「セプテムレックス 怠惰の七罪魔と王座戦争 (ファンタジア文庫) 古宮 雅敬」

★★★★☆,ファンタジア文庫ファンタジー,主従,幼馴染,百合

あらすじ

次期魔王を決めるバトルロイヤル―“王座戦争”。
その開催が迫る中、面倒くさがりの“怠惰”の“七罪魔”・ラグナルは、“王座戦争”の中止を画策していた。
しかしそのやり方は、魔界の住人の命を人質に取ったり、お金で解決しようとしたりと手段を選ばないもので――

逆に魔王に人質にとられてしまったメイドのメリィを救うため、個性的な“七罪魔”たちを説得し、バトルロイヤルを阻止できるか!?
“戦わない”バトルファンタジー開戦!

キャラとキャラの関係性が面白い

雑に言ってしまえば、次の魔王を選ぶためのバトロワ開催、七つの大罪をモチーフとした7人の悪魔たちが殺し合いをし最後に生き残ったやつが次代の魔王!という物語。

キャラの個性がひたすら強く、七つの大罪をモチーフとしていることからわかるように7人の悪魔+メイドや執事が登場するのに誰もがキャラが濃い。全員『こういうキャラ!』と言い切れるキャラとしての強さ。
下手に人数多いと物語がとっちらかって……ということもあるけれどこの話はそういう箇所もなく、このキャラはこのキャラと仲がよく、過去にこういう関係があって……というものもわかりやすくて面白かった。

個人的にツボったのは、ルナとニスカ。
色欲のルナはえっちぃことが大好き、けれどもそれは過去に父親がやらかしていたことを見ていたからで、世界を平和にするためにどうしたら良いかと考えた結果、みんなえっちくなって周囲の人とえっちぃことをしたくなったら愛が溢れて平和になるのでは?という思いつきから(もともとそういうのが好きなとこもあるけれど)。
ニスカは、同じバトロワに呼ばれた悪魔であるクレアと幼い頃からの友人、だが彼女の下位互換のような存在である自分に劣等感があった。
そんな彼女の前に現れ、色欲の能力を使いつつも彼女と心から会話をして友情のようななにかよくわからない関係を築いたルナ。すーぐえっちぃ話につなげようとするルナと漫才のようなじゃれあいのような会話をする二人がすごく可愛い。
うーん説明が難しい……とにかく読めばわかる可愛さとしか表現できないんだよあの関係性……。
確かにニスカは、最初は「外見と発言だけは超好みの王子様が来てくれた!?ってあんたかい!」みたいなノリから始まったとはいえ、ちゃんと信頼していったし関係性がなんとも言えないめちゃくちゃ萌えるものになったので本当に……本当に最高なので……。尊い……。

そして、サブの強感情女同士友情ことセラとナース。
セラは自分が馬鹿だと理解しているタイプの脳筋で、ナースの言うことはすべて正しい!と彼女に全信頼を預けているが、実はナースは違っていて……ということから狂い出す二人の関係。
ずっとともだちだと思っていたのにお前は違ったのかという関係は最高。
上記のニスカとクレアの、友達だと思っていたのにいつしか自分は相手よりずっと下の存在だと気付いてしまったのも熱いし、とにかくキャラ同士の関係性が熱い。男女カップルより女子同士、幼馴染同士の関係性のが熱いというか気合入ってるよね!? めちゃめちゃこじらせ百合だよね!?

そして主人公とそのメイドさんも最高。
メイドの彼女について、主人公はさほど多くは語らないんだけれど、怠惰である主人公がこのバトロワに参戦する理由がメイドを人質にとられたことだったり、ちょっとしたタイミングで彼女が心の拠り所だと見せてきたりとすっごく萌える。
メイドのほうも主人公に救われたところから始まって心の底から信頼していて、もう早く結婚しろと言いたいタイプの関係性だった。早く結婚してくれ。いや結婚とかそういう関係にならなくても別にいいんですけど……。
主人公の周囲に女キャラが多数いるのに、ここまでハーレム感がないのすごいな。膝の上に別の少女キャラ座らせたりもするけれど、全く気がないんだろうなー(そっちの少女キャラは別の少女キャラとの友情のほうが色濃そうだし)と思えるのもすごい。

ただ物語はそれほど面白くない

文章も惹きつけられるほどすごいわけじゃないし、物語自体も「ででーんこんなことができましたー」の繰り返しみたいなとこがあってあんまりおもしろく感じなかった。

ただ逆に、キャラクターだけでこれだけ面白く思わせ、キャラクターだけでこれだけ惹きつけられて、しかも7人もいるのに全員面白いなんてことができるというのがめちゃ くちゃすごい。すっごい面白い。
2人+2人+2人の閉じた関係ではなく、2人のうちの片方は別のキャラとも関係性があって、のようなこれから先ふくらませていけそうな関係性なのも面白いし熱い。

物語として続きが作れる構造だし、キャラにクローズアップした短編や、このキャラたちが好き勝手暴れまわる続きも読みたい本だった。

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