空棺の烏 八咫烏シリーズ 4 阿部 智里

★★★★☆,文春文庫ファンタジー,学園

あらすじ

人間の代わりに八咫烏の一族が支配する世界=山内を舞台とする、「八咫烏」シリーズの第4弾。
本作の舞台はこの世界を統治する宗家の近衛集団「山内衆」を養成するための訓練学校「勁草院」である。
15歳から17歳の少年たちが集められ、全寮制で上級武官になることを目指した、厳しい生活が待ち受けている。

前作の『黄金の烏』で突如出現した人を喰う大猿へ立ち向かうため、次の日嗣の御子である若宮へ忠誠を誓った雪哉も新入生の一人。
若宮の近習であった経歴や自らの経歴はあえて明かさず、勁草院での日々がはじまったものの、そこに待ち受けていたのは、若宮の母の実家である西家の御曹司・明留を中心とする若宮派のグループと、廃太子された若宮の兄・長束を再び皇太子へと推す南家系統の公近グループの激しい対立、さらに兄弟の父である金烏代の意向を重視する教授陣――間近と見られていた、若宮の即位が神官たちによって延期が決まるという不穏な空気の中で事件は次々に起こる。

実力主義が前提の学内で、貴族階級出身の宮烏と庶民階級出身の山烏の身分格差が歴然となるにつけ、山烏出身で雪哉と同室となった茂丸、あらゆる武術で天才的な腕をみせる千早らもこの争いに絡んでくる。
果たして身体が誰より小柄な雪哉は、頸草院での争いを勝ち抜くことができるのか? そして若宮の即位はなるのか……。

雪哉、明留、茂丸、千早という四人の少年たちのビルディングス・ストーリーとしての要素も強く打ち出し、友情あり、冒険ありの一冊!

シリーズ: 八咫烏シリーズ
こんな人におすすめ

  • 学園モノが好きな人
  • 男子高校生の青春!みたいな乗りが読みたい人
  • しっぺ返しを食らうスネイプ先生みたいなのが見たい人

学園編が始まったぞ!!!!

まさかこのシリーズで学園モノが始まるとは思わなかった。
いやマジで。

雪哉が入ったのは、若宮ら王族の護衛候補生を育てるための学園。
しかし、そこでは派閥ごとの対立や権力争いが存在していた。
同室の相手である茂丸や、同じく若宮派である明留らと少しずつ距離を詰めて友情というものを築いていく雪哉。
何故か厳しくあたってくる教師とも戦いつつ送られる、楽しいスクールライフ!――というお話。

いや、楽しいスクールライフじゃねえんだわ。
誰だ雪哉をこんなことにしたやつは。若宮か。若宮だわ。それと故郷への愛。

物語は最終的に

対立の悪化すらもすべてが雪哉の仕組んだ出来事。
長束派(という名の若宮に対抗する派閥の者)を明確にし、見込みのある生徒を若宮派に引きずり込む。
そのために公近を犠牲にして派閥をあぶり出し、立場を明確にさせ、最初から目を付けていた茂丸や明留を友人という立場から初めて自分たちの側へと引き込む。

という計画が知らされる。

誰だ2巻のドタバタしていた少年をこんな策士に仕立て上げたやつは。
そりゃあもともと雪哉は策士ではあったが、ここまで他人の感情をうまく動かし利用する男じゃなかったじゃん。
一見へらへらして昼行灯じみていたのに、一気にここまで変化していくのは、若宮への忠誠心と故郷への愛情なんだろうな。
心強くもあり、悲しくもある。

宮鳥と山鳥

貴族と平民の関係が良かったなー。

最初は自分の家を背負った鼻持ちならないやつだった明留。
しかし、彼が次第に平民たちに打ち解けていくのが良かった。
理由も理由だし、頭がよいやつはある程度理詰めでやったらうまくいくんだな。
明留が先生になって教えているシーンがとても好き。今までの雪哉の教え方、絶対ひどかったもんな……頭の良いやつは頭の悪いやつを理解できない……。

そして、平民の千早が最終的に明留に対してああいったのが良かった。
誰も彼も、自分の立場しかわからない。だからこそ明留は貴族としての立場から彼を救おうとするし、素直じゃないからはっきりと言えない。
同時に千早も素直じゃないからはっきりと言えない。

この、中高生ぐらいの子供の雰囲気が、すごく鮮やかでかわいらしくて良かったなー!
とても学園モノという雰囲気!

だからこそ雪哉のアレでアレな部分が最終的に浮くのだろうけれども。

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