
あらすじ
Q:この高校を志望した動機は?
A:ここに嫁が入学するからです。
アラサーの俺は、目が醒めたら15年前にタイムリープしていた。
目の前には、俺の知らない制服を着た嫁・由姫がいる。
俺たちは本来社会人になってから出会うので、まだ他人同士。
――だけど知っている。
この頃彼女は人間不信で、友達も作らず孤立していたことを。
そんな青春時代を、大人になってとても後悔することを。
今からそれを、上書きしよう。
「なんで私の秘密を知ってるのよ!」
「そりゃ夫婦だからな(将来)」
これは俺が、嫁の灰色の青春を、俺色に染め直す物語。
タイトルから、いわゆる「俺つえー」系で、ヒロインの望むことを先回りして全部叶えちゃう感じなのかな?って最初は想像したんだけど、読んでみたら全然違ったわ。良い意味で裏切られた、すごく好きなタイプの作品だった!
主人公が惚れてもらうために全力を出すのが良い
物語は、30歳の主人公が15年前にタイムリープして、将来結婚する相手であるヒロインと同じ高校に通うところから始まる。
結婚後の彼女に「もし高校の頃にあなたに会えたら良かっただろうな。私に何度も何度も告白してね」と言われた記憶があるから、過去に戻ってもめげずにアタックし続ける主人公。
でも、単に未来知識でヒロインを攻略するんじゃなくて、「ヒロインは猫が好きだから猫カフェに連れて行こう」とか、「兄に負い目を感じているから勝たせてあげよう」とか、ヒロインが楽しい学園生活を送れるように、徹底的にサポート役に回って頑張るんだよね。ここが良い!
結構気合い入れて「ヒロインのことが好きなので生徒会に入りました!」とはっきりと公言するタイプなところといい、こういう主人公が頑張るタイプの話が好きだから、読んで良かったな。
主人公のそういう真っ直ぐな行動で、ヒロインが徐々に内心好きになってきてるんだなってのが伝わってくるのもすごく良い! そう、こういうのがいいんだよ。
未来を知っているからこその安心感と、ちょっと気になる点
この作品の良いところは、未来で主人公とヒロインが結ばれてイチャラブしている描写が時々挟まれること。だから、現在の高校生編でヒロインがどんなにツンケンしていても、「将来はデレるんだよな」と分かってるから、読者としては安心して読めるんだよね。これ大事。
あと、年の差がある男女(特に転生ものとか)がイチャイチャしてるのを見ると、「いや、お前の実年齢考えろよ……」って思っちゃうことがあるんだけど、この作品は未来でちゃんと夫婦になってるっていう事実があるから、素直に「良いなあ」って思えた。未成年のヒロインに対して頑張る主人公の姿も、純粋に応援できた。
正直、成人が未成年をどうこうする話は全部グルーミングだと思ってキレてしまうタイプのオタクなんだけどね。いくら未成年が成人を心の助けみたいに思っていても、いい年した大人なら、子供のそういう感情は幼さ故の憧れだと認識して、手を出したらアカンと理解するもんだろうが! って思っちゃうんだよ。
ただ、個人的にちょっと気になったのは、このまま過去を変えていったら、未来で結婚しなくなる可能性とかどうなるの? ってこと。
ヒロインが父親に売られて主人公に会うっていう元のルートは消えるわけじゃん? 自分たちの未来の関係は、このまま進んだら消えてしまう。その辺りの葛藤とか、未来を変えることへの恐怖みたいな描写はあんまりないんだよね。そもそもタイムリープの理由も不明だし。
まあ、物語的に不要だから意図的に省いてるんだろうなって感じはするけど、どうなるんだろうなーとは思う。
それでも、どう転んでも二人は幸せになりそうな雰囲気があるから、そこも含めて楽しめてるけどね!
主人公が元社会人であることを活かして新入生代表挨拶をするシーンとかも、単なる「社会人スキルでイキる」感じじゃなくて、ちゃんと物語に必要な要素として描かれてるのが良かったな。「うわ、イキリだ…」ってなっちゃう作品もあるからさ。
「ヒロインを振り向かせたい」っていう主人公の目的が一貫していて、物語の軸がしっかりしてるから、読んでいて面白いし、安心感があるんだよね。ヒロインが将来デレることが保証されてる点も含めて、物語の作り方がすごく上手いなと思った。
本の袖のところで作者の中村ヒロ先生の過去作を見たら、いくつか好きな作品があってさ。「あー、やっぱり元々話を作るのが上手い人なんだな!」って納得したよ。こういう発見があると、なんか嬉しいんだよね。
