
あらすじ
事件解決の鍵は(偽装)婚約!? スカッと爽快★武闘派ラブコメ第2弾!
病弱令嬢に転生した武闘派OLの呉葉は、隣国の皇子イザークに告白され戸惑っていた。
けれど返事に悩む暇もなく、イザークの祖国が絡む事件が発生し、このままだと国際問題に発展!?
この事態を打開する一発逆転の策としてクレハとイザークは偽装婚約することに!?
しかも彼からの求愛は演技じゃなくて――前世が筋肉喪女には刺激が強すぎます!
ハラハラするストーリー展開
事故で死んでしまってから異世界転生した筋肉系女子・クレハが、秘密を共有するイザークとともに謀略に腕力で立ち向かっていく小説2巻。クレハが恋に全く免疫も経験もないがゆえに焦れったさがある状態も、そんなクレハが受け入れてくれるまでゆっくりと長期戦覚悟でいるイザークの性格も良かった。
更にはイザークの国からお姉ちゃんが現れて陰謀だのなんだのに巻き込まれて行くし、最終的にそれをクレハとイザークの戦闘能力で片付けていくのがすっごく楽しかった。
やっぱ自ら動いて状況を良くしていくタイプの主人公は最高……!
前の巻について話すときにも書いたけれども、クレハが本当に良い性格している。
前世で筋肉をつける方向にすべての趣味が向いていたようなタイプなので、戦闘能力は(異世界であっても)かなりのもの。そして性格も良い意味でサバサバしているので、読んでて面倒くさい湿り気が無くて気持ち良いんだよね。とりあえずあたって砕けろな思考が最初に出てくる。元気な脳筋。
なので、イザークから装飾品をもらい、この世界のしきたり的にはこれはプロポーズでは……? え、これって大丈夫……? いやでももしかして違うのでは? この世界の風習的にはそうだけれどもイザーク的にはそういう意味じゃないのでは? と悩んだときには、迷うこと無くそれを本人にぶつけられるのが良い性格しちゃっている。普通そうまっすぐぶつかれない。
でもここで下手にぐるぐる悩むよりはちゃんと会話して意思疎通したほうがいいんだよねー、それはとてもそう。ラブコメ的には絶対に口に出さずにすれ違い勘違いしたほうがいいのに、この話はそんな要素はない。どんな問題にもまっすぐぶつかり、なんなら壁があろうともぶち壊していく筋肉令嬢の前には、意思疎通の不通によるすれ違いなどない。気持ちいい!!
今回はイザークのお姉ちゃんが登場して国の混乱もあれこれ起きる話だけれども、その国の混乱部分の対処で、クレハの現代人知識が活きているのが良い。異世界転移・転生系でのTUEEEE要素といったらやっぱりここだよな。
クレハの前世は29歳のOL。なので新入社員ぐらいの年齢の相手にはどのように接するか、周囲を見て行動するにはどうするかといったこともきっちり頭に入っている。そんな彼女なので、周囲との無駄な軋轢が発生することなく、そこらへんはノーストレスで読めるんだよなあ。
そもそもクレハ自体がかなり周囲のために動けるタイプだからこそのノーストレスもあるかも。誰かのために頑張ろうとする、それを苦としない性格だからこそ、イザークが大変!→だったら手伝おう!と即座に考え、利己的思考は一切無く動ける。こういう主人公ってやっぱりヒーロー的ですごく格好いい。ヒーロー……? まあクレハはヒーローですね……。ピンチのときに現れ、腕力で全てに立ち向かい、落ち込んでいるときに勇気づけてくれるクレハは紛れもないヒーロー。
クレハって、腕力があり、それが物語の解決にかなり寄与している部分はあるのだけれども、けれどもし彼女が腕力がなかったら危険に挑まないかと問われたら全くそんなことはないタイプだと思う。誰かが困っているならば寄り添い、解決方法を考える。誰かが自分の信念に沿わないことをやらなきゃならないような状況ならば、どうにか回避出来ないか考える。
そういう彼女の良いところって、筋肉じゃなくて性格の良さなんだよな~~~~!
イザークが言っていたけれども、『自分が守ったり助けてあげたりしなくとも、自ら道を切り開いて行けるような女性』というクレハは、やっぱり強い。そしてイザークがそんな彼女の隣に立ちたいと思うのがまた熱い。
他のキャラクターたちも魅力的
クレハを支えるイザークが、年下ヒーロー(クレハの精神年齢的に考えると)だが同時に年上ヒーロー(この世界的に考えると)なのもまあめっちゃ良い。
この世界の知識がないクレハに対し常識を教え、魔力の消費で腹が減る彼女に食事をさりげなく回しといった気遣いもできるけれども、クレハが格好いいところを見せると自分が情けなくてちょっと妬いちゃったり落ち込んじゃったりもする。まあなんとも可愛いんだよな……。こういうポジショニングのキャラクターに弱い。
そして今回ある意味MVPだったのはクレハのお兄ちゃんことテオなのでは。
もともと、元のクレハに対して異常なほどの過保護な愛情を注いでいたテオ。そんなテオだが、最愛の妹のなかに別人が入っていると察して、その上で「自分の妹が彼女を『クレハ』にしようと決めたのだから、彼女もまた自分の妹である」と思えるお兄ちゃん、あまりにお兄ちゃんぢからが強すぎる。彼女の幸せを祈って後押ししてくれるし、彼女が戦闘を好む性格とわかって作戦に組み込んでくれるというのは熱かったし、お兄ちゃん……と好きにならざるを得ない。
異世界転生モノの気になるところが綺麗に対応されている
これおそらく前の巻のときも言ったんだけれど、異世界転生モノの突っ込みたい部分が綺麗に理由つけられいて、読んでてノーストレスでめっちゃ気持ち良いんだよ。
わたしは良い年した大人が本来の年齢を隠して子供と恋愛しておいて「でも私本当はおばさんだから、こんな子にときめいたりしないわ~」とかやってんのがマジでうざいと思っている。けれどもこの話はクレハは結構最初のうちに自分の本来の年齢を伝えているから、年をごまかしてのうざさはない。恋愛も前世でほとんどやってこなかったから不慣れというのがあるし、ときめいたときは自覚をしてくれるので、その部分もうざさもない。
入れ替わったらもともとの魂を愛していた人は苦しむのでは、というツッコミに対しても、「お兄様はそれでも妹が選んだ妹だからと納得する」「イザークはそもそも前のクレハにそこまであっていないので愛着がない」「クレハ自身も自らの身体は借り物だと認識しているし、もう前のクレハが戻れないとわかっても彼女の身体も人生も大事にしたいと思っている」とまあ綺麗に個々人の納得がある。
良い年の大人が子供の身体に入って馬鹿やってんのを見るのがきついときもあるんですが、これはそれなりに経験積んだ社会人としての行動をしてくれるし、いや……本当に良いな……。
29って言えば年カノの織原さんぐらいの年齢なんだけど、ふたりともあ~たしかにこんな感じのところあるよね、とおもえるラインを突いている。年相応の性格してんだよな。出てくるツッコミなんかも年齢を感じさせる。
いやー……おもしろ……めっちゃ良い本だった。
ここで終わりにもできる、でも続きもかけるみたいな少女小説によくある状態での巻の終了なので、この先どうなるのかまるで読めない(いろんな意味で)。
でもこの二人の物語をこの先も読みたいので、できれば出てほしいな。
