「スイレン・グラフティ わたしとあの娘のナイショの同居 (電撃文庫) 」世津路 章

★★★★☆,電撃文庫友情,現代,百合

あらすじ

同級生とナイショの同居、発端は――漫画制作? ガールズ青春グラフティ!
 はじめまして! わたしは、池野彗花。この春から、高校一年生です。お母さんが働いてるから、おうちの中のことと弟・妹のお世話はわたしの仕事なんだ。
 今一番気になっているのは隣の席の庭上蓮さんのコト。クラスじゃ不良だヤンキーだって怖がられてるけど、なーんかそうは思えなくて……。
 だけどある日、偶然彼女の秘密を知って一緒に住むことになっちゃって?!

「誰にもアタシが漫画描いてるってバラすなよ。バラしたらコロス」

 わたしの家を作業場にして、新人賞を目指して頑張る彼女を、ささやかながら応援してます。ちょっぴり怖いけど、悪い人じゃないって知ってるから。
 そんなこんなで、わたしとあの娘のナイショな青春グラフティ、はじまります!

シリーズ: スイレン・グラフティ

彼女の創作にかけるひたむきさを見て世界が変わる物語

いやーーーーーほんと良かった。

タイトルとあらすじからしててっきり百合同居モノかと思いきや、完全に友情の青春グラフィティだった。百合目的として読んだので拍子抜け部分はあったけれども、それはおいといてすごく良い話だった。
ところでこれは完全に余談なんだけど、BLで兄の子を引き取ったとかそういう理由で子持ちものをちょいちょい見るのはなんでだろうね(その流れでこれもてっきりガチ百合かと思ってた)。

秘密の共有って物語の始まりにありがちなんだけれど、共有だけに収まらず、彼女の夢である秘密を次第に自分も大事になっていくという流れがめちゃくちゃに熱くて良かった。

漫画なんてほぼ全くレベルで読むことのない彗花が、蓮が漫画に情熱をかけるからこそ、自分も漫画へ興味を持って少しずつ知ろうとしていくのが良かった。
誰かからの影響、相手の見るものを知りたいからってもうめちゃくちゃ愛だよね。友情という名の愛だった。

中盤の、蓮の漫画の面白くない点にきっちりツッコミを入れる彗花が良い。そういうのしてくれる友人ってすごく貴重だと思う。
そしてここで蓮もただキレたりするんじゃなくて、どうしたら良くなるかをすぐさま理解して即座にその手段を取れるの、漫画を面白くすることを本気で頑張ってる~~~~~!!!となってめっっちゃ良い……。
そういうところを見ているからこそ彗花も手伝いと協力頑張るよなー……めっちゃ良い……。

もともと彗花から蓮に対しての感情はそこそこ良かったけれど、漫画というものを通じて、漫画を書くこと自体の面白さ、そして彼女に興味を持っていくというのがめっちゃ良かった……。良い……。

というか蓮! 蓮可愛いよ蓮!
自分と関係がある子になにかあったらかばって、悪ぶって悪役引き受けて、それで傷ついたりしてるけど全然って顔をして、野良猫みたいで人馴れしてなくて本当に可愛いよ蓮!
彗花が構いたくなってしまうのもわかる……。しかもそんなヤンキーっぽい外見行動でいながら漫画に情熱かけてるってめちゃめちゃにかわいすぎかよ。可愛い。

彗花が蓮にいろんなもの食べさせたりしてるシーンが好き。納豆食べたことないけど嫌い~~~ってなってる蓮に食べさせようと頑張ってみたり、ホットケーキにアイス乗せを喜んでもらいたがったり。もう読んでいて可愛いかよ~~~~と悶てしまった。可愛かった。
懐かないけど都合が良いときだけ居座る野良猫みたいだった蓮が、次第に彗花の家を住処と認めていくようなそんなシーンの連なりが最高だった。

終盤のシーンで明かされる蓮の父親のあれこれ。くそオヤジ~~~~~!となってしまったが、彗花の一発が本当にすごくて、物理よりそこで叫ばれた『蓮の漫画を最後までみたい』という言葉のほうが彼女にとってはすごく強い救いだったんだろうなと思えて最高に良かった。
あえて最後の最後で新人賞を受賞しないのが美しいし、これからも彼女たちはまた新人賞受賞に向かって走っていくかもしれないしそうじゃないかもしれないという雰囲気でめっちゃ好き……。

読み終えてから気付いたんだけれども、ほぼ完全に男子不在の女子の友情の物語なんだよな。
だからこそ百合っぽさがあり、けれども蓮へ恋愛感情を持つ少女が一瞬ではあれど出てきたからこそ、彗花と蓮の間にあるものは友情だと示された。
友情と恋愛、どっちが上だ下だというわけではないけれど、塩梅というかそういう部分がめっちゃうまいと思った。

本当に面白かったしよかった。百合かと思ったら百合じゃなかった。

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