「魔王は服の着方がわからない2」初心者向けからシチュエーション別ファッション指南へ
あらすじ
イベントいっぱいの夏――オシャレも恋も一歩前へ。
瑛美のファッション指南のもと、声優握手会や遊園地デートの準備をノリノリで進めていた異世界の魔王・真野。だが異世界からやってきた幼馴染みの少女・ティアの登場により、瑛美や乃音との関係に変化が生まれ!?
シチュエーションごとの服装指南
前回はおしゃれの基本的なことだったのが、今回は複数シーンに合わせたおしゃれ着という方向へと情報追加した巻。
テーマになっているのはデート着・遊園地デート着・水着・浴衣・コミケと多種多様。
結構使い勝手は良さそうな説明が多いんだけど、私はドレスとカジュアルの違いが全然わからないので理解は挫折してされ竜の咒式説明パート読むぐらいの感覚で読んでた。それでも面白いからありがたいいんだけど。
ニットはカジュアルだと思っててんだけど目が詰まってればドレスとかわからねえ。モノクロがドレスという色合いしか信じられねえ。
そのあたり、分かる人は分かるんだろうけど私は完全に無理ですねだった。まあこういうのってSFの科学説明と同じようなものだしね。
今回もステマかと思うぐらい服を買いに行く場所はGUとユニクロがメインなんだけど、ちょこっとだけ出てきた『人は何故安いものもあるのに高いものを求めるのか』という話が面白かったな。
「……それにしても、こんなふうに安くていいものはあるのに、世の中にはどうしてわざわざ高いものを買う人がいるんだろうな?」
いくらお金を持ってるからって、ファッションアイテムなんか安い方を買って節約して、浮いたお金でギャルゲーを買ったほうが人生楽しくないか?
俺の素朴な疑問に、藍野は微笑んだ。
「それはね、高いものの方が流行の『源泉』で『本物』だから。ファッションが好きで、変えるだけのお金があれば、本物の方を欲しいと思うのは自然な感情だと思うわ」
ラノベあるある、なんでもコピーできる世界でも本物を求めるやつだ! とちょっとキャッキャしてしまった。よくあるやつ! 具体的にはごく最近BATTLE OF TOKYO小説版で読んだぞ!
なんでも本物に近ければ源泉であり、コピーしていくうちに、末端(=安価)になるに従ってコピー回数が増えてどんどん元とは変わっていく。理解できるやつ。服装に頓着ない人間でもこう説明されるとなんとなくわかる。
「そうそう。よく地元の商店街とかで見かけるじゃない? 流行を取り入れたデザインなんだけど、なんか違うんだよなーって形になっちゃってるアイテム。流行の源泉から離れていくに従って、そういうことも起こっちゃうのよね」
落ちとしての説明が思い当たるのがありすぎて笑ってしまった。なんか……あるよね……商店街というかまちなかから少し外れたところにある栄えてない位置の恐らくは30年前も同じくそこに存在していたのだろう服屋……あれは単純にいつまでも古い服を置いているだけな気もするけど!
服装は他人からどう見られるか・どう思われるかのポイントだっていうの、1巻の主人公は可愛い子が好きなのに相手には自分の内面で評価するのを求めるの?っていうのから続いてて良いなー。
ドン引きスタイルしている主人公は遠巻きにされているけれど、まともな服装の主人公は他の子からもきゃあきゃあされている。ついでに言えばファッションセンスが良く高級品メインだが可愛いティアもきゃあきゃあされているのが作中モブキャラたちの価値観が一貫してて好き。
三角関係の決着はつかず、でも選択はする主人公
ファッション関係も楽しかったんだけど、キャラクターたちの人間関係が徐々に進んでいくのも楽しかったな。
藍野のツッコミがどんどん雑になってくのいいな。もう主人公の世間知らず部分を特段気にせず話を流せるようになってきて、ああこの子完全に慣れてきたんだな感が強くて可愛い。
ヒロインが強めツンデレ、主人公が魔界育ちなのでヒロインのツンデレにも全く臆せず自分の好意と感謝を伝え続けられるの強いな。だからこそ藍野は主人公に対して好意を募らせるし、主人公が自分の親友を好きだとわかっているからこそがんじがらめになっている状態なわけで。
好きな人に頼られるから手助けをしたい、でもそれによって好きな相手が自分の親友と仲良くなるのは素直に喜べない、でも……みたいな状態でまどろっこしいし、彼女が素直に告白できないようなツンデレ気味だけど良い子だからこそだよなー! このあたり読んでてものすごく良かった。
その白石さんも、藍野とおんなじポイントで徐々に主人公に惹かれているのがまた。
まっすぐで、嘘ついてるなんて全然思えなくて、素直に褒めてくれて、言ってるそれは本気だろうなと思える人なんてそりゃ好きになるよなー!
ただそいつの服装が良いのはだいたい全部あなたの親友がコーディネートしてるからだよ。さっと上着やストールを出せるのもあなたの親友のおかげだよ。藍野の厚意が白石さんに届いているこれ、ある意味間に男を挟んだ百合じゃねえか。
なんでも気づいてくれて気にかけてくれる人って素敵みたいなコラムがあったが、これはあまりに過度だと格好いいじゃなくてオカン認識されるやつだなと思った。
白石さんと一緒に握手会に行くシーンで、白石さんは声優さんにテンションあげてるのに、主人公は好きなキャラの声を当てた人だとテンションをあげているのが、オタクの微妙な差異……! と笑ってしまった。いや、なんかわかるよ。そこテンションのあげかたちょっと違うんだよね。
白石さんのコミケ参加笑ってしまった。作った自分の写真集を3秒以上見られたくない、部数は20、20も完売しきらず友達に最後は配る、このリアルさよ……。
オタク関連の絶妙な現実味。20部という現実味。
この微妙な三角関係(藍野→主人公→←白石さん)(ティアは片思いは強いが絶対にヒロイン戦争にはいらない負け幼馴染ポジションなので……)のままいるのかなと思ったら、そのあたりに落ちをつけてきたのちょっと驚いた。だいたいラノベって続きを匂わせるために主人公を難聴にしていつまでも言葉は届かないし限界まで鈍感にするものだと思っていたので、藍野の夢うつつの告白がちゃんと届いて、その上で主人公が彼女の告白を正しく理解して罪悪感を持つとは思わなかった。
結果選んだのが現状の維持というのはちょっとずるいなと思うけれど、結果的に白石さんとの関係もすすめるかもしれないのに進まない、完全に藍野との友情と白石さんとの良い関係もすべてほしいという結論が出てきて驚いた。魔界育ちの利点を使ってずっと気付かないままで行くと思ったんだよ。
見た感じ続刊はなさそうだけど内容的にもレクチャー本としてこのぐらいでいいんじゃないのかなと思った。