ミュージカル フランケンシュタイン 1/21マチソワ
1/21マチソワでフランケンシュタイン見てきました。
組み合わせは柿澤・加藤、中川・小西。
見てきた人
- 韓国ミュージカルはいくつか見てる(スリルミー、シャーロックホームズ2、ブラックメリーポピンズ)
- 小西遼生が好き、なおかつ加藤和樹もそこそこ好きなのでこの二人のWキャストの見比べがしたかった
- 原作フランケンシュタインは読んだことはないけど博士がフランケンシュタインって名前で怪物の名前でないのは知ってる。
超ざっくりした感想
圧倒的な歌
ほぼ全ての歌に対して拍手してしまうぐらいの勢いがある。特にビクター役中川・柿澤両名の歌が圧倒的。エレン・エヴァ役の濱田めぐみさんは更にやばい。というか濱田めぐみさんの歌は方向性が違うものすぎてもうどう行ったら良いのか。
拍手用なのか、歌ほぼ全曲歌った直後にすぐ台詞が始まるのではなく微妙にためがあるので拍手しやすくてありがたいです。すぐに台詞が始まっちゃうのの場合は拍手しづらいよね。
生オケにもかかわらず、音楽を従えて歌われる歌は素晴らしかった。
また、この生オケもすごい。最初に座ったのが2階席でオケの方たちがよく見える場所だったのだけれど、動きが本当にすごかった。見ていて面白かった。
同じメロディラインの曲を歌詞を変えて歌う人を変えて使用する部分を変えて何度も何度も使ってくるので、デジャヴが何度も繰り返し、最終的にメロディラインだけは覚えられるが歌詞は覚えられない状況になる。
1人2役
同じ人の別のキャラクターが見られるのが面白い。前半はこれだけ善人な人が2部冒頭ではこんな悪女に! っていうのすごい楽しい。善と悪の2種類の役を一つの舞台で見られるのってすごく面白いし楽しい。淑女-圧倒的強さを見せる闘技場の女主人、研究者-尻に敷かれてる旦那、執事-空飛びそうなマスコットキャラクター的な何か、淑女-頭の悪い下女、など。
女性陣は比較的まだわかったんですけど、男性陣はわからないというかビクターとジャックはわからないよあんなの!? ルンゲはなんかもう論外なので……。空飛びそうなふわふわしたマスコットなので……。
とにかく泣ける
人間1人を死なせ生かした愛、どうしても復讐したくなるほどの孤独、最後の願いや望みなど、もう見ていて泣けた。1幕終盤と2幕ラストは号泣した。ひっさしぶりにメイク全部落ちました! 真田十勇士以来かな!
物語について
韓国ミュージカル
発表されたときに韓国ミュージカルなのかー、スリルミーやシャーロックやブラメリと同じ方向性かー、ブラックだな……と思ってたら実際中身ブラックでした。韓国ミュージカルってなんで子供が死んで(日本版は死なないけど)男同士の友情が濃くて歌が何故かひとつぐらい妙に明るいのが入るんだ。
韓国モノは音楽特徴的だよね。そう言えばソルシエ聞いた時も韓国ミュージカルっぽいって思った。
シャーロック2では途中に入った「ゴミなのさ!」の明るい歌が印象的だったけど、こちらは「飲み干そう!」のが印象的。あれちょこっとだけメロディラインに酒が飲める飲めるぞみたいな感じの部分が入っているからかな。
それと、歌の中で物語を進めてしまうあたりも特徴的だなと思った。シャーロック2を見たときにすごく苦労したのだけれども、歌詞の中で推理を語ったり、自分の感情を語り合いだからこれはこうなるという部分まで歌で済ませてしまう。だから歌詞を聞き漏らすと大事な台詞を聞き落とした並に話についていけなくなる。これ頭の回転が遅い人間には辛い!!!
パンフに歌詞は一部書かれているものの全曲ではない。リトルビクターの生命有機の結合の歌が歌詞ちゃんと知りたかったので悲しい。
演出
韓国版の映像がYouTubeで結構見れるっぽいのでいくつか見てみました。日本版とてもマイルドですね……。見つけて再生したやつが初っ端から生首ひっつかんで生き返らせるよと歌ってた……。こええよ! これ耐性ない人が見たら一発アウトでは!?
