「やさぐれ執事Vtuberとネガティブポンコツ令嬢Vtuberの虚実混在な配信生活」タイトル詐欺気味だけど、軽妙な会話の面白いVモノ
あらすじ
謎の執事Vtuber・正時廻叉は、無表情・無感情だけど流暢な辛口トークと人を魅了する演技を武器に絶賛売り出し中。役者の道を挫折し、新たなスタートを切ったものの、いまいち伸び悩む登録者数に試行錯誤を繰り返していた。そんな中、告知されたのは所属グループRe:BIRTH UNION【リバユニ】の新メンバーオーディション!審査員として参加した面接で出会ったのはーー「あなたの元で生まれ変わりたいんです……!」──彼に救われた内気な美少女・ユリアだった。慕ってくれる初めての後輩をデビュー配信へと導くことはできるのか⁉毒舌執事×元引きこもり令嬢、異色の二人がVtuber界にセンセーションを巻き起こす!新感覚成長ラブコメ配信スタート!
面白かった! 面白かったんだけどタイトル詐欺感はものっすっごい強い!!
会話が軽妙なVモノだった。最近Vモノ配信モノ増えてるよな。
メインは表紙とタイトルにいるやさぐれ執事(やさぐれてはいない)で、俳優として夢破れた彼がVtuberという演技と声で戦える場所で、朗読をよくするVtuberとしてやっていく物語。
タイトルに一緒に出てるネガティブポンコツ令嬢は、彼女が企業モノVtuberに応募してデビューしたぐらいで終わっちゃって、正直出番は殆ど無い。中の人が決意するまでの流れは丁寧に描かれているものの、Vtuberとしての描写は本当に全然無い。あとそこまでネガティブっていうわけじゃなくて単純に自己肯定感低めっていう雰囲気しか感じなかった。
ついでにてっきり執事Vtuberと令嬢Vtuberのコンビモノかと思えばそんなことは完全にまったくなく、要するにタイトルから受ける印象とは完全に別物だった。出落ち。
とはいえ話自体は面白かった。前述のとおり、俳優としては夢破れた青年がVtuberとしてやっていくお話。
事務所自体がなんかの創作活動特化している人(ラッパー・ミュージシャン・絵師)のなかで、元俳優で現在は朗読メインの配信をやっている主人公というのがとてもおもしろかった。それぞれがなにか強みがあって、そのために寿命なんぼ賭ける?って言われたら平気で30年だの出すようなイカれたやつらの集まりなの怖すぎオモロ。
実際、Vtuberって画面に出る映像部分は基本がアニメーション。それに声をつけていくものだから、軽妙なトークかイラスト配信のような技術モノ以外は音でやっていくしかない。作中でも言われているように、動画勢より配信勢のが多いだろうしね。
そう考えると朗読という演劇自体は全然武器になるし戦えるアイテムだな。ラジオドラマでやってるコンテンツと相性良さそう。そのうち落語家Vtuberとか出てきそう。わたしはVtuber全然詳しくないからもう全然たくさんいたらごめん。
普段は感情をほぼこめない執事、それが朗読のときには一気に感情多量にこめまくってめっちゃうまく読み上げる。そんなん絶対ハマるでしょ。
どんな重たいコメントやアホなコメントも、感情込めないでサクサク処理していく仮面執事、めっちゃ推せる。
他の同じ事務所に所属するVtuber勢や他の事務所Vtuber、個人Vtuberとのやり取りも読んでて楽しかった。会話がみんなそれぞれものすごく楽しそうなんだよね。
読んでて気が楽だしほっとしたなと思ったんだけど、原因なんだろうって考えてみたら、下ネタ会話がほぼ無いところかもしれない。下ネタ、嫌いじゃないんだけれども誰かに性欲を向けてるのが強いとちょっとあんまり……ってなる瞬間がある。そういうの無いのがすごい読みやすかった。
個人的に好きなのはマママーメイドメイドです。名前とネタが強いんよ。
途中で主人公の登録者5000人おめでとう配信でいろんなVたちが出てくるの面白かったな。この物語のなかの世界ではいろんなVたちが活動してるし、どれもこれもキャラ強で楽しそう。ちょろっと出てきただけの人が後から再登場したら面白そう。楽しみ。
ポンコツネガティブ令嬢(あるある程度のミスとそこそこの自己肯定感の低さでありそこまで言われるほどではない)パートについて。
引きこもりである少女がお手紙を読まれたことから一念発起してVtuberとして頑張ろうと思う再起の物語としてすごく面白かった。自分の魅せる方法なんて知らないし、何をすればいいのかアピールもわからんかった子が、前を向かせてくれた憧れの人と同じ事務所に入りたいからと頑張る物語は良いに決まってる。
とはいえ、彼女がVとなっての物語はほぼ無く、なんなら同期の小泉四谷のほうがキャラ濃ゆくて面白いなまであるので、今後彼女の出番も増えてほしい。タイトルにいるんだし。タイトルいにるし表紙にもいるけどまるでVとしてのキャラは薄い。Vになるまでの物語は面白かったんだけど、Vになってからの部分はキャラとしてもうっすい。