「スカートのなかのひみつ。」伏線・構成、どれも最高に面白い青春小説!

★★★★★,電撃文庫女装,学園,恋愛,新人賞,現代

あらすじ

「面白いものが面白いものを呼ぶんだ。考え方一つで世界が変わる」
高校で同じクラスの八坂幸喜真は、その名の通り“好奇心”に足が生えたような男だ。

謎の棒、植木鉢、そしてボレロ。アイツの行動はいつも何がなんだかサッパリ。
でもそんな“八坂らしさ”が起こすある奇跡のことを、その時の僕らはまだ知らなかった。

「天野、俺たちは飛べるんだ。希望があれば俺たちはどこまでも飛べる!」

世界一の女装アイドル、赤いラインカーの美少女、そして時価八千万円の……タイヤ??
足下を吹き抜ける“蛇の息”が僕(わたし)と私のひみつをさらけ出した時、八坂と“あの子”の愛の物語が幕を開ける――。

こんな人におすすめ
  • 読んでいて熱くなる青春物語が読みたい人
  • 恋愛に一生懸命な学生が見たい人
  • 女装少年・男の娘が好きな人
  • 綺麗に回収される伏線が好きな人
起承転結
  • A:
     天野は普段から女装する趣味がある。女装して歩いていたある日、クラスメイトの八坂に見つかった。てっきりからかわれると思ったが、八坂は天野をファミレスに誘い一緒にパフェを食べ、天野を面白いと話す。そして、明日学校に女装をしてこいと言う。無理だと拒否する天野に対し、自分も女装するからと言う八坂。
     翌朝一応女装道具を持って学校へ行ったところ、八坂は見るに堪えない女装をしている。喧嘩を売られたような気分になった天野は、女装はそんなものではないと見せるために女装をして教室へ向かう。天野の女装のクオリティにクラス中大騒ぎでかわいいと騒ぐ。自分の女装趣味が思っていたよりナチュラルに受け入れられほっとする天野。
     そして八坂にそそのかされるように、偶然見かけたかわいい男子に「女装してみない?」と誘う。

    B:
     広瀬はある日偶然強風にスカートを煽られた少女・丸井とその友人新井田の下着を見てしまった流れから、彼女たちに協力することとなる。彼女たちの目的は泥棒で、広瀬には泥棒の見張りをしてほしいのだと頼む。
     ただ見張りだけならばと最終的に受け入れた広瀬。泥棒に加担する。丸井の泥棒は成功するも、目撃され、丸井と新井田とともに逃げる。しかし、ストーカーのような何かが後ろを追いかけてきていた。

  • A:
     女装を持ちかけた少年メアリーは見事な化けっぷりを見せる。メイクや発声練習などをし、完全な女に化けるためにメアリーを鍛える天野。
     面白いことをやりたい、大きな目標を決めてそれに向かって突っ込んでいく男である八坂は、天野とメアリーで女装アイドルをすれば良いと言い出す。
     ある日八坂は天野を病院へ連れて行く。八坂が『あの子』と呼ぶ少女は彼の片思い相手であり、留年した理由だ。彼女と同級生になりたいという思いで八坂は留年した。事故で片足を無くして自暴自棄になっている『あの子』に、自分たちが有名になったらリハビリをしてくれと天野は約束させる。
     その旨を八坂に告げたところ、八坂は大喜びで二人を東京へ連れて行くと言い出した。
     途中で女子大生に写真を取られたり青年に写真を取られたりしつつ、メアリー好みのゴスロリショップへ行き、八坂の手腕でメアリーに合う衣装を見立ててもらう。天野も自分好みの女装グッズを購入。そして彼らはYou Tubeに女装アイドルとしての動画を上げ始める。
     しかも、山から吹いてくる風を利用し、パンチラを動画にいれることとした。
     最初に上げた動画は大ヒット。しかしYou Tubeの権利者権限で削除。だが東京に行ったときに写真を取らせた青年はバンドを組んでいてオリジナル楽曲を送ってくれた。
    『あの子』はリハビリを開始した。しかし「あなたたちが羨ましい」と涙を流す彼女へ、八坂が「諦めるな!」と叫ぶ。
     そして、八坂は旅に出た。

    B:
     広瀬が彼女たちに協力して行った泥棒行為は目撃者のせいでバレていた。校長室へ呼び出された面々。しかし丸井が「自分が二人を誘った」と言ったために、丸井のみが残され、他の二人は教室へ帰らされた。
     丸井は、あれは自分なりのけじめのためであり、善悪ではないと校長へと言う。しかし校長も立場上受け入れられない。校長になにかしらの行動をして見せ、校長が及第点を与えない場合は、町のお祭りでのメインの役割から降りるという丸井。彼女たちを目の敵のようにしている教師の千山は彼女に「今のあなたでは無理」と言う。

  • A:
     1年後、天野は大学生になっていた。八坂が帰還したとの連絡をメアリーから受ける。

    B:
     広瀬ことメアリーのストーカーは、丸井たちを目の敵にしている教師の千山だった。広瀬を『可哀想な子供』と認識した千山が自分の理想を乗せて勝手に広瀬を助けようとしていたのだ。