それ以外も日本版のほうがかなりマイルドめというか韓国版がワイルドめというか。
物語
物語において、ちょいちょいここ端折っちゃうの? という部分があったのが気になった。
たとえば作中でアンリはビクターの、そして彼の夢のためならば死んでもいいという。しかしどこでそこまで傾倒したんだ? と気になった。こちらとしては、冒頭の声が重なって歌詞を聞き落とす可能性のある歌でいきなり仲良くなられて、気づいたら名前呼びになられていたわけで。その部分もうちょっと詳しくやってほしかったなと思った。
しかし現状すでに3時間の舞台なわけで、これ以上どこをどうしろというのか。無理だった。仲良くなったあたりは酒場ソングでアンリが他に人がいないと言っているし、獄中ソングで君に恋したと言っているのでこれで消化してしまうべきかもしれない。
けどビクターとジュリアの、ジュリア初恋実ったおめでとうしあわせ★結婚生活を楽しみにしていた人間も! いるので! 少しでも! 欲しかった!!
1幕の酒場以降からの流れは号泣。アンリの告白からのハグ、断頭台へ堂々と歩いていく様子は泣くしか無い。あれだけ明るい酒場ソングで酒を飲み干せ! と明るくやったところからのあの急降下は本当に辛いとしか言いようがない。
断頭台へとのぼる部分、小西アンリは笑顔→一瞬だけの泣き顔→笑顔の変化、加藤アンリは声がタメの後一瞬だけ泣き声になるのがとても好きだしつらい。ここを含めてだけれども、アンリもビクターもWキャストということを利用して微妙に差異があるのが良い。見比べて楽しい。
あの歌によって(少なくとも中川ビクターに対しては)アンリは未来と夢を押し付け、自分の首を使うことを確定させてしまうのだと思った。(柿澤ビクターは断頭台にのぼることをアンリが決めた時点で首使うの確信してそうな感じがある)
アンリという男のビクターへの愛と夢への展望が、そしてビクターのアンリへの友情と愛が、怪物という生命を作り出してしまったんだよな。なので怪物が恨み言をいうべき相手は創造主=ビクターだけではなく、製造元=ビクター&アンリのほうが良いと思う。少なくとも中川ビクターは、アンリがあの歌を歌わなければお前を作り出さなかった。
2幕ラストでの、怪物にとっての夢の地である北極での対峙。このシーンは二人ともほぼ全く台詞なし。怪物の「これでお前も独りになった」からの流れ以外は二人の戦いで物語が進んでいくにもかかわらず、一切目が離せないのがすごい。ぞっとするほど演技で魅せてる。
怪物は自分を殺してほしかったんだろうな。小西アンリも和樹アンリも、仕草は違えど自分を殺せと示すし、ビクターがためらえば殺すマネすらして殺されようとする。自分も殺されることで、怪物は「ビクターの周囲にいる人間を全て死なす」ことができる。それは、最後の台詞で「わかるか、ビクター」と彼の名前を言う=アンリの記憶を取り戻している怪物(怪物としてのシーンはそれまでずっと創造主呼び)だからこそ、ビクターの大事だった人間=アンリをも殺すことになるのかなって思った。
彼を独りにすると同時に、自分はビクターの友であるアンリとして死ぬ。ずっと孤独だった怪物が、独りじゃなく死にたかったんじゃないだろうか。
怪物は、ビクターのことを恨んでいると言いながら、ずっと与えられたコートを羽織っていた。これは怪物がビクターから与えられた数少ないものだからなんじゃないのかな。アンリとして記憶が蘇ってしまった時にはもう捨てられないだろうし。
どうでもいいですけどジュリア殺害あたりの景観っぽい格好した怪物めっちゃ良いですね。さり気なく混ざるぐらいの知能を得ているっていうのと同時にビジュアルがとても良い。
そしてこのラストからのカテコさー!!
みんなが元気にお辞儀してて! ルンゲ生きてて! 久しぶりルンゲ! 怪物が死なせていったビクターの愛した人たち、ビクターを愛した人たちが次々と現れて生きている姿でお辞儀して! 最後は怪物でありアンリである男と! そしてビクターが出てくる! 泣くしかない!!
