
しかしこの作品には他の乙女ゲームとは決定的に異なる要素が一つだけ存在する。
それがバッドエンドルート。どの攻略対象とも友好度が一定値に達せず、さらに友人キャラとの友好度も低い状態で二年生に鍼灸することで突入するルートだ。
ここから先の説明読んでみて、バッドエンドルート自体が珍しいのかそれともひたすらヒロインがいじめ倒されるルートが存在するのが珍しいのかうまく読み取れなかったんだけど、文脈見た感じ前者?
前者のバッドエンドルートが珍しいんだとしたらそれは主人公があまり乙女ゲームをやってないからそう認識しちゃったんだろうし、ヒロインがいじめ倒されるルートがあまりないかと言われれば、長々とそのルートを作る会社は(プレイされず飛ばされるだろうというまともな思考が発生すると思われるので)あまりいないだろうが、それに類するいじめられる内容が描かれるのや、場合によっては死ぬの、人によってはバッドじゃないかもしれないヤンデレ監禁以下略ルートぐらいだったら普通にあるよなあ……。
なんて考えてたら、
『キズヨル』のバッドエンドルートが鬱ゲーと言われている理由の一つが、バッドエンドルートから即エンドロールに突入という一般的な流れではなく、バッドエンドルートに突入してからも共通ルートの終了まで、すべてのキャラクターから嫌われた状態でゲームをプレイしてエンドロールを迎えなくてはならないということだ。
(中略)
その状態でデータ削除をしたら、鍛えたステータスや格闘したアイテムやクリアデータもまとめてロスト。だから否が応でもプレイを続行するしかない。
クソゲーオブザイヤーにノミネートしそうなクソシステムなだけだった。それ鬱ゲーじゃなくてクソゲーって言われるほうだよ。ゲーム制作会社がヒロインに苦痛を与えるのと同じようにプレイヤーにも苦痛を与えよう🎶そしたらきっと感情移入してくれるはず🎶って調子乗ってオナニーみたいなシステム入れて「は?クソじゃん」ってボロクソなレビュー書かれて次回作も特にでないやつだよ、それ。プレイヤーが感じているのは鬱じゃなくてストレスだよ。
インディーズで出ている尖ったゲームやフリゲなのに話題になったゲームとしてなら理解できるんだけど、そうじゃないなら制作会社が採算度外視萌え駄目鬱萌えしたとかしか思えん。
でも、よくよく考えてみればなろうの世界で売れている乙女ゲーってだいたいどっか変だよな。悪役令嬢が大人気になったり、処刑シーンでわざわざスチルを作られたり、悪役令嬢がメインのファンディスクが出たり、悪役令嬢が実はみんなの尻拭いをし続けているだけのただの良い令嬢でプレイヤーにだけその事実が知らされたりするようなゲームが大人気なんだもんな。普通に考えて萌え駄目認定されそうなゲームばっか人気だもんな。
そもそも悪役令嬢がいる乙女ゲームが人気ってなんなんだよ。攻略対象を婚約者から寝取るゲームが人気の時点で割と相当イカれてるよ。
最近はそういう悪役令嬢が出張っているやばいゲームに対しては突っ込まなくなっていたものの、それって単純になろう乙女ゲー悪役令嬢に慣れすぎて麻痺していただけで、こういう鬱(笑)ゲーも慣れてないから突っ込んじゃっただけであって、慣れてきたら気にならなくなるのかもしれない。
なので物珍しくて気になっちゃったんだろう。こういうのが増えてきたらきっとこの世界ではこれが乙女ゲーのスタンダードから外れて鬱ゲー扱いされるんだなと認識出来るようになるのかもしれない。
小説における整合性と物語における盛り上がりを取るために元のゲームが相当ヤバいやつになってる話ってままあるもんな。豚公爵に転生したから、今度は君に好きと言いたいも絶対キャラのヘイト管理失敗してるし萌え駄目認定されそうなやつだったし、即座に思いついたのがこれなだけでゲームや小説世界転生って主人公が乗っ取るキャラクターがだいたい本来の主人公以上にハイスペチートだし。そういうものだと言われたらそういうものすぎる。
