「生物学者山田博士の聖域」出てくる人間全員変人
あらすじ
沙夜梨が同僚の結婚式で出会ったのは、どこか浮世離れした研究者だった。「山田博士(やまだひろし)」名乗る彼は、どこか不思議な人物で……だめだめ理系男子と、こじらせ文系女子の恋(!?)の行方は!?
なんなんだ……いや本当になんなんだこの本!?
読み終えてから、恋愛小説なことはわかるんだけれどもなんだかものすごい変な本読んだなという気分が残りまくった。なんだこの本?
物語は、恋愛的に拗らせたというか元々はあまり恋愛に興味なかった文系女子の主人公と、彼女が先輩の結婚式で出会った理系青年の初々しいお付き合いの物語。のはずなんだけれども、二人がものすごい変人なので、終始何だこの話は?という気分に陥る。
主人公は、学生時代は合コンにも興味がなかったタイプの拗らせ系、理系青年は今まで恋人がおらずどうにかしてほしかったタイプの拗らせ系と、方向性は違えど完全拗らせ系が二人揃って拗らせないわけがなく……という方向性の話でもなく、なんだこれは。
相手の理系男子は、今まで誰かと付き合った経験が無く、今現在枕(寝るときに使うあの枕)を恋人としている変人。友人の同じ大学院生たちもほぼ全員恋人がおらず、恋人のいない者同士で時々下世話なイベントを開催したりしつつ、異性とは縁遠い生活を送ってきた。
枕を恋人としている人間の時点で相当変人なんだけれども、主人公も他人の結婚式に枕を持ち込んで話しかけている変人に「今度会えませんか」と誘うあたりで更に変人だし、ついでに言えば枕に対抗心を燃やして「枕は浴衣を着れない」と浴衣で夏祭りに行くくらいの変人なので、変人同士案外合っているのかもしれない。枕に対抗意識を燃やすってどういうことよ。相手枕だぞ。確かに理系男子は枕を本気で大事にしているが、枕だぞ。
でもそんな、枕を理系男子の大事なものとして扱い、本気で対抗心を燃やすような主人公だからこそ、理系男子は惚れたんだろうな……というのは特に感じられず、なんかやべーやつが二人いるなという印象のほうが上回った。なんだこれは。
その変人の二人が、デートなのかなんなのかよくわからないようなお出かけをしたり、理系青年が文系女子に家のそばまで送ってこれはもしかしてお家に招かれてあれやこれやあるのではとワクワクしたものの全く何もなく家の前でさようならして愕然としたりしつつな、ふんわりとしたあれこれが続いていく。ただしキャラが変なので微妙にズレまくっているけれども。
ついでに言えば他のキャラも随分と変人で、特に主人公の職場の先輩は、例えるなら「(主人公)! ◯◯するわよ!(二次創作のハルヒ構文)」を突然使ってきそうな雰囲気の破天荒さがあった。この人ひとりで小説自体をラノベにしてやがる。まじで。読めばわかるから。絶対この人学生時代「キョン! ◯◯するわよ!」してたよ。
個人的に好きなのは理系青年の友人たち。
同じ持てない仲間だった理系青年がひとり恋人を突然作ったとしても仲間から完全にハブるわけでもなく本気で僻むわけでもなく、でも理系青年が恋人の電話に出たり恋人優先したりすると「この野郎!」と怒ってくる。けど、だからといって彼女といる時間を邪魔したりするわけでもない。
この絶妙な距離感が読んでて清々しかった。
終始すげえ変な本だなと思いながら読んでいたし、読み終えてから「なんだこれは……?」と思う本だった。出てくる人が全員変人ばかりだった。