わたしが見た回では、
マチネ(柿澤・加藤ペア):手をつなぐ、ハグ
ソワレ(中川・小西ペア):怪物に投げキスするビクター、その後のカテコでハグ、投げキスして現れるビクターと真似して投げキスしまくる怪物、さっさとビクター置いて下がろうとするアンリの肩を叩いて笑うビクター
ほんっと泣くしか無い。
あとカテコの時のオケが最高です。曲に合わせて拍手するの楽しいけど途中でリズムが変わるから叩きづらいww
執着
ビクターの、アンリを生き返らせようとするまでの執着は、やっぱり最後のうたが作り出してしまったんじゃないのかなと。あれさえなければ。復活はアンリの願いでもあるからという理由での蘇らせな気がする。ビクターの執着は、単体ではあんまりそこまでアンリへは向いていない気がする。
ビクターがアンリを手に入れたかったのは研究に必要な共同研究者として利があるからであって、友人と言っていても(酒場でのシーンを見る限り)「もう開放してやる」って言い、ついてきた彼に対して酔っているとは言えなんでついてきた、理想主義者の成れの果てを見たいのかと笑うぐらいには友情があるとは信じていない(だからこその君しかいないとアンリが言うシーンに繋がるんだけど)。だからビクターはアンリ単体にそこまで執着しているわけじゃないんだよな。
でも更に言えばビクターって他人への執着は薄めで、まずジュリアが自分の味方ってあんまりわかっていなさそうで。彼女に対してすごい冷淡。結婚後はジュリアのことを大切に思っている気がするのでだからビクターとジュリアのしあわせ★結婚生活が見たいって言ってるだろ! そこまでビクターを変えた結婚生活が! と言うのは置いといて。
あれだけビクターに付き従ってきたルンゲはなんで生き返らせようとしなかったんだろうか。目の前で怪物に殺されたから自分では力不足だと思ったのかな。けれどエレンは生き返らせようとする。この時点では出来うるだけの実力があると思えたんだろうか。
対して、アンリからビクターへの執着。
これに関してはギロチン台に向かう時の歌で全部出されてるんで何も考えなくていいんだけど、彼にとってマジでビクターしかいなかったからこそあれだけビクターのために動けたんだろうなと思った。
また、メロディラインが一部変化して、昔の何もできなかった自分に決別みたいなことを言っている(記憶が薄いので微妙に違うかも)があるので、その分過去に死なせてしまった人たちへの贖罪の意味もあるのかなと思った。
ていうかあの断頭台ソング、本当にメロディラインがどこまでも明るくて歌詞も夢を見てて高らかで、高らかに絶望に向かって死んでいくから恐ろしい歌だ。今も頭のなかで延々と流れてる。
一人二役
前述もしたけど。
一人二役、アンリ-怪物は1.5役というかアンリから怪物への変化なのでまだわかるんだけど、それ以外が本当にやばい。何がやばいって同一人物に全く見えない。まじで。やばい。
カトリーヌとジュリア、エヴァとエレンはわかった。わかったというか女性陣は2人しかいない、また色合いが同じ衣装を着るからかろうじてわかったというかんじ。しかしエヴァは曲調と雰囲気の違いがやばすぎ。お淑やかな淑女からの脚思い切り出してドS気味なお姉さまっていう変化最高すぎでは? まじで最高では?
めちゃめちゃやばいの、ジャックとビクター。いや全然わかんないよ!?
よく見たらどちらも緑色(ジャックも2幕ビクターも上着は緑色)なのだけど全然わかんない。2部部分でビクターの人どれかな~、全然わかんないな~って見てたけどあれとは思わないじゃん? あとから確認して変な声が出た。
ルンゲとイゴールはなんかもう別人とかいうレベルじゃなくてなんか別の生き物なので……。イゴールあれ空飛べない?絶対空飛べそうなビジュアルだなって思ってたんだけど飛べない?本当に?
1人2役部分は闘技場の夫婦がかなり好き。
エヴァはかっこいいし、ジャックもヘタレで尻に敷かれてるけど動ける。相手の闘技場トップを、トドメをさすところだけとはいえやっていたりと地味に強いんだよな。やっていることはアレだけれど理念と意志と目的を持っているので好きです夫婦。怪物やカトリーヌにとってはとにかく酷い人なのはわかってるけどね。
カトリーヌと怪物を引き離す時の曲がもしかしてメロディラインが飲み干そうの曲と同じ? だった?
CMやPVなどを見る限り2部というか闇というか陰というか部分、もっと長いかと思ったけれど、予想より短く終わっていて驚いた。わたしもどちらかというとアンリやビクターたちの物語が好きだったからまあ良いかなと思うけれども。
善と悪の2種類の演じ分けだとか、事前CMのプッシュっぷりだとかでもっと長々とやるのかと思っていたら、短めで結構驚きました。
キャラクター
ビクター・フランケンシュタイン(柿澤)
ヤバイ人じゃない? 個人的にヤバさがMAXなんですけど。ゲスいよ。最早光属性とか闇属性とかじゃなくてやばいとかゲスいとかそういう方向だった。
目つきとか喋り方からして、柿澤ビクターは最初アンリを自分のところに引き込んだときに、こいつ使えそうだなっていうのがメインに来てそうだなと思った。
柿澤ビクターはアンリの首を利用することを、アンリが捕らえられた時点で明確に考えている。出来上がった怪物に対して「歩けるか?寒いか?」と話しかける時、おーよちよちよちとでもいいそうな口調をしておきながら「ルンゲ、コートをとってくれ」で声がはっきりと切り替わり、ああこの人はアンリではなく自己の作り出したもの、制作品として見てるんだなと思った。お前アンリに今までそんな対応してないじゃん!
