「全肯定奴隷少女:1回10分1000リン」愚痴を吐くのは悪いことじゃないって肯定してくれる
あらすじ
大丈夫なの!! まったくもってその通りなの!!!!!!
公園で見かけたボロボロの貫頭衣を身に纏った銀髪の美少女。
あざとい笑顔と快活な声で親身な言葉をかけているが、手には『全肯定奴隷少女:1回10分1000リン』と書かれた怪しい看板? どうやらお悩み相談を受けているようで――。
「奴隷少女はあなたのお悩みを全肯定するの!!!!!
さあ!! 日々のお悩みを叫ぶといいのよ!!!! えへ!」
たかが10分。されど10分。人生を変える言葉がその10分に詰まっている! 自分の歩む道に迷い、悩む、そんな頑張るあなたの弱った心に寄り添う、癒しの全肯定ファンタジー!
面白かったー!
表紙とタイトルからして女の子に全部肯定されてちやほやされる物語なのかな?と思いきや、愚痴吐きにも方法が必要だったり、時と場合によっては否定もするというスタイルで、最後はじんわりと感動したお話だった。
愚痴を吐くのは悪いことじゃない
全肯定奴隷少女ちゃんは愚痴を吐くのも良いことなの!と肯定するの!じゃないけれど。
教会のお姉さんがわかりやすいんだけど、愚痴を吐くこと自体は悪いことじゃない。愚痴を吐いて、頑張ったことを報告して、それを慰めてもらって頑張ったことは褒めて肯定してくれる人がいるっていうのは間違いなく嬉しくて幸せで良いことなんだって思わされた。
普通に生きてるだけじゃなかなか認めてもらえない自分の頑張ったことを、奴隷少女ちゃんは絶対に認めてくれる。だからこそ自己肯定感が上がるし前に進める。気が楽になる。
そういう意味で、愚痴を吐くこと自体を絶対に否定しないこの話が優しいし良いなって思った。
ただその愚痴を吐くこと自体もスキルが必要なんだなってシーンがあるのがちょっと面白かったな。
愚痴吐き慣れていて奴隷少女ちゃんを利用しなれている教会のお姉さんはうまく彼女が肯定できる愚痴を吐けるけれど、初利用の研究者さんはうまく彼女と噛み合わせるための愚痴が吐けない。奴隷少女ちゃんはなんでも見通せるわけじゃないので今話を聞いて分かる範囲でしか肯定できないけれど、肯定する言葉に必要な情報がわからないとそれもうまく噛み合わない。
そこらへんの肯定や愚痴吐きにもスキルが必要!って出てくるあたり、たしかにとも思ったし、同時に難しいな~!とも感じた。
誰かに言えば楽になれるわけじゃない
全肯定奴隷少女ちゃんは、話せば全部肯定してくれるし、あなたは頑張った!ってなんでも認めてくれる。
だからこそ自分のせいで先輩を怪我させてしまったことを話して、でもあなたは頑張ったよ!!とは言われたくない、それは逃げでしかないし弱さでしかない、とわかって言葉を止める主人公がつらいし理性的だし自分を理解して苦しくてよかった。
主人公のそういう理性的でちゃんとストップかけられる部分の強さがあるからこそ全肯定奴隷少女ちゃんはその後主人公をお金の介在しない自らの言葉で慰めたんだろうな。
この話、主人公は前座の話部分は垂れ流すだけで肯定してほしいわけじゃない。ただ誰かに愚痴を吐き出したいだけで彼女の肯定を必要していたわけじゃない。本当に必要としていたのは許しだった、とわかるのが読んでいてつらい。
でも愚痴って認めてもらえることで前へと進んでいける
この話は冒険者としてまだまだ未熟だった主人公が、全肯定奴隷少女ちゃんに愚痴を話す人たちを目撃して自分なんてまだまだだな!と思ったり、彼女に愚痴を吐いて頑張ろうと思って前へと進むようになることで、徐々に強くなっていく物語でもある。
主人公の成長に奴隷少女ちゃんは直接的にはそこまで関わってない。基本的には彼女は主人公の愚痴を聞いて相槌を打つだけ。でも、たったそれだけにしか思えない行動でも、すごく勇気づけられて前へと進めるんだろうなって思った。
あとは先輩が可愛いな。
主人公が奴隷少女ちゃんへの想いに気づいて喋ったのを自分宛ての想いと勘違いして意識してしまった先輩。彼女はこれからどうなるんだろうか。これ気づいたときに相当大問題起こりそうだな……。
面白いなーと思ったら、この話の作者さん処刑少女の人か。ファンタジーという以外方向性は全然違うんだけどこれもめっちゃ面白かった。