「インフルエンス・インシデント Case:02 元子役配信者・春日夜鶴の場合」炎上(物理)するインフルエンサー

★★★★★,電撃文庫YouTuber,学園,片思い,現代

あらすじ

『白鷺ゼミ』にまた新たなる相談者が。次なるSNSのトラブルは――!?

『神村まゆ』誘拐事件が解決し、インフルエンサーを集めたウェブ番組で顛末を語った真雪。そこに、かつて人気子役として活躍し、今はティーン世代に人気の配信者・夜鶴が相談を持ち掛けてくる。
『春日夜鶴は炎上を運ぶ』
SNS上で囁かれる卑劣な噂。
天才教授・玲華の協力が得られない中、真雪とひまりたちは対処の糸口を捜すが、夜鶴の行動に付随する「危うさ」に不信感が生じていく。
しかし、夜鶴のファンであり自らもネットでのトラブルに巻き込まれた蓮水の「それでも『よづるん』を信じる」という想いが事件を思わぬ方向に導いて――。
インターネットを起点とする事件(インシデント)にインフルエンサーが立ち向かう、新世代ミステリー第二弾、開幕。

前の巻はこちら。

炎上(物理)

今回は、自身がいる場所のそばで炎上(物理)がおきる配信者からの依頼。前回の炎上がネットでやらかした人を叩くという一種正義の暴走というか偶然(?)起きた暴走なのに対して、今回は明確に燃やしてやろうという悪意を持って動いた人がいる炎上、ネットではなくリアルに関わってくる炎上という違いがあって面白かった。

今回の話、夜鶴がインフルエンサーだからこそ居場所がバレ続けていたんだよな。例えば彼女があのまま子役を続けていたらもっと自分のリアルタイム現在地を隠すだろうし周囲の扱いも厳重だから「炎上が起きてもよづるんはこんなことする暇なかった」と言い切れる。だから過去の仲間たちもこんなことは出来なかった。夜鶴が事務所に守られていてマネージャーの目がある場所にいることが多い芸能人ではなく、けれども多数の人から存在を知られているインフルエンサーだからこそ起きた事件なのが面白かった。

今回炎上(物理)事件を起こした夜鶴の過去のやんちゃしてた頃の仲間たちはでも言うてよづるんは過去を全然切り捨ててはいないよね。

「どうせアレだろ。昔の友達なんていなかったことにして、まともな人間になれなかったやつらだって心の底で見下しながら生きてんだろ? 連れが言ってたぜ。夜鶴に連絡しても既読すら付かねえってな」

いなかったことにはしてないんだよね、夜鶴は。

『みんなグレる素養はあると思うよぉ。人間関係が拗れたり、家庭環境が複雑だったり、悪い友達に流されて悪いことやっちゃったり、いろいろあるでしょ。ただまあ、限度はあるけどねぇ。中学生のころにさぁ、火炎瓶をつくって、廃墟に投げ込んで遊ぶのが流行ってた時期があったんだよねぇ。今考えると不法侵入やら放火未遂やら洒落になってないから、それを美談にするのも違うと思うけどねぇ。

悪い友達に流されたとはしつつも、その頃について動画で語っている。ひまりが切り抜き動画探したときにすぐ出てくるぐらいに、過去の仲間について語っているし、忘れてはいない。見下してるかどうかはちょっとわかんないけど、少なくとも存在は消し去ってなんていないよな。

「過去の自分を肯定したくないって春日さんはおっしゃいますけれど──『あの経験があったからこそ、今の自分がある』。そんな視点があってもいいと思うんです」

こう言われてるけれども、むしろ夜鶴はずっとそういうスタンスでいたなと感じた。

夜鶴は頭が良いし、興味を持ったことを調べて自学していける人間だ。周囲をよく見ているし、芸能人だったからこそ自分の影響力を理解してる。遊園地に行ったときのシーンが顕著だけれども、周囲に人が集まっても処理できない真雪と違って、自分の回りに来た子たちの対応をしている。そういう夜鶴の頭の良さで今現在の地位を築いているよね、彼女は。

ひまりお姉ちゃんに惚れるしか無い

『ストーカーに襲われる、暴漢に囲まれるなどしてピンチになったヒロインを、飛び込んできたヒーローが助ける』っていうシチュエーション、もうベタすぎるぐらいにベタだと思うんだよ。でもそれをヒロイン側が男の娘で、ヒーロー側が女子大生である。ただし女子大生はキックボクシングと空手をやっており、りんごを素手で握り潰し、後ろから殴りかかってきた男の手を見もせず掴んで握りつぶすとする。

つええのよ……ひまりがあまりに強いのよ……。レスリングやってた男以外には負けなしってどういうレベルの強さだってぐらいに強いのよ……。普段はお姉ちゃんだからねーって言ってみたり真雪がぐいぐいきたらちょっとたじたじになってみたりしたりと可愛い女子大生のお姉さんなのに、拳を握ったときの圧力がすごいし、現れるタイミングがあまりにヒーローすぎる。こんな格好良すぎる人に何度も助けられたらそれはもう惚れるしか無い。

夜鶴に「道理で、まゆまゆは……姉崎サンに惹かれるわけだ」って言ってたけれども、本当そう。こんなにあまりに格好良すぎる姿を見せられたら好きになっちゃうよ。わかりやすすぎて蓮見にも5秒に1回キョドってる扱いされるレベルに惚れちゃうわけだよ。

今回の巻の序盤にあった、酔っ払ったひまりに風呂で肩を固定されて洗われそうになった真雪のシーン。あれ、最後まで読んでから思うと、肩の骨砕けなくて良かったね。ひまりが人間に対する握力の使い方をバグらせなくて良かったね。

ひまりも真雪を憎からず思っているのが判明し、告白は現在一時保留だけれども行動としてはほぼ完全に通い妻で、これはもうくっつくまで秒読みでしょう最高すぎる。はやくくっつけ。結婚しろ。いやマジで。最高すぎる。

今回の巻は、前回探偵役だった教授がほぼ出てこない。なんなら事件に関わることを拒否してくるレベル。

確かに教授はエキセントリックながらもひまりが関わっていたらある程度は気にしてくれるのではないか?と思っていたら、ラストに黒幕の鳳が関わっているのが判明。そっか、意図的に巻き込もうとされていたら教授は回避するか。

さすがと思ったところで次巻への引きがヤバすぎる。ひまりがどうなるか気になる。

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