完全に彼は怪物を怪物として見ていたので、最後の最後、北極でビクターと呼ばれた部分は彼にとってバッドエンドじゃないのかな。彼は怪物として見ていて怪物を殺して自分の大事な人達の仇討ちをするためにあそこまで行ったので、そう呼ばれた時点でお前は友達を殺したのだと断罪されたことになる。
ビクター・フランケンシュタイン(中川)
光か闇かで言えば光だった。もしくは儚い。殺せば死ぬ(柿澤ビクターころしても死ななそう……)
台詞すらも歌っているかのようで声の伸びがすっごい。歌の安定度がすごい高い。あと良い意味で変な癖がない。
アンリのことをちゃんと友達と思ってたし、アンリの首を使うつもりはなかったけど、アンリが君の夢のためなら死ねると言ったから、友人の最後の願いを叶えるために首を利用したんじゃないかと思った。
怪物に話しかけるときもどこか声がアンリに話しかけるものと似ていて、この人はアンリとして怪物を見ているんだなって思った。もし怪物が攻撃するのや逃げるの、その他諸々が少しでも遅ければ、二人は分かり合えたんじゃないのかな。
北極までアンリに会いに行ったんだろうし、だからこそあそこでビクターって呼ばれたのは彼にとってやっと友が自分を呼んでくれたという意味でハッピーエンドじゃなかったのかなと思った。
アンリ・デュプレ(小西遼生)
光か闇で言えば闇なんだけど儚いって言ったほうが近いかも。
基本的にアンリであるシーンはだいたいにおいて和樹アンリよりも儚げで殺せば死にそうなのだけれど、唯一酒場でのシーンだけは和樹アンリより陽気だった気がした。楽しげだし明るいしはっちゃけてる。ていうかこいつ、酒場での「君はいいやつだ!」のあれ、ポケットを一切確認せずにルンゲに押し付けてたんだけどお前金一切持ってなかったな……。実は結構調子が良いやつなのかもしれない。
北極でのビクターとの戦闘は流石というか、アクション綺麗だった。長物の扱いの良さと脚の上がりの良さ。それからコートの捌き方のうまさな……牙狼とか牙狼とか思いだす……。殺されるときは自分の左胸を示して、さあ此処が的だとやってくるあたり、確実に殺してほしかったんじゃないのかな。絶対に一人じゃ死にたくなかった。孤独感の強そうな怪物という気がした。
カトリーヌと仲良くなるシーン、じゃれ合い過ぎでは?w こちょがしすぎてくすぐりすぎて、客席から笑いが起きてて可愛かった。あれ素でしょ。すっっごい可愛かった。
アンリ・デュプレ(加藤和樹)
光属性だった……。すげえ光だった。このアンリ、断頭台に向かう時すらビクターが自分を復活させてくれるよ! って信じ切っていてすごい。大丈夫だろ! ってかろやかにいいそうな明るさだった。でも断頭台に向かう時ためのあとに声が泣き声になるのがすごい……もうすごい光だった……。
酒場のシーンでビクターの口元を拭ったりしてやってるあたりが面倒見が良さそう。「君はいいやつだな!」のあとの支払いあたりも、ちゃんと自分のポケットを確認して手持ちの金がないのを確認した上でルンゲに投げる。結局投げるけどちゃんと自分の懐探すだけのまともさがあった。
ぶっちゃけこのアンリと中川ビクターだったら、もし中川ビクターがちょっと返答が早ければ、ちょっと対処を間違えなければ、怪物を普通に育てて少しずつまともに、たとえ知性は人より低くとも、体は他人のものでも、首から上だけアンリのものであろうとも、怪物は健やかに生きていけたのではないかと思う。なんかすごい純粋っぽさがあった。
声が怪物とアンリでかなり変えていたので、これビクターは聞いた瞬間こんなのアンリの声じゃない! って思ってそうだなと。小西アンリは(わたしが聞き慣れているのもあるけど)根底部分がいつもの声だったので。和樹アンリも一応わかるんだけど一瞬驚いた。