     ストーカー教師千山の問題を、帰還した八坂が解決する。そして『あの子』こと丸井は好調に見せるために町のお祭りのメインのダンスを行う。事故で片足をなくした彼女は現在そちらの脚は義足で、踊る際にはどうしても踏ん張りがきかない。
     八坂は自分が作った応援団たちを率いて丸井を応援する。しかし、校長の前で見せた初回は失敗する。
     一人だけ河川敷に行く丸井。しばらくして山からの強風が来るのだと気付いた八坂が駆け出し、丸井の元へと向かう。
     丸井は八坂のとある行為のために勇気づけられて見事に踊る。

  •  八坂と丸井のイラストでハッピーエンド

伏線と構成がとにかくうまいラノベ

これについて説明しようとするととにかくこれが一番最初に出るんだな~~~~~~~!!!!

作中で何度も繰り返されていた『学校近くは風が強い』『八坂は強風が吹くタイミングがわかる』。
冒頭広瀬パートで丸井たちのスカートがめくれるために、天野パートでもスカートがめくれるために。
中盤のダンスではパンチラを狙って取るために。
こうもしょうもねえことに使われていた設定が、最後の最後で『八坂が空を飛んで、空からやってくるサンタクロースになるために』使われるとは思わないじゃん……。

これ以外にも、簡単なところだとアキバで出会ったヲタ系外国人ヘンリー。
読んでる最中は天野とメアリーの可愛さの描写のためかなあなんて思ってたけど、そこから音楽提供・二人を世界のアイドルにするために飛び出すなんてめちゃくちゃな流れになっていくの、伏線なのかなんなのかもうわかんないけど最高に強くてめちゃくちゃ良かった。

視点というか主人公キャラが2人いるのは、よくある構成的に未来と過去かどれかのキャラが同一人物だろうと思い、その場合は天野が広瀬になることはないだろうし地の文の雰囲気が違うから別人、八坂がこれはありえないという消去法でメアリーかなと思ったら正解だった。
彼女だけ名前出てないしね。
とはいえ、メアリーがメアリーを名乗る理由も納得できるものだったこともありすごい素直に受け入れられたし、気付いてからはこちらのターンでは自分の名前を言えるぐらい好きになったんだなと思えてすごく良かった。

こういうとこが本当にうまいよな……。

めっちゃ熱くて面白いみずみずしい青春ラノベ

伏線や構成もうまいんだけどそれだけじゃない。
それぞれのキャラクターの青春ラノベとしても超面白かった。

八坂の執着

八坂の執着というか、熱というか。
好きな子と同級生になりたいがためだけに学校休みまくって留年し、同級生になりたいがためだけに海外に出るってお前なんなの!?
そんなめちゃくちゃな八坂だけれども、塩梅が良いのかやべえ男という印象はあるけれどもそれ以上に純愛男という印象が継いているからすごい。こわい。やばい。

アイドルモノ

としての要素は薄いけれども、You Tubeアイドルしている二人のシーンが見ていて結構面白かったんだよね。
なんならここだけで1冊ぐらいほしかったもん。二人があれこれ頑張って、色々なYou Tubeアイドル見た八坂が「そうじゃない!」「こう!」って大騒ぎするの。絶対に面白い。

自分でもわからない何かを盗むのに協力する

なんか青春ラノベの1ページってかんじしない!? すごいする。
こっそり秘密でなにか盗むのに加担するシーンに読んでてうわーーーーーー青い! と自分でもよくわからないけどドキドキしたしワクワクした。

なんなんだろうねこの感覚。

メアリーが強くて好き

メアリー=広瀬が強いんだよ。本当に強いんだよ。

さっきの伏線の項にも書いたけれども、メアリー=広瀬だと気付いたときに、ああ強くなったんだな……となんか嬉しくなってしまった。

女装って、たしかに『今の自分とは違う自分になる』なんだよな。
コスプレもそういうとこあるみたいな話をたまによく見るけれども、男性→女性になる完全なる異性装は特に強そう。
嫌いな自分との決別、今までの吃音でどもってしまう自分とは別れて、別の自分になる。
たとえそれが天野から誘われたことであっても、女装をその後選んだのは間違いなくメアリーだった。

メアリー=広瀬だとわかったときに、お前……ゴスロリ以外のナチュラルメイクも練習したのか……とちょっと感動した。めちゃくちゃゴスロリにこだわってたのに……。

主人公・天野のナチュラルさ

彼が1年後シーンでバイトのときは男の服装、終わってからは女の服装と着替えているの、すごく好きなんだよね。ナチュラルに自分の好きなほうを選べる。
このあたりは完全に八坂から得た部分なんだろうな。
すごくすき。

いやーほんと面白かった……。絶対にわたしが気付いてない伏線もありそうだし、あとからもういっかい読もう。
ほんとにめちゃくちゃおもしろかった。

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