「日本一の高校生魔術師、異世界奴隷少女をもらう 2」不快感なくやさしい距離感の物語

★★★★☆,HJ文庫主従,現代

あらすじ


京介の不器用な優しさに触れ、日本にもだいぶ慣れてきたノイン。気づけば季節は夏真っ盛り。夏休みに入ったふたりは、ノインの服を買いに出かけたり、映画を見たりと、家の外の日本文化にも触れ長期休暇を満喫していた。そんなある日、祁答院邸に一人の幼女が襲来。「親戚の子を預かる」ミッションの発生に無愛想な京介は頭を抱えるが、意外にもノインの“お姉ちゃん気質”が発覚し……? 夏がふたりを“家族”に近づける、異文化交流ラブコメ第2弾!



前の巻の感想はこっち

とにかくやさしくて可愛くてあたたかいお話だった。

前回ノインを異世界に戻す戻さないなどいろいろあってからの今回の巻。
ノインの服を買いに行ってついでに恋愛映画を見たりというまるでカップルのような行動もしつつ、しかし明確に恋愛対象としては互いをまだ見ていない(けれども異性という存在として認識はしている)ぐらいの距離感の二人。
この距離感がすごくほのぼのしていて可愛い。
京介はノインのことを大事な家族+少女として見ているので、不意打ちの事故だので彼女の裸を見てしまったら相応に動揺するんだけど、同時に家族として愛しているので髪の毛を梳かすといった接触や頭を撫でるという接触は他意なく出来ちゃう。京介自身の雰囲気が草食系っぽさがあり、敬語というぐいぐい来なさそうなキャラ設定なのも相まって、雰囲気がすごいゆったりしていて雰囲気が良い。
ノインのほうも京介に対して居場所を作ってくれただとかご主人さまであるといった慕う感情はあるし、恋愛映画の二人と同じ行動をしているのに気付いて照れちゃったり喜んじゃったりはしてるんだけど、まだ明確な恋愛感情というほどまでは行ってない。
この距離感がほんっと良い。何度も言うけどものすごく良い。肉食的にぐいぐい行くでなし、恋愛感情を明確に自覚しているのでもなし、家族として、異性として、適切な距離を持ちつつ相手を大事にしているんだなって雰囲気が話の各所から出てて読んでいてすごくあったかい気分になれる。
今後なにかの流れで二人が相手へ恋愛関係を抱いたとしても、少しずつ距離を詰めていくし、まずは手をつなぐところから始まるんじゃないかってぐらいの優しい温かさがある。

途中からテーマが「家」「家族」になってきたあたり、京介の母親という不穏人物を利用しつつも、ノインが京介のことで自己意思で怒り、京介の家族だと自らを言うところがもうものっすごく良い。
作中で何度も言われているように、ノインは今まで自分の意思でなにかをしたいということがものすごく少ない。そのノインが京介のために怒ると決めて京介の母親に怒るのが、彼女がどれだけ京介を大事なのか見せられてるみたいでじんと来た。
そこからゴタゴタはちょっとあったけれども最終的には丸く収まったし、今後なにかあっても二人はちゃんと「家族」としての関係性を築けるんだろうな。
京介の家族範囲のなかにはきっと千草もはいってるだろうし、その彼女も京介を大事にしてくれているけれども恋愛という距離感じゃないというこの雰囲気が本当にすごく良かった。
この物語、基本的にメインキャラクターの距離感が凄く暖かくて良い。

京介の後見人をしている千草父も、危うげだったり不穏な気配があったらちゃんと本人に伝えている&千草に伝えて何かしら警戒するように匂わせるなどしていて、ちゃんと京介を気にしてくれているのがわかる。
千草父、シーンでのちゃんと姿を出す出番は全然ないんだけれども、地味に仕事出来る人なんだろうなと思えて好き。必要なところにちゃんと配慮と連絡をしている。ほうれんそうが出来る大人は良い大人です。

ただ、今回「家族」の象徴かつ不穏をもたらすアイテムである母親があまりにテンプレ的なムカつく人だったのがちょっと気になったかも。
あからさまにテンプレな、魔術師をよく思っていない、京介をただ利用できると思っているだけの人。息子をどう思っているかわからない人。描写や台詞があんまりにもテンプレな「敵でーす!」っていう感じなのが気になった。あからさますぎるんだよ。もうちょっとなんかなかったのかな。

雰囲気が良く、他人との距離感がすごく適度で心地良いラノベだった。
3巻があれば読みたいなーと思ったけれどもこれは……出てないな……?

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